
昔から釣り人に人気の好敵手。その魅力は何と言っても…
比較的調理しやすく食味が良いお魚さんはカワハギだけではありませんが、昔からファンを引き付け続ける魅力は、何と言ってもこのお魚さん特有の繊細さにあることは間違いありません。
カワハギは好適な場所であればそれなりに魚影が濃いため、日によってムラがあったとしても釣り人を飽きさせることが無いというのも、長年に渡る人気の要因でしょう。
カワハギは日本付近では青森県から九州南岸にかけての水深100mよりも浅い、海底に砂や岩礁がある場所に生息しています。
産卵期は5~8月にかけて行われます。東京湾を挟んだ千葉県と神奈川県にも多くの船宿があり、シーズンともなると大勢のファンで賑わいます。

カワハギは1年中釣れるお魚さんですが、初冬から厳寒期になると肝が肥大して、魚肉だけでない独特の食味があります。
私が住んでいる埼玉県の鮮魚店ではあまり見かけないお魚さんなので、お刺身や肝を食べられるというのは釣り人の特権かもしれません。
もしかすると私の主観になってしまうかもしれませんが、石鯛やメジナ釣りの(ここでは)外道としても良く釣れることがあります。
磯で釣れるカワハギは専門に狙う船宿で釣れるものよりサイズが大きいことが多いのですが、専門に狙う船釣りで釣れるカワハギの方が磯臭さは少なく食味が良いように感じます。
さて毎回ですが調理と食味については私よりも遥かに精通した多くの方々がいらっしゃるかと存じますから、本題へと移りましょう。
なぜカワハギは上手にエサを取れるのか
カワハギが餌取名人と呼ばれることは多くのファンの皆様も良く知っている所ですが、釣り上げたことがあれば、あの口の大きさと、精巧に嚙合わせることが出来る歯の構造を見れば、なるほど釣り針に装着したアサリなど餌だけを上手く吸い込んでしまうことが一目瞭然です。

この口と歯の構造から見て、正反対(という表現が適切化は別として)にあるのが、マグロやカツオといったお魚さん達です。
カワハギが餌取名人と呼ばれるような餌の食べ方を可能にしているのは、あの歯だけでなく、鰭(ひれ)の構造も大きく関係しています。
マグロやカツオといったお魚さんは主に尾鰭を左右に動かし、高速で遊泳していますが、カワハギは背鰭と尻鰭がそれらのお魚さんとは違って左右に波打つような動きをして遊泳します。
この遊泳方法はスピードが出ないものの、瞬時に巧みな方向転換とホバリングを行うことが出来ます。そして大きな眼によって餌となる物体を見極める能力が高いことが伺えます。

カワハギの鰓蓋(えらぶた)は外観からすると他のお魚さんよりもずっと小さいため一見してどこにあるのかは判別しにくいのですが、胸鰭の前方やや上方に切り込みを入れたような溝があり、これが吸引した海水を排出するダクトの役割をしています。
この前方には立派な鰓(えら)が隠れていて、鰓の前方には硬くて微細な鰓耙(さいは)が並んでいます。

鰓耙の細かさからするなら、カワハギは口腔内に餌を取り込む時点で、サイズが小さくなっているということが伺えます。つまり大きな餌、異物を取り込まないように、歯で細かくちぎってから吸引していると共に、一度口腔内に取り込んだものでも違和感があると吐き出してしまいます。
繊細な食べ方を裏付けているのは歯だけでなく、鰭や鰓耙の構造と一体となっているのです。カワハギがアサリなどの餌に食いついて、残念ながら空振りになったとき特有の歯型が残っているので参考にしては如何でしょう。

カワハギの嗅覚はどうなってる?
では視覚が優れたカワハギの嗅覚はどうでしょう。
鼻は眼の前方上方に小さい鼻腔があります。表皮を取り除いて嗅板の構造を観察すると、臭い物質を感知する上で重要な役割を果たしている皺が一本あるだけで、相対的な表面積は極めて小さいことが分かります。

このことからカワハギは餌を見つける際には視覚に依存する比率が大きく、臭い物質を使用しても大きな効果は期待できないことが伺えます。
船からカワハギを釣るための多くの種類の仕掛けが市販されていますが、その殆どには金属製のプレートが装着されています。
カワハギが臭いでは無く、視覚によって餌を探していて、光沢のある金属板がカワハギの興味を誘うということが、古くから釣り人の間で知られていて、仕掛けにはそれが反映されているということになります。
最後にカワハギ釣りの先輩諸兄におこがましいとお叱りを受けてしまうかもしれませんが、カワハギは沈下する餌に強い興味を示していて、誘い上げる段階では、餌を吐き出していることが多いと感じます。
カワハギの釣果アップには送り込むときの微細なアタリをキャッチすることが有効と思われます。
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