一般社団法人南紀串本観光協会の宇井晋介氏の連載「釣りで町おこし」。ここでは、釣りを通じた地域振興などについて話して頂きます。今回が最終回です。
フィッシングショーOSAKA2024が無事に終了した。人数的な事で言うと今回は前年比3%程の増加で、会場の熱気はコロナ前を思わせるほどすごかった。横浜のフィッシングショーも、前年対比大幅増で多くのお客様がお越しになったと聞く。
今回の大阪会場の一番の特徴は「地方創生ブース」が作られた事。串本も「フィッシングタウン串本」として10年ほど前から出展させて頂いていたが、きらびやかなメーカーブースの中で、ちょっと異質な雰囲気を醸し出していた。
ところが、今回は南は九州から北は北海道までの釣りを観光に活用している地方ブースが並び、非常に心強く、また地方の注目の高さが分かる出展内容であった。
開催期間中に行われた創生ブースの懇親会でも、各出展者の取り組みが紹介され、様々な特色ある取り組みに感心させられた。また各地の担当者の熱意には圧倒される思いであった。
アフターコロナで釣りブームが終息したって本当?
コロナ禍に端を発したキャンプブームが去ったとマスコミが喧伝している。確かにキャンプ関係のメーカーなどについては、中々厳しい所も出てきている。釣り関係も同様であることは、釣り業界の皆さんも周知の事実。先行きについても様々な事が言われているが、さてどうだろうか。
私自身は、ここ数年のキャンプブームも釣りブームもコロナの落とし子で、確かにどちらも一時のバブルではあったが、そのまま終息していくとは思えない。確かに「にわかキャンパー」と「にわか釣り師」は激増したが、これら全てがブームが去ったからといっていなくなってしまうことはないと考える。
なぜなら、1つはこのブームの間に買い貯めたキャンプ道具なり釣り道具なりが手元に残っている事、そしてもう1つが何よりこの間にキャンプの楽しさ、釣りの楽しさを覚えた人が一定数いる事である。もちろんブーム終息と同時に道具も手放してしまったという方もいるだろうが、そうでない方も決して少なくないはずである。
以前の稿でも書いたが、釣りの楽しさは世代から世代へと伝わっていくが、一度途切れてしまうと新たに紡いでいくのはとても難しくなる。その点で、今回これまで釣りの楽しさを知らずに生きてきた人たちの中で、その楽しさに気付いた人が多くいる事は将来とても楽しみな事である。
深刻な釣り場の減少。今後釣り人が行っていくべき事とは?
一方で、心配なことも多い。一番の心配は今回のブームの影響もあって、釣り場の閉鎖が相次いでいる事である。せっかく新たな釣り人が増えても、それを受け入れる場所がないという現実がある。
釣りで町おこしといっても、肝心の釣り場がどんどん減少していく様では、町おこしどころではない。特に釣り初心者が気軽に竿を振れる場所は、これからの釣り人口減少に歯止めをかける意味でも最も重要で、守っていかなければならないところである。
釣りの町としては一番に取り組まねばならないのは、こうした場所がこれ以上減らない様にする事と、あわよくば増やす事である。
減っている理由は、釣り人を初めとする利用者のモラルの低さ。ゴミの放置や夜間の騒音などがひどく、管理する漁業者や近隣住民からの反発で止められている場所が少なくない。
先日、近くの漁港を管理している遊漁船の船長からこう言われた。「僕たちも釣り人はお客さんやし、一般の釣り人も締め出したいと思ってる訳やないんよ。でもゴミの放置とかがあんまりひどいんで閉めざるを得ない。立て看板でも立てば少しは解消されるかも。どこかで作ってくれへんかな」と。恐らく多くの漁港の閉鎖理由も良く似たものだろう。
解決策になるかどうかは分からないが、対策として、ゴミ捨て禁止看板を町なり釣り人団体なりが作って漁業者に立ててもらう等の方策も必要だろう。訪れる釣り人にカンパしてもらう事も良いかも知れない。
「釣り人」対「漁業者」の対決姿勢ではなく、「釣り人」と「漁業者」が協力して漁場、そして釣り場を守っていく、そんな形が唯一未来の釣り場を守る手立てになる、そんな気がする。
全国どこでも「フィッシングタウン」になり得る!
私の住む串本は「釣りの町」という事で言えば極めて恵まれた町で、交通事情が良くなった今でこそ昔の栄光はやや陰りを見せてはいるが、それでも一度は串本に行ってみたいという釣り人は多い。年中何かしらの釣りができ、釣り物が多く、釣れる魚も大きいという場所なので釣り人にとっては聖地と言える場所であるが、全国でみればこうした場所は少なくないだろう。
しかし、釣り魚や釣り場に恵まれていなくても、釣りで町おこしは出来る。大きな魚、美味しい魚にこだわらなければ、この日本には釣りの対象となる魚はいくらでもいる。
「釣りの楽しみ=いい魚を釣る事」という概念さえ捨てれば、水のあるところ、全国どこもフィッシングタウンにする事が出来そうだ。
「釣魚大全」は欧州の作品だが、いま世界で一番釣りを愛しその心を理解しているのは日本人ではないかと思う。釣りをキーワードにした様々な取り組みが全国各地で出現し、これからの釣りの隆盛に繋がることを願ってやまない。
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連載第1回はコチラ → 観光客10人に1人が釣り人!?串本町が行う「釣りを通じた地域振興」【釣りで町おこし】
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