チャーター予約で3名しかこない!?支払いでトラブル発生。乗船料100%のキャンセル料金は合法?【弁護士に聞く】

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「釣具業界の法律相談所」は、釣具業界で起こる可能性のあるトラブルについて、弁護士の先生に見解や対処方法をお聞きし、紹介するコーナーです。今回は釣り船のキャンセルについてのトラブルです。【質問は全て架空の質問です】

「釣具業界の法律相談所」のカット
 

1隻チャーターで3名しか来れなくなった。「支払いは3名分だけ」と言い張る予約客

弊社は遊漁船業を営んでいます。船長の腕も良い事から「釣果も良く、サービスも良い」と釣り人から好評を得ています。しかし先日、お客様とキャンセルをめぐり、トラブルになってしまいました。

そのお客様は、特定の日時を指定し、20名の団体予約をしてきました。20名であれば釣り船1隻を貸切る形になります。通常、乗船料は1人1万円です。しかし、1隻をチャーターする場合には、乗船される方が10名でも20名でも、チャーター料金として16万円をお支払いしてもらう事で予約を受けています。この方も、1隻のチャーターで予約をしてもらいました。

船釣りのイメージ写真
チャーターは釣り人や釣り船にとっても有難い場合が多いはずだが…

当日の朝になり、そのお客様から連絡がありました。「20人で予約をしていたのですが、急きょ都合が悪くなり3人しか行けなくなりました。乗船料はお支払いしますが、3人なので通常料金の3万円はお支払いします。16万円は支払えません」との事です。

燃料代の高騰もあり、最低でもお客様に10人以上乗船してもらった状態で出船しないと弊社も赤字になってしまいます。3人では出船出来ません。当日になって他のお客様に来て頂くのも不可能です。

弊社は1隻の貸し切りで予約を受けており、しかも当日キャンセルのため、16万円を支払ってもらわないと困ると、そのお客様に伝えました。弊社ではホームページにも「当日のキャンセルは100%の乗船料(チャーター代)を支払って頂く場合があります」と明記しています。

しかし、予約してきたお客様は「20人の多くは食中毒になってしまい、今日釣りに来る事が出来なくなった。その人達からお金は徴収できないので16万円は支払えない。そもそも、やむを得ない理由でキャンセルしており、サービスも提供されていないのに全額保証しなければならない必要はあるのか。半額にでもならないのか。どうしても全額保証しろというなら裁判を起こしてくれ」と文句を言ってこられ、トラブルとなってしまいました。

そこで弁護士の先生に質問です。

弊社は「当日のキャンセルは100%の乗船料(チャーター代)を支払って頂く場合があります」とHPに明記していますが、そもそも、当日キャンセルされたお客様に100%のキャンセル料を支払って頂く事は、法律的に問題がないのでしょうか。

また、弊社では明確なキャンセルポリシーは作ってはいませんが、「前日までなら50%のキャンセル料金を請求する」といった事をこちらが一方的に決めてお客様に請求する事は、法律的に問題がないのでしょうか。

実際、お客様にいくら請求するかは決めていませんが、ご回答をお願い致します。

【弁護士からの回答】キャンセル料金を請求して問題なし

船釣りのイメージ写真
楽しい船釣り。いずれにしても、予約の変更は早めに連絡を

貴社では、ホームページにおいて、「当日のキャンセルは、100%の乗船料(チャーター代)を支払って頂く場合があります」と明記しているとのことです。

ホームページにこのような記載をしている場合、当日キャンセルした利用客に対してキャンセル料を請求することはできるでしょうか。

結論から申し上げますと、ご質問のケースにおいて、貴社は、利用客に対してキャンセル料を請求することができます。

その理由について、具体的に解説していきます。

「平均的な損害の額」を超える金額を徴収するキャンセル料の定めは無効

まず、契約の内容は、それが法律に違反するなどでない限り、当事者が自由に決めることができます(民法第521条第2項参照)。そのため、遊漁船のチャーターに関して、貴社が利用客との間で「当日キャンセルした場合にはキャンセル料が発生する」という契約をすること自体に問題はありません。

