成長に関する研究は漁獲量の調整に役立つ！
魚の成長曲線を求める場合、小型（若齢）個体から大型（加齢）個体まで、様々な大きさの個体を数100尾単位で集め、年齢を調べる必要がある。
数100尾の検体から耳石を取り出し、耳石中心の年輪が見えるように両面を研磨するのは大変な作業だ。しかも、研究となると、数100尾の検体を購入する必要がある。魚の成長を調べるには、多大な労力と資金が必要だ。
余談だが、クロダイの場合、渡船業者さんやメーカー主催の釣り大会と釣り人の協力を得て、幸いにも数多くの検体を集めることができた。
ところで、日本各地にある水産研究機関では、さまざまな魚種の成長に関する研究が行われている。こうした研究は、資源を適切に管理するための情報として役立つ。
例えば、漁獲されている魚の大きさと年齢の構成から資源状態が推定でるため、漁獲量を調整するのに役立つ。
また、性成熟する年齢や体のサイズが分かるので、漁獲サイズを制限する目安になる。
以前紹介したように、魚は加齢しても（生きているかぎり）卵を産む。魚の資源を未来に残すためには、若齢魚の漁獲を避け、出来るだけ多くの成魚に産卵させることが大切だ。
魚に優しいキャッチ＆リリースの方法とは？魚に愛、自然への感謝を忘れず釣りを楽しんで！
最近、資源の保護を意識した釣り人も多く、小さな個体（若魚）をリリースしたり、必要以上の魚を持ち帰らない人も多い。
リリースに役立つ情報を紹介する。
マダイなどの白身魚（青魚を除く）は、5分程度の刊出（空中刊出）なら平気で、海水にもどすと回復する。
針がかりした魚に対しては落ち着いて対処してもらえれば良い。釣り針を飲み込まれた時は、無理して釣り針を抜くより、釣り糸を切断した方が生残率は高い。
水族館の観察によると、飲みこんだ針は高確率で吐きだされるそうだ。
リリースの際、魚が弱っている場合は、新鮮な海水を満たしたバケツなどで魚の回復を待ち、リリースする方がいい。弱った状態でリリースすると、マダコや肉食魚の餌食になることがあるからだ。
魚から針を抜く際やリリースする時に、魚体を乾いたタオルでつかむことはよくない。魚は硬い鱗を持っているので丈夫そうに見えるが、鱗はあくまで真皮であって、表皮は鱗を被うように体表面に存在している。タオルで魚をつかむと、簡単に表皮が剥がれてしまう。
表皮には粘液分泌細胞があって、そこから粘液が出されている。この粘液には抗菌作用があって、魚を雑菌から守っている。表皮が剥がれた状態でリリースすると、魚は感染症を患う危険性がある。針を外したり、リリースする時は、魚をぬれた手で優しくつかむことが望ましい。
リリースした魚は生き残り、次世代を残して釣り人を喜ばしてくれるだろう。
これからも、魚に愛をもって接してもらい、自然への感謝を忘れないで、釣りを楽しんでほしい。そうすれば、幸は釣り人にも魚にも訪れる。
最後に、釣り関係者が愛読している本紙に連載できたことは、釣り好き研究者の私にとって望外の喜びである。連載の機会を下さった（株）名光通信社釣具新聞の岩崎編集長にこの場を借りて御礼申し上げる。
（了）
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