
今年から全域でアユルアーが解禁され、釣具業界でも話題となっている静岡県の興津川。昔からアユの友釣りで有名な河川だ。この興津川の新しい動きを応援し、協力してきたのが地元ルアーメーカーの株式会社ジャクソン(静岡市本社・加藤慶太社長)だ。
6月1日には、興津川の更なる賑わい作りのため、ジャクソンが資金を提供してアマゴの稚魚8000尾が用意され、放流も行われた。ジャクソンの取り組みと、漁協の新しい挑戦を紹介する。
4期連続赤字の漁協運営。毎年1000人ずつ遊漁者が減少、解決策とは…?

静岡市清水区を流れる興津川は5月20日にアユ釣りの解禁を迎えた。解禁直後から160尾を超える釣果が出るなど、今年は絶好調だ。連日多くのアユ釣り師で賑わっており、その中にはアユルアーを楽しむ人の姿も見られる。しかし、この景色は当たり前ではない。
興津川では20年近くにわたり遊漁者の減少が続き、漁協の運営も逼迫。4期連続赤字に陥るなど苦境が続いていた。興津川非出資漁業協同組合(以下、興津川漁協)の小林洋二組合長は、これまでの経緯を次のように語る。
「興津川は2009年には遊漁者が年間で約4万2000人いました。しかし、友釣り師の高齢化や減少などにより毎年約1000人ずつ減少し、昨年は約1万3000人(いずれも延べ人数)まで落ち込みました。
特に2022年の台風15号では川に甚大な被害が出て、翌年の釣り客は激減しました。アユの友釣りだけでは漁協の運営が成り立っていかなくなることは明白でした」。

このような状況で、興津川漁協では川の回復力向上に努め、赤字運営の中、更なる赤字も覚悟の上で放流アユを純海産にするなど、天然遡上のアユを増やし、川の魅力を高める努力を続けてきた。
アユルアーの解禁も遊漁者を増やす施策の一つだ。これについては2代前の組合長の時代に、当時理事だった小林組合長が特命を受け、アユルアーの調査に乗り出していた。当時、小林組合長はアユルアーの解禁について反対の立場だった。
若いアユルアーマンの一言で認識が変化。「一緒に川を盛り上げたい」
しかし、調査先の河川でアユルアーを楽しむ若い釣り人のグループに声をかけ話をした際に、そのルアーマンは「僕らもアユを追わせて掛けているんです」と言った。この一言で、小林組合長の認識が大きく変わった。
「ルアーの人を友釣りの仲間に入れてあげるのではなく、仲間として一緒にアユ釣りや河川を盛り上げていきたい」と考え方が一転した。
その後、小林組合長は漁協内部の説得に掛かった。しかし、「良く分からないものは反対」という雰囲気も根強く、簡単に進められる話ではなかった。この時、小林組合長の改革に大きな力添えをしたのが、ジャクソンの加藤慶太社長だ。
加藤社長「興津川に再び人が集まるよう、出来ることはやりたい」
加藤社長と小林組合長の出会いは、一昨年、清水区を中心とした店舗や企業が集まるマルシェだった。ジャクソンもこのマルシェに出展。興津川漁協も「おきつがわオートキャンプ場」と共同で出展し、漁協特製のアユの塩焼き等を販売していた。
そのマルシェで加藤社長は小林組合長と出会い、興津川の現状やアユルアーの導入を検討していることなどを聞いた。
興津川はジャクソンの地元を流れる河川でもあり、加藤社長も家族で訪れるなど個人的な思い入れもある河川だった。「興津川をもう一度盛り上げるために、出来ることはやりたい」と考え、加藤社長は興津川の盛り上げ役を買って出た。
アユルアーの解禁にも協力し、ジャクソンとしても初となるアユルアーの開発も決定した。

ジャクソンの企業姿勢や加藤社長の人柄に共感、ルアーメーカーへの印象が変わる
昨年、興津川漁協の前組合長と小林組合長がジャクソン本社を訪れ、加藤社長らと今後について話し合う機会があった。
この時に、ルアーメーカーの老舗であるジャクソンの企業姿勢や加藤社長の人柄の良さに前組合長も感銘を受けた。
加藤社長から「上手くいけば興津川バージョンのルアーも作りましょう」という話も出て、前組合長のルアーメーカーやルアーに対する印象が大きく変わったという。このことが、後のルアー解禁の大きな足掛かりとなった。
その後、興津川漁協ではアユルアー解禁の是非を問うため、臨時総代会を開催。しかし、一度目は否決となってしまった。小林組合長はあきらめずに今年2月の通常総代会で再度審議し、ついにアユルアーの使用が認められた。

