自然環境の維持に努める志賀高原漁協
雑魚川を管理する志賀高原漁協の正組合員数は約50名。組合長理事の児玉英二氏は現在3期目(任期3年) を務め、組合員たちと雑魚川や魚野川流域の河川環境を守っている。
今回、雑魚川の漁場管理について話を伺うべく児玉組合長がオーナーを務める丸池ホテルへ向かうと、漁協理事の方々も集まってくれた。
イワナが自然再生産を繰り返す環境を取り戻す
現在はわが国有数のイワナ資源量を誇る雑魚川だが、スキー場開発やホテルの建設ラッシュで、河川環境が荒廃した時期があったことをまず教えられる。スキーリゾートが広がる志賀高原が雑魚川の最上流域となるため、開発による魚たちへの影響は思いのほか大きかったという。
二代前の組合長・山本教雄氏がとても河川環境や原種イワナの尊さを唱えた方で、各ホテルに浄化槽設置を促して下水処理を徹底し、県からのイワナ義務放流の要請にも頑なに応じなかった。だからこそイワナが自然再生産を繰り返す環境を取り戻せ、今では貴重な原種イワナの宝庫となっている。
「専門的な調査は水産試験場にお任せして、私たちは先達が取り組んできた環境保全活動を継承しているだけですよ。魚を守るためには水が大切で、水を守るためには木や森が大切になる」と児玉組合長。だから流域の木を切る、土をイジるような事業は漁協の同意のもとで行われることになっているという。
よりよい釣り場づくりには監視も大切で、現在は週末や祝日を中心に3~4名でシフトを組んで見回っている。最近は釣り人のマナーが向上し、魚をリリースする釣り人も増えてきたそうだが、夜間まで徹底して監視した時期もあったそうだ。
いつまでも変わらないことが望まれている雑魚川。種川で原種イワナを守り、本流で釣り人を楽しませるその漁場管理は、今後ますます注目を浴びそうだ。
水産庁が次々とリリースする渓流の漁場管理マニュアル
「放流だけに頼らない! 天然・野生の渓流魚を増やす漁場管理」が発行されたのは今年の2月。長野県水産試験場の研究調査データが大きく取り上げられている。
この他にも、「渓流魚の人工産卵場のつくり方」、「渓流魚の効果的な増殖方法」、「渓流魚のゾーニング管理」、「渓流魚の資源調査をやってみよう!」など、水産庁では渓流魚の増殖に関連する漁場管理マニュアルを次々とリリースしている(ホームページからpdfファイルでダウンロードできる)。
内水面漁業の将来のために国が自然繁殖や自然に近い増殖方法を推奨しようとしていることはその内容からも読み取れる。
(了)
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