釣りエサのスペシャリスト・長岡寛さんの連載「お魚さんッ、私のエサに食いついて!」です。釣りエサに関する事以外にも魚の生態や環境など様々な内容を紹介します。
今回は、ルアーのカラーとタチウオの釣果の関連性について解説して頂きました。
釣り人なら気になる、ルアーの色彩と釣果の関係性
釣具店の陳列棚には、数多くのカラフルなエギやルアーが所狭しと並んでいて、その美しさに目を奪われてしまいます。
数多くの商品はそれぞれに形や大きさが異なるものがあるうえ、さらに色違いになっていますから、購入する時、いったいどのカラーを選べばいいのか迷ってしまいます。
ところで、前回お話ししました、魚が色を見分けることが出来るということと、「釣りエサ」の色彩の違いは釣果にどれくらい影響しているのでしようか。
前回記事 → 「魚は色を識別できる?」キンギョを用いた実験結果を紹介!魚の驚くべき能力とは!?
もしも釣り餌の色彩と、釣果の関係を調べるとしたらどうしたら良いでしょう?
すぐに実施できるのは、異なった色を付けた釣り餌を用いて、それぞれのカラーをローテーションしてお魚さんの反応の違いを見るという方法が挙げられるでしょう。
しかしながら、ウキ釣りのようなスタイルで釣り餌をぶら下げて待つことが出来る種類のお魚さんであれば、比較的容易にこの方法で判定することは可能と思われますが、ルアーで狙うフィッシュイーターのような、常に移動しているお魚さんとなるとなかなかそうはいきません。
というのも、対象となるお魚さんが近くにいるのかそうでないのかによって釣果が著しく違ってしまうからです。
たとえルアーの投入が均等であったとしても、1尾ヒットしている間に群れが通り過ぎてしまう可能性もあります。かといって、複数人数でローテーションするとなると、それぞれの釣り師の技量や釣り場のポジションによるムラが生じてしまうため、相当な回数を重ねる必要があります。
ルアーの場合はわずかなリーリング速度の違いであっても、アクションが大きく異なってしまいますから、色彩の違いなのかアクションの影響なのか、分からなくなってしまうかもしれません。
そうしたことから、私たちがルアーについて色違いの効果を確認するのは容易ではありません。
タチウオの引き縄漁でギモンを解明!
遊漁ではありませんが、幸いなことにそうした疑問の一部を解明するチャンスに巡り合うことが出来ました。
対象魚は釣り人にも人気の高いタチウオで、長さ300mの縄に付いた80本の枝鈎に餌を装着して海に投入し、船を低速で走らせながら釣るという漁法です。
私は2011年より2年間に渡り(独)水産総合研究センター、現・(独)開発調査センターの調査に立ち会いました。
テストを実施した漁場は四国を挟んだ豊後水道で、漁船の所属は大分県の臼杵漁協です。
この調査が実施された背景には、従来から使用されている生鮮釣り餌である冷凍のイワシやキビナゴの資源量が減少傾向にあることが挙げられます。
そのほか、イワシやキビナゴは1回の投入ごとに交換しなければならないため手間がかかることと、交換作業をしている間の船舶事故を低減させる目的があります。
その解決策の1つとして、耐久性が高く、保管も楽な疑似餌(使用したのはワームと呼ばれる専用に開発したソフトルアー。以下ここでは疑似餌と表記いたします)を引き縄漁に使用することにより、これらの課題の解決に繋げようというものです。
「赤が絶対」は本当なのか?気になる結果は…?
タチウオ用の疑似餌を開発していく途上で、形状や材質のほか、カラーについてもその違いについて確認作業を行うことになりました。
釣りによるタチウオ漁は「生鮮釣り餌」だけでなく、すでに「擬似餌」を使う漁業者も各地にいますが、その方々に「擬似餌」のカラーについて話を伺うと、皆口々に「赤が絶対」という答えが返ってきます。
この試験では、多くの漁業者や釣り人が絶対という赤色も含めた4色の擬似エサを試作品として用意しました。
それらの試作品には均等に釣れるよう、装着本数はもちろん、装着位置などについても工夫を凝らし、100回以上にも及ぶ投縄作業を行いました。
確認は白色(パールグロウ)の疑似餌を対照区として、ピンク(オキアミグロウ)、赤(ホットピンクグロウ)、グロー(ミッドナイトグロウ)を組み合わせて、それぞれのカラーにおける釣果を記録して統計処理を行いました。グラフはそれを表したものです。
結果は、タチウオは漁師や釣り人の予想に反して、どのカラーの疑似餌においても釣果に違いがないということが判明したのです。
さて、前述したように、こうした確認テストにおいて注意しなければならないことは、テストする釣り餌(あるいは疑似餌)については、色彩以外の要素を可能な限り排除することが必須となります。例えば投入回数や待ち時間、また投入位置や餌の大きさなどといったことです。
製品開発のプロセスとして重要なフィールドテストにおいて、万一意図的な思考が反映されてしまうと、関係者はもとより購入してくれるユーザーの方々に誤った情報を伝えてしまうことにもなりかねないので注意が必要です。
さて、お魚さんが色を識別することと釣り餌の色彩と釣果の関係については、もう少し続きがありますので次回にご期待願います。
(了)
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