【弁護士の回答】景品表示法違反の可能性あり!
ある行為について罪に問われるためには、その行為が刑法などの法律によって定められた要件を全て満たしていることが必要になります。
ご質問のケースでは、御社は、実際の商品と異なる内容をパッケージに表示して商品を販売しています。この行為が法律の要件を満たしている場合には、御社が罪に問われることになります。
まず、御社の行為について成立する可能性がある罪として、詐欺罪が考えられます。御社の行為は詐欺罪にあたるのでしょうか?
詐欺罪が成立するための要件の1つは、人に対して事実でない情報を伝えるなどして欺くことです。ご質問のケースでは、実際には、一部のメタルジグについて素材がタングステンではなく安価な素材が使用されており、重さも30gでした。それにもかかわらず、パッケージにはタングステンを使用しており重さも40gと表示しています。このことからすると、御社は、メタルジグを購入した顧客を欺いたといえるかもしれません。
しかし、詐欺罪は平たくいえば、「意図的に」人を欺いた場合にだけ成立します。つまり、「知らないうちに」事実と異なる情報を与えてしまったにすぎない場合には、詐欺罪は成立しないのです。
ご質問のケースでは、御社は、素材や重さが違うことを知っていながら意図的に事実と異なる表記をしたわけではなく、海外の業者から仕入れたメタルジグの中に、素材や重さが違うものが混ざっていることを知らずに、不注意でパッケージの記載を行ったにすぎません。
したがって、御社は「知らないうちに」事実と異なる情報を与えてしまったにすぎず、詐欺罪に問われることはないでしょう。
他には、景品表示法違反の罪に問われる可能性が考えられます。
景品表示法では、商品の品質や規格などについて、実際のものよりも著しく優良であると示す表示をすることを禁止しています。これに違反した場合には、行政から改善を求める措置命令が出されますが、その措置命令にも違反すると、2年以下の懲役または300万円以下の罰金が科される可能性があります。
御社は、メタルジグの素材という「商品の品質」について、実際にはタングステンよりも安価な素材が使われているにもかかわらず、パッケージに素材がタングステンであることを表示しており、「実際のものよりも著しく優良であると示す表示」をしているといえます。
そのため、御社は景品表示法に違反しているとして、行政から措置命令を受けるかもしれません。そして、措置命令に従わなかった場合には罪に問われる可能性があります。
【参考情報】
景品表示法(景表法)とは?重要ポイントをわかりやすく解説!https://kigyobengo.com/media/useful/2122.html
景品表示法違反の3つのペナルティとは?事例をもとに解説
https://kigyobengo.com/media/useful/2253.html
景品表示法に関して弁護士に相談すべき理由と弁護士費用
https://kigyobengo.com/media/useful/2462.html
購入者への返金はどうする?
さて、御社はパッケージに書かれた内容と異なる商品を販売してしまいましたが、商品を購入した顧客全員に対して返金を行う必要があるのでしょうか?
結論から申し上げますと、必ずしも商品を購入した顧客全員に対して返金を行う必要はありません。顧客から交換や修理を求められ一定期間内に応じなかった場合に、顧客から売買契約を解除すると告げられた時に初めて返金の義務が生じます。
御社が商品を販売して顧客がその商品を購入した場合、法的には売買契約が成立したことになります。
しかし、販売した商品が当初約束していた品質などを満たしていなかった場合には、顧客は当初約束していた品質どおりの商品を渡すよう求めることができます。にもかかわらず、御社が商品の交換や修理に応じなかった場合、顧客は売買契約を解除することができます。
そして、売買契約が解除された場合には、売買契約は初めから無かったことになります。その結果、売買契約が成立する前の状態に戻すために、御社は顧客から受け取った販売代金を返金しなくてはならないのです。
このように、売買契約が解除された場合には返金を行う必要があります。逆に言うと、契約を解除していない顧客に対しては返金を行う義務はありません。
したがって、御社は顧客から売買契約を解除され、返金要求をされた場合には返金の対応を行うべきといえます。なお、解除された場合には、売買契約自体がなかったことになるため、返金を行う際は販売代金全額を返金する必要があります。
発覚したら、直ちに誠実な対応を!SNSでの炎上などにも注意
最後に、ご質問のケースにおいて、御社は返金や調査についてどう対応すべきでしょうか?
昨今ではSNS等の普及によって、1つのミスが原因となって、いわゆる「炎上」を起こすなど、企業イメージが低下するリスクがあります。このようなリスクを避けるためにも、ミスが発生した場合には、そのミスを隠蔽等するのではなく、企業として誠実な対応を行うことが重要です。
そこで、まずは販売したメタルジグの中にパッケージに書かれた内容と異なる商品が混入していた可能性がある旨を速やかに企業ホームページに掲載する、顧客のメールアドレスが分かる場合はメールでお知らせをするなどして公表した上で、謝罪を行いましょう。
自社で公表する前に、購入者による告発や内部従業員からのリークによって世間に事実が知れ渡ってしまった場合、企業の信頼が低下すると同時に、対応が複雑化するため、事実が発覚したら直ちに対応するようにしましょう。
そのうえで、顧客に対しては「購入された商品がパッケージの表示と異なる場合には、正常な商品と交換又は返金対応します」などと連絡することが望ましいでしょう。
御社が販売した該当商品について、顧客から連絡のないケースまで含めてすべて調査して回収・返金することは現実的に困難です。
少なくとも、前述のようなホームページやメールでの公表を見て連絡をしてきた顧客に対しては、交換や返金など適切な対応を行うことが重要です。
【回答者:弁護士法人咲くやこの花法律事務所 弁護士・木曽綾汰】
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