もっとも、消費者契約法という法律では、消費者にとって一方的に不利なキャンセル料が定められないように、契約の解除に伴って事業者に生じる「平均的な損害の額」を超える金額を徴収するキャンセル料の定めは、その超える部分について無効であると定められています(消費者契約法第9条第1項第1号)。

そのため、キャンセル料を定めていたとしても、定めたキャンセル料の金額が「平均的な損害の額」を超えている場合には、消費者契約法に違反する契約内容ということになり、「平均的な損害の額」を超えている部分について無効となります。

つまり、キャンセル料100%と定めていたとしても、利用客に対して100%のキャンセル料を請求することができなくなります。

ご質問のケースでは、当日キャンセルされた場合のキャンセル料として「100%の乗船料(チャーター代)」と定めていますが、これは「平均的な損害の額」を超えているといえるでしょうか。

この点について、1隻のチャーターが予約された場合、船1隻を貸切る形になるため、予約された日に関しては、以降の利用客予約は受付停止することになるでしょう。 そのため、予約のキャンセルを伝えられた日が、出船日の直前であればあるほど、新たに予約の受付を開始したとしても、他の利用客を集めるための時間的余裕がなく、他の利用客を集められない可能性が高くなります。

このように、他の利用客を集められなければ、本来得られたはずの売上を得ることができなくなってしまいます。

特に、出船日当日にキャンセルの連絡がなされた場合には、他の利用客に予約してもらい乗船してもらうことは不可能とのことですので、キャンセルされた予約における乗船料全額が損害として発生することとなります。

したがって、ご質問のケースにおいては、当日キャンセルされた場合の「平均的な損害の額」とは、キャンセルされた予約における100%の乗船料であると考えることができます。そのため、貴社におけるキャンセル料の定めは、消費者契約法によって無効となるものではありません。

よって、貴社は、当日予約をキャンセルした利用客に対して、キャンセル料の定めに従って、チャーター料金全額の16万円を請求することができます。

ルールを設定して使うためには事前に利用客の同意が必要

次に、貴社においてキャンセルポリシーを作成せずに、「前日までなら50%のキャンセル料金を請求する」と貴社が一方的に決めたうえで、利用客に対してキャンセル料を請求することはできるでしょうか。

この点について、「前日までのキャンセルの場合にはいくらのキャンセル料」「当日キャンセルの場合にはいくらのキャンセル料」といったルールを使うためには、そのルールについて事前に利用客に同意してもらう必要があります。

例えば、遊漁船の予約時にキャンセル料を定めたキャンセルポリシーを利用客が確認できるようにしておき、「キャンセルポリシーに同意します」という欄にチェックをさせる仕組みを設けることで、利用客にキャンセル料に関するルールに同意してもらうことができます。

このような形でキャンセル料に関して利用客との間で合意しておらず、貴社が一方的にキャンセル料を決めているだけでは、キャンセル料を利用客に請求することはできません。

キャンセル料条項を作る際の法的な注意点は以下のページで詳しく解説していますのでご参照ください。消費者契約法で無効にならないキャンセル料条項の作り方【高額キャンセル料トラブルに注意】

実際に発生した損害額は利用客に損害賠償請求が可能

一方、貴社が一方的に決めたキャンセル料を請求することができなくても、利用客が前日までにキャンセルしたことによって、実際に貴社に損害が発生した場合には、実際に発生した損害額に限って、利用客に対して損害賠償請求することが可能です。

具体的には、貴社が他の利用客を新たに集めることが不可能な時期に、利用客が一方的に予約をキャンセルする行為は、不法行為に該当する可能性があります。

利用客のキャンセル行為が不法行為に該当する場合、当該キャンセル行為によって貴社に生じた損害を賠償するように請求することが可能となります(民法第709条)。

そのため、利用客が予約をキャンセルしたことによって、遊漁船を出船することで通常得られたはずの利益が得られなかった場合には、その金額をキャンセルした利用客に請求することが可能です。

【回答者:弁護士法人咲くやこの花法律事務所 弁護士・木曽綾汰】

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