その後、今年5月の解禁に間に合うよう、県に働きかけ、アユルアー解禁に向けた作業が急ピッチで進められた。
また、「アユの放流は補助金が出るが、アマゴなどは自己資金が乏しいため、義務放流ギリギリしかできない」という小林組合長の話を聞き、加藤社長はすぐに知り合いのアマゴ養殖業者に電話を掛け、放流の手助けに動き出したという。
加藤社長は「興津川はアユ釣りは有名ですが渓流魚のイメージが薄いです。年間を通して賑わう川にするにはアマゴ等の放流も必要だと思いました」と話す。

アマゴの稚魚8000尾を放流、ジャクソンが資金を提供
6月1日には、ジャクソンが手配したアマゴ稚魚8000尾が興津川水系の支流に放流された。放流には漁協、ジャクソンの加藤社長やスタッフも参加し、数カ所に分けて放流を行った。
今回の放流について小林組合長も「加藤さんのおかげで、本当に感謝しています」と話していた。アマゴも良く釣れるようになれば、アユ釣りシーズンだけでなく、通年での遊漁者増が期待される。


最初から全面解禁で検討。アユルアーの人に思いを伝える
今年、解禁後に興津川を訪れるアユ釣り師は多く、平日でも多くのアユ釣り師が入川している。アユルアーの人もおり、中には女性1人でアユルアーに挑戦しにきた人もいるなど新しい景色が広がっている。
アユルアーの解禁について小林組合長は以下のように語る。
「興津川では最初から全域でアユルアーを解禁しました。遊漁料や釣れるエリアも友釣りの方と全く一緒です。私は最初から全域の解禁しかないと考えていました。そうでなければ、アユルアーの方を歓迎しているという想いが伝わらないと思ったからです。
今後、友釣りの方はもちろん、アユルアーの方もぜひ興津川に来て欲しいと思っています。多くの釣り人に来てもらうには、釣れる環境作りが一番大事だと考えています。自然の力に比べると漁協が出来ることはわずかですが、出来ることは全部やっていきたいと考えています」。
興津川スペシャルカラーも検討。売上の一部は川の賑わい作りに還元予定
また、加藤社長は「今年、当社初のアユルアーを発売しましたが、興津川で色々なテストをして来年には興津川スペシャルカラーをリリースする予定です。その売上の一部は、興津川の賑わい作りに還元出来ればと思っています」と話す。

ジャクソンでは、2022年から「1パーセントのソーシャルグッド」というスローガンで、水辺の清掃などを継続して行っている。ルアーの年間販売数量の1%に相当する稚魚放流を行うなど、釣りの環境を良くする活動を続けている。
加藤社長は内水面への取り組みも行いたいと以前から考えていた。興津川での取り組みが実現すれば、内水面にも活動の幅が拡がる。
変化しようとしている漁協を釣具メーカーが協力して後押しすることは、釣り人や釣り関係者はもちろん、社会全体のプラスになるはずだ。
多くの漁協はルアーメーカーやルアーマンとの接点が少ないことから、誤解が生じているケースも多いと思われる。
今回のジャクソンのような取り組みが各地で広がれば、内水面漁業に再び賑わいが戻ってくるケースも増えるのではないだろうか。
関連記事 → 1パーセントのソーシャルグッド。ジャクソンが行うユニークな環境活動とは?
関連記事 → 【ジャクソン】「興津川ルアーアンバサダー」大募集。今年ルアー解禁の興津川を熱く盛り上げよう! | 釣具新聞 | 釣具業界の業界紙 | 公式ニュースサイト
Athlete鮎 (アスリート鮎)

ジャクソン初のアユルアーである「アスリート鮎」。
アユルアーでは珍しいリップレス形状。ヘッド上部にラインアイが配置され、石回りに長くステイさせることができる。通常のルアーではなく友釣りの「オトリ」を意識して作られた。「アスリート」の名を冠したジャクソン渾身のアユルアーだ。
タイプはフローティング(8.5g)とシンキング(11g)の2種類。サイズはともに90mm。カラーは6種類。フックはチタン製チラシ針。
アスリート鮎について詳細は、ジャクソン公式ホームページまで。
関連ページ → 鮎ルアー特集




