ヘラブナの視覚、嗅覚、聴覚はどのぐらい?独特な魅力を放つ「ヘラブナを知る」【後編】

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昭和の初期に、30時間も木桶に入れた状態のまま貨車で運ばれてもほとんど死ぬことのない丈夫なお魚さんであるヘラブナは、適応能力が高く、周年釣りを楽しむことが出来ます。

ヘラブナが関東に移設され、各地の釣り場や釣り堀に放流されると、その人気は一気に高まりました。そんなヘラブナ釣りの釣果を左右する上で最も重要な要素の一つに、釣り餌が挙げられます。

ヘラブナ釣りの様子
独特の楽しさがあるヘラブナ釣り

前回でも少し触れましたが、植物性プランクトンを主食としているヘラブナは他の多くのお魚さんとは違って、ほとんどの場合、釣り針に装着した餌、或いはルアーに対して一気に飲み込むような食べ方はしません。

関連記事 → ヘラブナの体高はなぜ高い?昔から釣り人に人気、独特の世界観を持つ「ヘラブナ」を知る【前編】 | 釣具新聞 | 釣具業界の業界紙 | 公式ニュースサイト

ただし、生息場所や季節などの条件によっては動物性の餌を食べることもあります。これは水中の植物性プランクトンの発生が少ない時ほど顕著になります。

このようにヘラブナは生息場所に動物性の餌がある時は、他のフナ類と一緒にその恩恵にあやかり、それらが不足している時は、水中に浮遊する植物性プランクトンを食べて生きながらえることが可能で、水中の動物性飼料が欠乏すれば他のフナ類は餓死してしまいますが、ヘラブナは餓死せずにすむということになります。

さて通常の釣りでは、お魚さんが針に装着した釣り餌を食べてさえくれれば、かなりの確率でヒットします。

しかしながらヘラブナは、通常固形物の餌をそのまま飲み込むことはしませんから、水中で開いてバラける機能を備えた練り餌を使用します。

この練り餌の調整如何で劇的に釣果が異なるのが、ヘラブナ釣りが他の釣り物と大きく異なる点であると言ってもいいでしょう。

ヘラブナ釣りの餌に求められる物性は、投入した後に水中で溶解し、その粒子が分散しながら沈下していく様子、これをヘラブナ釣り師は「バラケ性」と呼んでいて、一方ではバラケ性を発揮しつつも、釣り餌として、しっかりと釣り針に残っている必要があります。

少しでも柔らかすぎるとヘラブナを集めることが出来ても餌が針抜けしてしまうため釣りが成立しません。その反対に少しでも硬さや粘り加減が強いとヘラブナは集まって来ない上に、吸い込んではくれません。

この度合いを判断するためにヘラウキと呼ばれる、独特のウキが進化していて、大変繊細な作りになっています。

思いのほか視力や嗅覚も鋭いヘラブナ

さてヘラブナは、湖沼、河川の中、下流域と広範囲で、水が綺麗すぎる場所と流れが強すぎる場所以外の多くに生息しています。

水の透明度が低い場所にも多く見られますが、思いのほか視力は発達していると考えています。というのは、時折ではありますが、ブラックバスを狙っている時に使用しているワームに食いついてくることもありますし、釣り場で仕掛けの調整をしている最中の空の釣り針に食ってくることもあるからです。

麩餌が主流となった大きな要因の一つには、投入後沈下していく麩の粒子がヘラブナの視覚に効果的にアピールしていることではないかと考えています。

また硬い細胞壁に覆われている植物性プランクトンを食べているので嗅覚はそれほど発達していないのではないかと思いきや、嗅覚を感知する嗅板は大変複雑な構造をしていることからかなり鋭敏であることが判別できます(図1)。

ヘラブナの嗅板
(図1)ヘラブナの嗅板

植物性プランクトンが大量に発生する場所では世帯交代も活発になり、その死骸などから溶出する僅かな誘引成分を鋭敏にキャッチすることが出来ます。

聴覚も大変発達していて、ヘラブナを含めたコイ科のお魚さんの多くは骨鰾類と呼ばれていて、ウェーバー器官という独特の構造を持っています。

これは浮袋に繋がった特有の骨で振動を伝える仕組みで、水中からだけではなく水深が浅い場所に生息している関係上、陸の上から接近してくる外敵が発する僅かな音を鋭敏にキャッチして危険回避することを進化の途上で獲得したものと思われます(図2・3・4)。

ヘラブナの耳石
(図2)ヘラブナの耳石
(図3)ヘラブナの鰾(浮袋)とウェーバー器官の略図
(図4)結骨(ウェーバー器官の一部)

ヘラブナ釣りが大変面白く奥が深い理由はいくつもあるかと思いますが、何と言っても植物性プランクトン食のお魚さん特有の餌の食べ方が筆頭に挙げられると思います。

というのも幾度かお話ししているように、通常固形物をそのまま飲み込むことが無いため、釣り針に装着した餌の周囲に分散している粒子を吸い込みに来ます。

餌の粒子を吸い込んでいるヘラブナは徐々に食欲が高まり、ついに餌を釣り針ごと吸引することになりますが、吸引した釣り餌と釣り針が口腔内に滞留する時間は極めて短いため、うっかりしているとアタリを見逃してしまいます。

そのため投入した後は細いウキのトップから一瞬たりとも目を離すことが出来ません。しかも現在主流となっている麩系の餌は、水を加えて練りますが、作成した後は時間の経過とともに著しく物性の変化が起きるため、頻繁に調整し続けることが求められます。

こんな書き方をすると、とても難しく感じてしまうかもしれませんが、ヘラブナ釣りは延べ竿の釣りであるため仲間と並んで竿を出すことが出来ます。気の合った仲間や家族での会話もでき身近な場所で楽しめるターゲットの一つです。

長岡寛さんの記事はコチラ → 長岡寛 | 釣具新聞 | 釣具業界の業界紙 | 公式ニュースサイト

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