勝手に映されて配信されてるんですけど…。肖像権やプライバシーの問題【弁護士に聞く】

スペシャル ニュース

「釣具業界の法律相談所」は、釣具業界でも起こる可能性のあるトラブルについて、弁護士の先生に聞いて見解や対処方を紹介するコーナーです。

今回の相談は「動画撮影と配信後のトラブルについて「当社が撮影した動画をYouTubeにアップしたところ、思わぬ人から強烈なクレームが…」という相談に、弁護士の先生に答えてもらいました。

船釣りのイメージ写真
関係者以外が映る可能性のある動画撮影を行う場合は注意を!詳しくは本文で(写真はイメージです。記事内容とは関係ありません)

釣り船を使って新製品の紹介動画を撮影。YouTubeにアップ後、怒りの電話が…(※質問は架空の質問です)

【質問】
弊社は釣り具メーカーです。弊社製品のプロモーション動画撮影のために、釣り船に乗り、弊社商品を使用して実際に魚を釣りながら、商品の使い方等の動画撮影を行いました。釣り船には、弊社スタッフや撮影スタッフ以外に、一般のお客様もおられました。

後日、撮影した動画を編集し、YouTubeにアップしたところ、1万人以上の方に見て頂く事ができ、弊社商品の売上にも大きく貢献する動画となりました。

ビデオカメラ
撮影は順調に終了し、配信した動画も好評で良かった…とはならなかった(写真はイメージです)

ところが数週間後、その動画に映っていたという一般の方Aさん(撮影を行った釣り船に同船されていた方)からクレームの電話が入りました。

Aさんは、動画撮影が行われた当日は、勤務先にウソの報告をして釣りを楽しんでいました。しかし、アップされた動画にAさんがハッキリと映っているのを、Aさんの勤務先の上司が発見し、日頃から勤務態度に問題のあったAさんは、このウソの報告が決定打となり、勤務先の会社を解雇されてしまいました。

Aさんは腹を立てて、弊社に「動画の削除」、「肖像権の侵害による民事訴訟」、「勤務先の解雇による損害の賠償」を起こしてきました。

このクレームについて、弊社はどう対応するのが適切でしょうか。「動画の削除」なども行う必要があるのでしょうか。また賠償が必要となる可能性もあるのでしょうか。

動画撮影の際、同じ船に乗っている方には「商品の使い方などの動画を撮影させてもらいます」という説明は事前にさせて頂きました(全員の方にはっきり伝わっていたかどうかは不明です)。

また、今後こういったトラブルを防ぐために、弊社の関係者以外の方が映る可能性のある動画撮影を行う場合、気を付けておくべき点を教えて下さい。

【弁護士からの回答】動画削除は応じざるを得ない可能性大。映っている人が特定できない配慮が必要

船釣りのイメージ写真
事前にしっかりとした説明、また人物が特定できないような配慮が必要だ

【回答】
人を撮影した写真や動画を、その人に無断で使用することは原則として肖像権侵害になります。

今回のケースでは事前の説明が不十分だったとされる可能性が高く、この動画の削除の請求については応じざるを得ない可能性が高いでしょう。

肖像権侵害の賠償や、会社を解雇された事まで賠償責任を負う必要はない(可能性が高い)

一方、Aさんの肖像権の侵害についての損害賠償の請求や、Aさんが勤務先を解雇されたことによる損害賠償の請求は認められない可能性が高いです。

民法では、「損害賠償の請求は、これによって通常生ずべき損害の賠償をさせることをその目的とする」、「特別の事情によって生じた損害であっても、当事者がその事情を予見すべきであったときは、債権者は、その賠償を請求することができる」としています。

分かりにくい条文ですが、今回のように予想できないような損害が発生した場合に、全損害の賠償責任を負わせるのではなく、通常生じる損害についてのみ賠償責任を負うことを定めた条文です。

今回のケースでは、動画にAさんの顔が映り込んだとしても、通常は、Aさんに損害が生じるようなものではありません。ところが、たまたま、Aさんは勤務先の上司に動画を見られてしまい、日ごろの勤務態度が悪かったこともあって、解雇されるという事態になりました。

しかし、そういった損害が生じることは、御社としても予想できなかったことですので、解雇によってAさんが大きな損害を受けたとしても、御社にその損害の賠償が命じられることはないと考えられます。

実際的な解決法としては「裁判の長期化を避ける事」がベスト

法律の理屈としては、上記の通りですが、今回のようなクレームの実際的な解決としては、Aさんに対して少ない額でも支払いをすることにより、Aさんと和解し、裁判の長期化を避けることが御社にとってベストな解決といえます。

民事訴訟は期間や労力、費用の面で負担が大きいです。訴訟が長くなることは御社にとって得策ではなく、少しお金を支払ってでも早期にAさんと和解することで裁判を早く終わらせることができないか検討されることをおすすめします。

Aさんは腹を立てているということですが、裁判を続けてもAさんの損害賠償の請求が認められる可能性は高くなく、裁判官からもAさんに和解での解決を説得してくれると思います。

また、今回の動画は御社の売り上げに大きく貢献し、御社としては今後も動画の使用を続けられたらメリットが大きいことからすると、場合によっては、Aさんに少し多めに和解金を支払うかわりに動画をそのまま使わせてもらうという交渉をすることも考えられると思います。

そもそも裁判になる前に弁護士に相談を

なお、今回は民事訴訟になってしまいましたが、本件のようなケースは、民事訴訟になる前に弁護士に依頼してAさんと交渉することが本当は重要です。民事訴訟になる前に弁護士に依頼して、交渉で解決すれば、裁判に対応する労力や費用を避けることができます。

最近では、肖像権やプライバシーに敏感な人が増えており、今回のような動画撮影時の映り込みがクレームやトラブルの原因になりやすくなっています。

今後こういったトラブルを防ぐために、関係者以外の方が映る可能性のある動画撮影を行う場合は、映った人が特定できないように動画を加工するなどの配慮が必要です。

映った人が特定できるような動画をユーチューブなどにアップロードする場合、動画をユーチューブにアップロードすることや、動画をアップロードする目的を本人に伝えたうえで、書面で本人の同意を得ておくことがベストです。

(了)

参考 → クレーム対応に強い弁護士はこちら

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