釣具業界の各企業や団体が行っている釣り人を増やす取り組みや商品等を紹介していく「釣り、はじめませんか?」のコーナー。
今回は、ファッション業界でも話題となっている「DAIWA PIER39(ダイワピア39)」を特集する。
フィッシングの「DAIWA」と日本を代表するセレクトショップやオリジナル衣料を展開する「ビームス(BEAMS)」が協力し、フィッシングウェアではなく、ライフスタイルラインのアパレルブランドとして立ち上げられたのが「ダイワピア39」だ。「DAIWA」を展開するグローブライド(株)の新しい挑戦を取材した。
釣りのカルチャーを背負うライフスタイルアパレル
「ダイワピア39」は、ダイワが長年培ってきた釣りの経験や発想と、都市生活を満喫するためのファッションテイストが共存している商品構成だ。あくまで日常使いを中心に考えられたアパレルでありながら、釣り由来の機能やこだわりが随所に見られる仕上がりとなっている。
「ダイワピア39」はファッション感度の高い、若い人を中心に支持されており、感度の高いファッション関連のメディアに多数取り上げられている。
ユーザーからは「独特の世界観があってカッコいいから着ている。ポケットが多いなど釣りのテイストが入っていることも、トレンド感があって面白い」といった感想が聞かれる。
例えば、2020年秋冬商品として発売されたコーデュロイのジャケットもシルエットは独特なオーバーサイズでトレンドを感じさせる。
しかし、多くのインナーポケットがある事や、ラペル(襟元)には偏光レンズを掛けるホルダーがあるなど、釣り派生の機能を感じさせる細かい配慮もオリジナリティをしっかり演出している。
「ダイワピア39」は「大自然と都会をシームレスに繋ぐ架け橋」というコンセプトがあり、今まで釣りに興味のなかった人にも、釣りの文化を共有できる存在だ。
流通についても、名立たるセレクトショップを網羅しており、それぞれのリテールが展開するネット販売の展開も様々なビジュアルを駆使されており、釣具業界が進出できていないチャネルで評価を得ている。
グローブライドの一貫したアパレルへの取り組み
グローブライドがアパレルに力を入れてきたのは釣具業界では良く知れらている。フィッシングブランドの「DAIWA」のウェア群のデザインも一昔前のものに比べると、格段に洗練されたものになっている。
2017年から世界最大級のスポーツ用品見本市である「ISPO」にも出展し、2019年にはアウトドア部門「AWARD 2019 Winner」を受賞するなど、世界的にも認められるフィッシングウェアとなった。
また、フィッシングとは全く別のファッションアパレルとして「D-VEC」(ディーベック)を2017年より展開し、2020年2月より「ダイワピア39」が新たにスタートした。
この経緯を見ると、グローブライドが会社としてアパレルに力を入れてきた事が伺える。
グローブライドはアパレルについてどのように考えてきたのだろうか。今回の取り組みについて、グローブライドのアパレルマーケティング部の佐藤氏と広報室の吉川氏に話を伺い、その原点を訊ねてみた(以下、インタビュー記事)。
アパレルで何らかの新しい提案を行っていくという姿勢は、社名変更(ダイワ精工からグローブライドへの社名変更)を行った2009年当時から強く意識してきた事の1つです。ここ数年で、ようやくそれが形となって世の中に発表できるようになりました。
ブランディングを行う上でアパレルは重要な要素
アパレルというのは会社のブランディングを行う上で、非常に重要な要素だと考えています。さらに、例えば釣りには無縁な多くの方々との接点にもなり得る商品群です。また、ブランディングだけでなく「釣り」のイメージもアパレルによって大きく影響される重要なアイテムです。一例を挙げれば、アウトドア関連のアパレル展開が、その好例ではないでしょうか。
社名変更当初から、クリエイティブディレクターの佐藤可士和さんにも様々な点でディレクションして頂いている訳ですが、念頭から「釣り」を拡げる意味でも「釣具業界の中だけを見ずに、もっと外の世界を見ましょう」という話をされていました。
当初から思いはあったものの、東日本大震災等もあってなかなかチャレンジできなかったのですが、2017年頃から業界の外に向けた発信が叶うよう動き出しました。
ビームスとのコラボレーション。驚かされた発想
「ダイワピア39」はビームスの監修としてスタートしたのですが、どのような経緯や狙いがあったのでしょうか?
ブランディングを進めていく上で、セレクトショップに自社ブランドの商品が扱われている事は、釣りをされない方にも広く「自社ブランド」や「釣り」を意識してもらうためにも重要であり、当社の商品を取り扱って頂きたいと以前から強く思っていました。
しかし、その想いも簡単には形になりませんでした。また、セレクトショップはアパレル等を取り扱われるリテールなのですが、視点を変えますと1つの大きなメディアだと捉える事も出来ます。
こういった長年のテーマを当社は抱えていたのですが、そういった折に、ビームスが『他社のブランディングをゼロから監修してブランドを確立させる』という新しいビジネスモデルを立ち上げられました。偶然にもお互いの想いを知る事となり、新たなビジネスモデルとしてスタートする事になりました。これが2019年春、3月から4月頃の事です。
他社と組むことなく、グローブライド単独で新しいアパレルを展開するといった考えは無かったのでしょうか?
いろいろ動き出してよく分かったのですが、やはり業界が違うと商売の手法も違いますし、考え方も違います。外から見れば釣具業界も同じなのでしょうが、それぞれ独自の商売の仕方がありますから、その業界の方々と協業する方が上手くいく場合が多いと思います。
例えば、「ダイワピア39」はビームスにディレクションをしてもらっていますが、その商品は「ビームス」では販売しないのです。むしろディレクションに徹して頂いて、本来ならば競合であるはずのセレクトショップに展開を委ね、商品を取り扱ってもらっています。これが今回、我々が最も驚かされた発想です。
競合するセレクトショップの多くも「本気でやるのだったら、非常に面白いはず」という競合に対するリスペクトのような空気感があり、セレクトショップの皆さまが共鳴して、販売以上にシーンを盛り上げようとして頂けているように見えるのです。今になって冷静に考えますと、我々が独自の展開を図っていれば、そういった強い相乗効果が生まれることはなかったと思います。
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