【第3回】アユルアーで新たな友釣りファン作り。釣り場次第で新たなゲームフィッシングも誕生か!?

スペシャル ニュース
パームスのエスケード
キャスティングアユ・エスケード。サイズは80㎜と100㎜がある

キャスティングでアプローチする「アユルアー」

 ルアータックルメーカーのパームス社から昨年5月に発売された「エスケード」というアユルアーが渓流ルアーマンの間で注目されている。オトリを取ることが主目的の既存のアユルアーと異なり、キャスティングでのアプローチを念頭において開発された逸品だ。

 開発者は同社のルアーデザイナー・飯田重祐氏。渓流のルアーフィッシングに精通する同氏は、「アユを食べるのが好きだが、友釣りはハードルが高い」と感じていた。

 だが、地元の相模川などでアユルアーが解禁になり、「ルアーなら手軽に釣れるかもしれない」と疑似餌の友アユ作りに取りかかった。

 バルサ材を削っていくつもの試作を作り、まずは昨年の5月に80㎜のインジェクション版をリリース。今シーズンはサイズアップした100㎜版がラインナップに加わった。

 トラブル回避性能とアクションにおいてフローティングタイプがベターだという結論に達し、オトリアユと同様に自動ハリス止めでハリを交換できるシステムを採用。主にチャラ瀬(浅場)で威力を発揮するという。

渓流ルアーマンは他ジャンルの釣り人より、鮎のルアーフィッシングに入りやすい

 渓流ルアーマンはすでにタックルやウェーダーを所有しているし、川歩きにも慣れている。

 さらに普段から遊漁料を支払って釣りを楽しんでいるため、他のジャンルの釣り人よりもアユのルアーフィッシングに入っていきやすい。また、トラウトが釣りづらくなる盛夏(7~8月)がアユルアーのハイシーズンになるので、夏場は早朝にトラウトを釣って、日中は川を下ってアユを狙ってみるのもいいと飯田氏はいう。

 釣りだから時期や天候等で釣果は左右されるが、30尾以上釣れる日もあれば、初めての人が10尾に到達したこともあるそうだ。まだまだアユルアーを禁止にしている釣り場は多いが、フィールド次第で新しいゲームフィッシングが誕生する可能性は十分にあるだろう。

アユルアーの注目度を高めてきた仕掛け人はカツイチの中川社長

 アユルアーの注目度を高めてきた仕掛け人は、カツイチ社の中川宗繁社長だ。

 アユ釣りは愛好者が減少傾向にあるうえに高齢化が進んでいる。その人口、マーケットともに全盛期の10分の1以下に落ち込んだ。遊漁料収入がピーク時の20分の1になった河川もある。

 中川社長はこの釣りの魅力を若い世代に伝えきれなかったのはメーカー、釣り界、漁業関係者の怠慢だったと90年代のアユ釣りブームを振り返る。

ルアーを使ったアユ釣りの講習会の様子
アユルアーが普及すれば、もっと若い世代にも友釣りが受け入れられるかもしれない

2012年よりアユルアープロジェクトを立ち上げ、逆風でのスタート

 アユルアーが普及すれば若い世代にもっと友釣りが受け入れられるかもしれないという思いから、カツイチでは2012年にアユルアープロジェクトを立ち上げた。

 アユルアーを公に解禁している河川はほとんどなく、ゼロからのスタートだった。遊漁規定の改定を全内漁連や漁協等へ提案しても相手にされず、メディアにもその必要性が理解されなかったという。

 一部の友釣り師やオトリ店から非難される中で、友釣り界の鬼才、村田満氏は「売ったらええ」と背中を押してくれた。カツイチ社第一号のアユルアー「リアユ」は発売年のカタログに載るまで社員も知らない極秘事業だったと中川社長は開発秘話を語ってくれた。

 「リアユ」はオトリの代用として発売2年間は順調に売り上げを伸ばし、その後は販売数が伸び悩む。だが、中川社長は商材として軌道に乗らなくても川に若い釣り人を呼び戻すためにアユルアーを解禁した河川を回り、漁協とコラボでアユルアー体験会を開催してきた。

 リアユの知名度はオトリ店の閉店数と相反するように高まり、3年前からはV字回復的に再び売り上げが伸びてきたという。

ルアーを使ったアユ釣りの講習会の様子
関西の釣具店員を対象に実施した「鮎ルアー体験会」の様子

 2019年からはパームス社とも連携してのプロモーションに取り組み、今シーズンはアユ師が使いやすいように改良された「リスケード」をカツイチ社から発売することになった。

 中川社長は「アユルアープロジェクトは川に釣り人を戻すボランティア活動です(笑)」という。

 従来の友釣りとアユルアーの垣根を取っ払い、川に若い釣り人を呼び戻したいという強い思いがあるからこそこの活動が継続できるのだろう。今後、漁協運営がさらに厳しく、オトリ店の廃業が増えれば、アユルアーの出番が増えるかもしれない。

ルアータックルで生きたオトリアユも操作!ルアーマンに友釣りのエントリーを促す新しい方法

生きた友アユをルアーロッドで巧みに操作する久保浩一氏
リアユプロジェクトを牽引してきた久保浩一氏。生きた友アユをルアーロッドで巧みに操作する

 ルアーフィッシングの愛好者をターゲットに友釣りのエントリーを促すなら、ルアータックルによる生きた友アユを使用するという方法もある。

 一部の河川でリール使用のアユ釣りを禁止しているが、限られた数河川しか楽しめないルアーの友釣りと比べれば、そのフィールドは大きく広がる。

 カツイチ社のテスターとしてリアユプロジェクトを牽引してきた久保浩一氏はルアーだけでなく、生きた友アユもルアーロッドで操作する。ルアーの場合はどうしても釣り人のポジションから下流側を釣ることになるが、生きたオトリは上流や対岸へ向けて泳いでくれるため、ルアーではできないアプローチが可能だ。

 友アユの扱いには慣れが必要だが、川幅が広くない河川ではアユ竿がなくてもルアーロッドや渓流竿、磯の上物竿でも友釣りは可能だ。周りに迷惑がかからない範疇であれば、アユ釣りエントリーの間口を広げるために、専用竿以外の友釣りもアリなのかもしれない。

 50歳以上が半数以上を占めるアユ釣りの世界。漁協や釣具業界は厳しくなる高齢化問題にどう向き合えばいいのか。潜在的アユ釣りファンを取り込むのは、「高度なテクニック」よりも「お手軽なアユ釣りスタイル」なのかもしれない。

【第3回・了】

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