【生物多様性】天然記念物イタセンパラの野生復帰
平成21年に近畿地方整備局が掲げた「淀川水系河川整備計画」では、イタセンパラ等の貴重種、固有種を始めとする多様な生物の生息・成育・繁殖環境の保全や再生が課題の一つに掲げられている。
イタセンパラは平成18年から稚魚が確認できない状況が続き、野生復帰させるために城北ワンドで平成25年に再導入が行われている。
一年魚のため繁殖期の環境で個体数は大きく変化すると言われているが、平成29年には8800尾、30年には2万767尾、令和元年1万1677尾の稚魚が確認され、平成25年の放流以降も再生産を繰り返している。昨年度は889尾と減少してしまったので注意深く見守る必要がありそうだ。
減少の要因としては外来魚の捕食や密漁なども考えられ、警察も監視に協力している。タナゴ釣りなどの小物釣り師はイタセンパラを釣り上げてしまうこともあるかもしれないが、錯誤捕獲した場合には放流するのはもちろんのこと、場所を移動するなど極力保護に努めるべきだろう。
【ワンド倍増計画】ワンドや干潟の整備、ヨシ原の保全
淀川では多様な生物の生息・成育・繁殖環境を整備する取り組みも積極的に行われている。
ワンドは1975年に130カ所あったが、1989年には34カ所まで減少。2007年からワンド再生に取りかかり、2020年には倍増以上の84カ所まで整備された。淀川河川事務所では当面の目標として90カ所以上を掲げている。
淀川大堰より下流に整備された干潟ではヤマトシジミや水ゴカイなどがしっかりと繁殖している。
鵜殿地区では淀川の原風景として、文化的にも重要なヨシ原の保全に取り組み、外来のツル性植物等の対策なども行われている。
これらの整備はより健全な水辺環境をつくり、釣り場のクオリティを高めているといえるだろう。将来に向けて淀川の魅力は増すばかりだ。
【釣り人マナー】ゴミ放置・迷惑駐車・立入禁止場所への侵入行為
淀川は堰や樋門、取水口周辺などの重要な施設や危険な場所を除くと釣りを楽しむことに規制はない。ボートを持ち込みやすい場所は限られているが、淀川大堰周辺の禁止・制限エリアを除けば、マイボートも自由に航行できる水域だ(※ジェットスキーのみ航行エリアを限定)。自由度が高い釣り場だからこそ、淀川をより良い釣り場にするためには釣り人のマナー向上が課題となる。
釣り人の行為で問題となるのはゴミやエサの放置、立入禁止場所への進入である。釣り人だけに特定できないが、迷惑駐車による苦情も絶えないそうだ。
今回、淀川河川事務所に伺い、河川環境課の日下慎二課長、占用調整課の中岡弘課長に話を伺うことができたが、淀川河川事務所と釣り界の接点がほとんどないとのことだった。
淀川は内水面の釣り場が少ない大阪においてたくさんの釣り人が訪れる貴重なフィールドだけに、釣り界はもっと積極的に河川環境整備のさまざまな活動に参加、協力すべきだと今回の取材を通して改めて感じた。
次回の「内水面釣り場の未来」のテーマは、今回の続きとしてもう一度淀川の環境整備を予定している。この水系でさまざまな画期的な活動を行っている「京の川の恵みを活かす会」の取り組みを中心に紹介したい。
(了)
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