【第24回】水生生物の命をつなぐ「魚道」づくり~内水面漁場を変える河川環境工学~

スペシャル ニュース

時間と労力をかけたモニタリング調査

高梁川潮止堰は今回の魚道整備で水生生物が遡上しやすくなった。

その効果を確認するモニタリング調査は、偏光サングラスを着用したスタッフが目視で行っている。調査地点は改良された1~4号魚道とそのサイドに設けられた簡易魚道を合わせた8カ所だ。

調査日の調査時間は午前7時~午後7時までの12時間で、15分毎に調査と待機を繰り返す。魚に警戒心を与えないように、カウントを始める前から動かない体勢をとらなければならず、時間と労力を要する。

モニタリング調査の風景
高梁川潮止堰の魚道改良事業は、その途中にモニタリング調査を実施して改良効果を確認しながら進められている。令和4年度も引き続きモニタリング調査が実施されている

モニタリング調査ではアユだけではなく、ニホンウナギやモクズガニ、ヨシノボリ類などの遡上が確認されている。

アユの資源量は全国のどの河川を見ても年毎の変動があり、潮止堰以外のファクターも大きく関係してくる。そのため魚道整備と資源量の関連性を数字で示すことは難しいが、堰の下流側に溜まる稚アユの蝟集は明らかに減少した。

魚道改良前の蝟集の割合は5%強だったが、令和3年度の調査では0%近くになったことが確認されている。遡上アユの最初の難関である潮止堰で蝟集を大幅に減少させたことは、高梁川総合水系環境整備事業の大きな成果といえるだろう。

秋に孵化したアユの仔魚は川を下り、河口周辺で冬を過ごして春になると上流を目指す。外敵だらけの環境の中で過ごしてきたその半生を考えると、堰堤で足止めをくらう蝟集はとても残念な光景だ。

堰堤や落差工が水生生物の移動を妨げているケースはまだまだ多いが、その一方で魚道整備が河川行政によって進み、昨今は小規模ながら市民レベルの活動にまで広がってきた。

高梁川では昨秋につり環境ビジョンの助成事業によるアユの産卵場造成も実施されており、これからの資源量回復に期待したい。

連載終了のお礼

「内水面の釣り場環境はもっとよくなる」と信じています。1人の釣り人、1人の漁協組合員として、もっといろんな研究者や活躍している先輩漁業者の話が聞きたくてこの連載を企画しました。

2年間(24回)の連載は今回が最終回になります。取材にご協力いただいた皆様に心より感謝致します。ありがとうございました。「昔はよく釣れた」ではなく、「こんなに釣れるようになった」と言われる内水面の釣り場が増えることを願っています。

岸 裕之

(了)

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