「東大卒」はウソ!?学歴詐称の新入社員は解雇出来る?【弁護士に聞く】

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継続して働く場合、減給は出来るのか?

では、A君に継続して働いてもらう場合、A君の基本給を減額することはできるでしょうか。

従業員の基本給を減額する方法は主に2つあります。

1つ目の方法は、懲戒処分として基本給を減額する方法です。

一般的に、懲戒処分の種類として「減給」という懲戒処分が定められており、従業員が「減給」相当の問題行動を起こした場合には、懲戒処分として「減給」を行うことができます。本件でも、A君は学歴の詐称を行っており、会社との信頼関係を害する行為をしているので、「減給」を行うことは可能と考えられます。

ただし、労働基準法第91条で、「減給」を行う場合の限度額が定められており、問題行動1回につき、平均賃金の1日分の半額までしか減給できないことになっています。

したがって、懲戒処分として「減給」を行っても、実際に減給できる金額はわずかであり、数年間にわたって基本給を減額することはできません。また、就業規則に「懲戒処分」の項目を設けていないと懲戒処分を行うことはできませんので、その点には注意が必要です。

【参考情報】
減給とは?法律上の限度額は?労働基準法上の計算方法などを解説

2つ目の方法は、従業員の同意を得たうえで基本給を減額する方法です。

従業員の同意さえ得ることができれば、基本給を減額することは可能です。ただし、従業員は立場上会社の決定に逆らいがたいことから、形式的には従業員の同意を得ていたとしても、実際には同意をしたとは認められないと判断されることもあります。

例えば、過去の裁判例では、退職金の支給額が減額される方向で退職金支給基準が変更されることに関して、従業員に同意書面へサインしてもらっていましたが、支給基準の変更について十分な説明がなされないままサインをしたとして、自由な意思に基づいて同意をしたとは認めませんでした(最高裁判所平成28年2月19日判決)。

このように、基本給の減額について、形式的には従業員から同意を得ていたとしても、基本給をどれくらい減額するのかなど、従業員にもたらされる不利益の内容や程度などに関する説明を十分に行わないと、同意を得ていたとは認められない可能性があります。

また、基本給の減額幅があまりにも大きすぎる場合には、従業員に対して説明を尽くしていたとしても同意が認められないリスクが高まります。

本件では、A君の月の基本給がいくらかは定かではありません。しかし、例えば月の基本給が20万円である場合、月5万円を減額するとなると、基本給のうち4分の1もの金額を減額することになります。また、これを5年間継続した場合、5万円×12カ月×5年間で、合計300万円の減額となり、従業員にとって不利益が大きすぎるといえます。

したがって、「今後5年間は基本給から5万円減額する。5年間はベースアップ等も一切行わない」という内容を定めて、A君の同意を得たとしても、このような基本給の減額が認められる可能性は低いものと思われます。

基本給の減額を行うとしても、「1年間、基本給から毎月5000円を減額する」という不利益が小さい内容にし、従業員に対して減額の理由や不利益の内容等について説明を尽くし、書面で同意を得たうえで減額を行うことが望ましいです。

【回答者:弁護士法人咲くやこの花法律事務所 弁護士・木曽綾汰】

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