【弁護士の回答】不当廉売の可能性。公取に出向いて報告を!
まず、A社が市場価格や仕入れ価格と比べて著しく安い価格で販売をしている点は、独占禁止法という法律が禁止する「不当廉売(ふとうれんばい)」に当たる可能性があります。
独占禁止法は、多くの事業者が自由に商品やサービスを提供し、消費者がその中からより良い、より安い商品やサービスを自由に選択できる状態、つまり自由競争状態を保護する法律です。
そして、独占禁止法で禁止されている「不当廉売」とは、正当な理由がないのに商品等を仕入れ価格を著しく下回る価格で継続して販売し、それにより、他の事業者の事業活動を困難にさせる恐れがあるものをいいます。
このような販売方法は、安売りという意味では一時的には消費者の利益になりますが、長期的にみれば他の事業者の事業を困難にすることにより自由競争状態を阻害し、消費者の利益にも反するため、独占禁止法により禁止されています。
ただし、「不当廉売」とは仕入れ価格を著しく下回る価格で販売する場合を指し、仕入れ価格を少し下回るというだけでは「不当廉売」にはあたりません。
はっきりとした基準はありませんが、仕入れ価格を30~40%程度下回る価格で販売していれば、「不当廉売」に当たる可能性が出てきます。
A社の設定する釣具の販売価格が、A社の仕入れ価格を30~40%程度下回るような場合、A社は損失をカバーするために、釣具販売以外で得た資金を投入するなどしなければ、販売を継続できないと考えられます。このような場合には、A社の販売行為は「不当廉売」に当たる可能性があります。
一方で、A社の販売価格が御社での仕入れ価格を下回っていても、A社での仕入れ価格を下回っていない場合、A社が御社よりも安い価格で商品を仕入れて販売しているにすぎないといえます。この場合は「不当廉売」には当たりません。
不当廉売をしている釣具店への対応は?「間接の取引拒絶」には注意!
次に、御社がA社と対抗するために、A社に商品を卸している卸業者やメーカーにA社への商品供給をやめるよう依頼することについても、法的な問題があります。
そのような行為は、独占禁止法が禁止する「間接の取引拒絶」に当たる可能性があります。
独占禁止法が禁止する「間接の取引拒絶」とは、正当な理由がないのに、卸業者等の事業者に対して働きかけ、競合他社に商品を供給させないようにしたり、競合他社への商品供給数を制限させたりする行為をいいます。
A社の「激安」の釣具販売により、御社や同業他社から顧客が離れていくことを防ぎたいと考え、A社に商品を供給する卸業者等に対して、A社への商品供給をやめるよう働きかけ、その結果、A社の事業活動が困難になるような場合は「間接の取引拒絶」に当たる可能性があります。
ただし、A社に商品を卸している卸業者等に商品供給をやめるよう依頼しても、A社が代わりの仕入先を容易に見つけることができ、A社の事業活動が困難になるわけではない場合には、独占禁止法が禁止する「間接の取引拒絶」には当たりません。
では、御社としては、A社の販売が不当廉売にあたる場合に、どのような対応をすればよいのでしょうか?
この点については、御社の所在地を管轄する公正取引委員会の事務所に、A社の不当廉売を報告することが考えられます。
報告は、電話やメールなどですることもできますが、不当廉売をやめさせるためには、公正取引委員会の事務所に出向いたうえで文書で報告を行うことがベストです。
文書には、御社の名称や代表者名を明記したうえで、A社が、いつから、どこで、どのような不当廉売を行っているのか、その結果、御社にどのような損害が生じているのかを具体的に記載してください。
御社の報告を受けた公正取引委員会が必要と判断した場合、A社の販売行為が本当に不当廉売にあたるかどうかを調査します。
公正取引委員会がA社事業所への立入検査や帳簿書類調査を行い、A社の販売行為が不当廉売に当たると判断した場合には、A社に対して不当廉売をやめることを命じる「排除措置命令」という命令を出すことになります。
(了)
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