釣り大会で優勝者の不正発覚!法律的にはどんな罪に問われるの?【弁護士に聞く】

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【弁護士の回答】「詐欺罪」、「偽計業務妨害罪」にあたる可能性アリ

御社の開催する釣り大会で、大会時間外に釣った魚を大会時間内に釣ったかのように示して優勝することが何らかの犯罪にあたるのでしょうか?

ご質問のケースでは、不正をした人は刑法上の詐欺罪(刑法246条1項)に問われる可能性があります。

では、釣り大会で不正を行って優勝することがなぜ詐欺罪にあたる可能性があるのでしょうか?

詐欺罪は、人をあざむいて、物をだまし取る行為を処罰するものです。

御社の開催する釣り大会では、優勝者に釣竿やクーラーボックスなどの賞品がプレゼントされています。つまり、もし不正を行って、このような賞品をだまし取ったといえる場合には、詐欺罪が成立することになるのです。

そして、御社の開催する釣り大会では、「大会時間中に釣った魚の大きさで順位を決定する」ことになっており、優勝すると賞品がもらえます。言い換えると、「大会時間中に一番大きな魚を釣った人に賞品を与える」というのが大会ルールです。

ところが、大会後の調査によると、今回優勝した人物は、大会時間外に釣った魚をクーラーボックスに保存しておき、あたかも今回の大会時間中に釣った魚であるかのように見せかけて大会本部に持ち込んでいた可能性が高いです。つまり、大会のルールに従ったフリをしていました。

そうすると、今回問題となっている人物は、大会時間中に釣った魚の大きさで優勝が決まるという大会のルールを認識した上で、ルールに従ったフリをして大会で優勝したということになります。

そして、本来であれば大会本部から受け取ることができないはずの賞品を受け取ってしまいました。

これは、「大会本部をあざむいて、賞品をだまし取ったものである」ということができます。そのため、不正を行って優勝した場合、「人を騙して物を交付させた」として詐欺罪に問われる可能性があるのです。

優勝トロフィーのイメージ
「ルールに従ったフリ」をして優勝すると、「詐欺罪」に当たる可能性アリ

さらに、ご質問のケースでは、不正に優勝した人は、刑法上の偽計業務妨害罪(刑法233条)を問われる可能性もあります。

偽計業務妨害罪とは、人を騙すような手段を用いることで、人(会社)の業務の円滑な遂行を邪魔することによって成立する犯罪のことです。

今回のような不正が発覚すると、御社の開催する大会の公正さが疑われることになるだけでなく、賞品を授与すべきでなかった人物から賞品を取り戻したり、再度優勝者を選出し直したりする必要が生じる可能性があります。

また、不正がなければ優勝していたかもしれない参加者に別途賞品を授与したりしなければならないかもしれません。

このように、不正によって御社の大会運営業務が邪魔されたといえる場合には、偽計業務妨害罪が成立する可能性もあるでしょう。

賞品の返還を求めるにはどういうアプローチが有効?

では、不正行為が事実だった場合に、御社は賞品を取り返すことができるでしょうか?

これは、民事上の請求の問題ですが、賞品の返還を求めることは法的に可能と考えられます。

まず、御社の釣り大会の大会規約に「不正行為を行った場合、優勝者については優勝をはく奪し、授与した賞品も返還していただきます」などと記載されているかもしれません。

大会参加者は、大会に参加することによって、大会規約に同意したものと扱われます。そのため、このような規約がある場合には、大会規約の規定に基づいて、賞品の返還を求めることができるでしょう。

さらに、このような規約がなくても、御社は、授与した賞品の返還を求めることができると考えられます。御社と参加者は、大会規約に基づいて、優勝した参加者に賞品を与えるという約束をしています。

このような約束は、約束をする際に相手方からだまされていたり(法律上は「詐欺」〈民法96条1項〉といいます)、約束の前提となる事実を勘違いしていたりした場合(法律上は「錯誤」〈民法95条1項2号〉といいます)には、民法に基づいて、約束を取り消して、約束自体をなかったことにすることができます。

ご質問のケースでは、参加者が不正を行って優勝した場合、御社は、参加者にだまされており、それによって参加者が大会時間中に釣った魚で優勝したと勘違いしていたため、約束を取り消すことができます。

表彰台のイメージ
不正して優勝した参加者には、「優勝した参加者に賞品を与える」という約束を取り消すことが出来る!

そうすると、賞品を受け取った人には賞品を受け取る理由がなかったことになるため、賞品を返還しなければなりません。

では、御社が賞品の返還を求める場合、どのようなアプローチをとることができるでしょうか。

有効な方法としては、相手方に対して、「当社が大会後に行った調査の結果、貴殿の不正行為が発覚しました。そこで、大会規約に基づき、貴殿の優勝をはく奪することといたします。また、貴殿に授与した賞品については、令和〇年〇月〇日までに当社宛てに郵送する方法で返還してください」という内容の書面を送ることです。

このような書面を送ることによって、自主的な返還を促すことができるでしょう。また、御社が対応することに抵抗があるという場合は、弁護士に相談していただき、弁護士から相手方に対して内容証明郵便などで通知をしてもらうと、より効果的でしょう。

なお、このような書面を送る前に、不正行為について調査をした結果を「調査報告書」などの形にまとめておくとよいでしょう。

調査報告書には、誰が、いつからいつまで、どのような方法で調査を行い、どのような証拠が得られ、どのような結論が得られたのか、といった内容を記載します。こうすることで、御社が万一訴訟を起こさなければならなくなったときに証拠として活用することができます。

(了)

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