【第10回】これからのアマゴ釣り場考察~紀伊半島・有田川の取り組み~

スペシャル ニュース
有田川の様子
和歌山県の有力河川である有田川(ありだがわ)の支流は枝沢も含めれば200河川近い。在来個体の調査は多大な労力を要する

和歌山県下でも少しずつ進む「釣り人参加型」の漁場管理

紀伊半島は渓流王国なのか、それともそれは過去の話なのか。関西における渓流釣り場の管理は、東日本と比べると大きく遅れている。特に和歌山県下の内水面漁業は海産アユの資源管理に尽力してきたため、アマゴが棲む渓流域の漁場管理は疎かになりがちだった

(※下は有田川が流れる和歌山県有田郡有田川町の地図。紀伊半島は主に和歌山県、奈良県、三重県からなる日本最大の半島)

和歌山県の漁業調整規則に定められた「採捕禁止の体長制限10㎝」は、旧態依然とした内水面漁業を象徴する内容だし、制限尾数も設けられていない。

さらに放流の手法も、増殖の効率が高い発眼卵放流や親魚放流は県からまだ義務放流(保護増殖事業)として認められていない。そのため稚魚放流と成魚放流が中心となっている。

ただ、ここ数年で和歌山県下の渓流漁場管理に関して、漁業関係者や釣り人の意識が少しずつ変わりつつある。水産庁の補助事業「やるぞ内水面漁業活性化事業」では2年連続で和歌山における「アマゴゾーニング事業」がそのモデル事業に選出された。

同事業の初年度は、紀ノ川支流の貴志川におけるルアー・フライ専用区(キャッチ&リリース区間)が設置され、アマゴ釣りに訪れる釣り人の数が4倍になった。

2年目は同じく貴志川で人数制限があるものの、アマゴを対象とした冬期開放(テスト解禁)を行い、この春からは南紀・古座川(七川漁協)の管轄内にキャッチ&リリース推奨区間を設置するべく準備が進められている。

古座川の景色
紀伊半島南部を流れる古座川の上流では発眼卵放流や親魚放流が行われている

渓流の冬期開放は資源保護の観点から逆行しているように思われるかもしれないが、標高が低くアマゴが夏を越せないことを調査したうえで成魚放流を行い、釣りシーズンを長くするための試みだ。

また、日置川や古座川などの一部の河川では、増殖の効率化を図るために発眼卵放流や親魚放流にも取り組み、釣り人参加型の増殖事業が始まった。これらの活動は、渓流釣りの将来に向けて明るい兆しといえるだろう。

古座川での放流の様子
古座川での取り組みの様子

そして、記者が所属する(公財)日本釣振興会和歌山県支部においても、県下の渓流環境の改善に向けて、長期視野の活動に取り組みたく考えている。その令和3年度からの活動計画を立てるうえで、「効率のよい資源管理」、「釣り人の要望に応える釣り場づくり」、「地域に貢献」の3つを目的としている。

そこで今回は、紀伊半島の河川環境に精通し、森林環境から渓流魚、昆虫、寄生虫まで、複雑に関連する河川環境を有田川で調査研究を継続している神戸大学の佐藤拓哉先生に話を伺った。

佐藤拓哉准教授
神戸大学の佐藤拓哉准教授。有田川をベースに生物間相互作用をテーマに調査研究を続ける

神戸大学大学院理学研究科生物専攻、神戸大学理学部生物学科生物多様性講座准教授。
大学時代は紀伊半島の渓流へ足繁く通う。
有田川水系での本格的な調査研究は、2009年に京都大学和歌山研究林にてスタート。その後、カナダの大学へ赴任後、2013年から神戸大学に就任。現在も有田川をベースに生物間相互作用をテーマに調査研究を続ける。寄生虫のハリガネムシと渓流魚の関係性を解明したことでも注目を浴びる研究者。生物多様性の研究成果を地域振興に結び付ける取り組みを行い、漁業関係者や釣り人からも注目されている。
1979年生まれ、岸和田市出身
神戸大学 佐藤研究室ホームページ
 → 佐藤研究室 (kobe-u.ac.jp)

紀伊半島の渓流は、アマゴにとって厳しい生息環境

紀伊半島の渓流は今、どのような環境下にあるのか。佐藤先生は「森や川のいずれにも環境改善の課題がたくさんある川が多い地域」だという。地形は急峻で、古くから植林が盛んな土地柄。高度成長期から大規模なダム建設が始まり、治山や防災のために多数の砂防ダムが築かれ、アマゴの生息域は大きく分断されてしまった。そこへ開発による土砂の流入量が増加。深い淵がなくなり、堰堤の上流側は堆積した土砂で渓流魚が棲めない環境になっているところも少なくない。

現在もアマゴは自然繁殖している地域もあるが、その生息域はダムだけでなく、堰堤で分断されている

急峻で自然林が少なくなったことから山に保水力もなくなっている。アユの遡上時期に雨が降らない日が続くと、川の流れが途切れる瀬切れを心配する声が聞かれることもしばしばだ。これはサツキマスの遡上にも影響するだろう。

さらにスギやヒノキの針葉樹の植林が増えて広葉樹が少なくなることで魚のエサとなる陸生昆虫、水生昆虫などが減少したことも、渓流魚の成育環境に悪影響を与えているという。

次ページ → どういった増殖方法が求められるのか?

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