新たな愛好者獲得が、ヘラブナ釣りの課題
食用から釣り対象魚に切り替わったヘラブナ。他のフナ類よりも泳層(タナ)が幅広く、プランクトンイーターならではの摂餌が繊細な釣り味を生みだし、玄人好みの釣りものに変身した。
だが、愛好者の高齢化と釣り場の減少は見過ごすことができない現実だ。魚の養殖から高級道具の生産まで、これまで築かれた伝統を守っていくためには、ベテラン愛好者を大切にしながらも、新しいファン獲得が不可欠だ。
記者も一人のヘラブナ釣り愛好者であり、私自身のヘラブナ釣り再興策を簡単に紹介したい。
ヘラブナ釣りの魅力をアジアへ発信
2019年11月に紀州へら竿の生産地である和歌山県橋本市で「アジアヘラブナサミット」が開催された。中国と韓国のヘラブナ釣り愛好者、日本の業界関係者や釣り人など、あらゆる立場の人が集まり、ヘラブナ釣りを発展させるための課題が話し合われた。
韓国のヘラブナ釣りは日本のメジャートーナメントで通用するほどレベルが高い。ただ、ヘラブナが外来魚ということで養殖することができず、マーケットの広がりは期待できない。
一方、中国では数が少ないものの、北京市内の公園内にあるヘラブナ管理釣り場は好評だ。中国ではノベ竿のウキ釣りによるマブナ釣りは昔から親しまれてきたので、マブナからヘラブナへその対象が切り替わればマーケットは大きく膨らむことも考えられる。
海外の事情はそれぞれだが、海外の愛好者ほど高級品志向が強い。コロナ禍でインバウンド需要は先を見通せないが、ヘラブナ釣りそのものを輸出することで、釣り具業界にはプラスになるといえるだろう。
ヘラブナにこだわらない釣り場運営
国内の管理釣り場へ目を向けると、よほど資金力があって大型ヘラをバンバン放流できない限り、ベテランのみを対象とすると来場者は頭打ち状態だ。
初心者やファミリーゾーンを作るべきという意見は前々から出ているが、金魚やモロコ、タナゴ釣り場を兼ねる釣り場も増えている。
ヘラブナ釣り場の経営を維持していくためにも、他の収入源を確保する必要は避けられないはずだ。
身近だが、手軽ではないヘラブナ釣り。養魚技術が確立されて資源管理が可能なだけに、業界や釣り界全体で振興策を練りたいものだ。
(了)
岸裕之氏の連載記事
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