釣り教室で釣ったニジマス、食べたら針が残っていた!?主催者に責任は?【弁護士に聞く】

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【弁護士の回答】損害賠償請求が通る可能性は低い

ご質問のケースでは、参加者は、御社に対して、御社が釣り教室において魚の体内に針が残っている可能性があることについて注意喚起等していなかったことが不法行為に当たるとして、損害賠償請求を行うことが考えられます。

では、参加者のこのような請求は法的に認められるのでしょうか?

結論から申し上げますと、ご質問のケースで、参加者の御社に対する請求が認められる可能性は低いと思われます。

不法行為に基づく損害賠償請求が認められるためには、釣り教室の参加者が針を飲んだ魚をそのまま食べてしまい手術が必要になったことについて、御社に落ち度があったことが必要です。

ご質問のケースで、御社に落ち度があったか否かを判断するために参考になる裁判例があります(東京地方裁判所平成27年9月15日判決)。

この事件は、ポップコーンの中に混入していた固い粒を食べたことによって、口の中に埋め込んでいたインプラントがはがれてしまったため、ポップコーンの製造会社に対して治療費等の損害賠償を請求した事案です。

製造会社は、ポップコーンの袋に、ポップコーンの種が不発のまま入っている可能性があり、その不発コーンを噛むことによって危険が生じる可能性があるなどの警告は表示していませんでした。

しかし、裁判所は、一般人であれば、ポップコーン製品の中に不発コーンがある程度混入している可能性があることや、不発コーンが噛むことが困難なほど固いものであることは、通常理解しているものであるため、ポップコーンに不発コーンが混入している可能性があること、それによって危険等が生じ得ることについて警告を行っていなくても問題ないとして、損害賠償請求を認めませんでした。

ではご質問のケースではどうでしょうか?

ニジマス釣りでは、エサで釣る場合、エサの付いた針が魚に飲まれてしまうことが多いとのことです。一般的にどのくらいの頻度で針が飲まれてしまうのかにもよりますが、このような事情は、釣り教室に来る初心者の参加者は知らないかもしれません。

ニジマスから針を取る様子
ニジマスのエサ釣りは針を飲み込んでしまうことが多い。参加者はそれを認識出来ていたのか…?

しかし、御社の開催する釣り教室では、普通はスタッフ等が引っ掛かった針を取り除いていました。そうすると、御社の釣り教室の参加者は、ニジマス釣りで針が飲まれてしまうことが多いからこそスタッフが針を取り除く運用になっていると分かったはずです。

つまり、御社の釣り教室の参加者は、初心者であってもニジマス釣りで針が飲まれてしまうことが多いと十分認識することができたといえます。

そして、エサの付いた針が魚に飲まれてしまった場合や釣針の付いた糸が途中で切れた場合には、釣針が魚の喉の奥に引っかかったままになっていることは明らかです。

これらの事情からすると、参加者は、釣った魚の体内に針が残っていることは比較的簡単に認識することができるといえます。

そのため、参加者が釣った魚を持ち帰る際に、御社が魚の体内に針が残っている可能性があることについて注意喚起をしていなくても、参加者が注意すれば針を飲み込んだ魚をそのまま食べることは回避できたといえ、御社に落ち度は認められません。

したがって、参加者から御社に対して損害賠償請求がなされても、その請求が認められる可能性は低いといえます。

ケガを未然に防ぐことも重要!釣り教室の主催者が出来る対策は?

もっとも、参加者からの請求が認められる可能性が低いとしても、釣り教室が原因で参加者がケガをすることはできるだけ避けなければなりません。

また、御社が開催する釣り教室からケガをした人が出ることで、釣り教室の評判が落ちるという不利益も考えられます。

そのため、御社としては、釣り教室でケガをする人が出ないように十分な対策を行うことが重要です。

具体的には、ニジマス釣りでは針が魚に飲まれることが多いことや、針が引っ掛かった場合や糸が切れた場合にはスタッフが引っ掛かった針を取り除いていることを明確にアナウンスしておき、参加者が針を飲んだままの状態の魚を持ち帰ることを防ぐべきです。

また、万一針を飲んだままの状態の魚を持ち帰った場合に参加者が誤って食べてしまわないように、調理前や食べる前に針が残っていないか確認するように注意喚起することも対策として有効です。

次に、参加者は、釣針を作ったメーカーも訴えると述べているようですが、釣針を作ったメーカーは何らかの責任を追及されるでしょうか?

メーカーは、製造した物に通常有すべき安全性を欠くなどの欠陥があり、その欠陥によって他人がケガを負ったり財産を失ったりした場合に、その損害を賠償する責任を負います(製造物責任法第3条)。

そのため、メーカーが製造した釣針が通常有すべき安全性を欠いており、それが原因で参加者がケガを負ったり、財産を失ったりした場合には、メーカーも責任を負うと考えられます。

しかし、ご質問のケースでは、釣針自体に何らかの欠陥があったわけではなく、魚が釣針を飲み込んでしまったこと、参加者が釣針を飲んだままの状態の魚を調理して食べたことによって手術を受けることが必要になっているといえます。

したがって、釣針に欠陥があったために参加者が手術を受けることが必要になったわけではない以上、メーカーは何らの責任も負わないと考えられます。

【回答者:弁護士法人咲くやこの花法律事務所 弁護士・木曽綾汰】

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