観光客10人に1人が釣り人!?串本町が行う「釣りを通じた地域振興」【釣りで町おこし】

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一般社団法人南紀串本観光協会の宇井晋介氏の新連載「釣りで町おこし」。ここでは、釣りを通じた地域振興などについて話して頂きます。

先日取材で釣具新聞さんにお越しいただいたおり、有難い事に私がこれまで行ってきた釣りを使った地域振興である「フィッシングタウン串本(くしもと)プロジェクト」をご紹介して頂けるというご案内を頂き、今回から連載をさせて頂く機会を得た。

関連記事 → 【釣りは観光資源の主力】和歌山県串本町。起きて30分でカジキもアマゴも釣れる!釣り人の天国がここにあった

私がこれまで実践してきた釣りの取り組みを紹介しながら、実践を通じて感じた事を中心に、「釣りを使った地域振興」の可能性を掘り下げ考えてみたいと思っている。

学術論文ではないので、あくまでも現場での実践を通じて感じたままを記していきたいと考えている。どうぞお付き合い下さい。

串本は魚類の宝庫!1600種以上の魚が生息する釣り人の「聖地」

「串本って知ってますか?」大阪や東京の街頭でこう聞くと恐らくほとんどの人は知らない。聞いたことがあるとしたら、それは台風速報の中で聞いたことがあるくらいで、潮岬という名前とセットになった名前だろう。

潮岬灯台
和歌山県串本町の先端、潮岬(しおのみさき)灯台。本州の最南端にあたる

しかし、その知名度がグンと上がる場所がある。それはフィッシングショー。特に同じ近畿にある大阪のフィッシングショーで同じ質問をすると、ほとんどの人が串本の名前を知っている。こちらが串本と分かると、すぐに共通の話題が出来るほどだ。それ程、串本は釣りとは切っても切れない町なのである。

それはこの町の海の特性にある。串本は紀伊半島の南端、太平洋に一番突き出した場所にある。その先端は潮岬(しおのみさき)であるが、この海は他の海にはない特性を持っている。それは、この潮岬を挟んで東西で海の中が異なる事である。

串本市街
両側を海に挟まれた串本市街

一番の違いは海の中に生えているものである。海中公園がある串本の西側は、海の中にサンゴが一面に広がっている。対する東側にはサンゴは無いか、あってもごく少なく生えているのは地元で「めえ」と呼ばれる海藻である。サンゴは熱帯性、「めえ」と呼ばれるカジメに代表される大型海藻は温帯性の生き物である。

串本は、人口わずか1万5000人ほどで、両サイドを海に挟まれた町だが、簡単に言うとこの小さな町の中に「沖縄の海=熱帯」「本州の海=温帯」が共存しているのである。世界広しといえども、これだけコンパクトな町の中に2つの性質の異なる海が共存している事例はあまりない。

串本は、釣り人と並んでダイバーの訪れる町として有名で、この小さな町にダイバーショップが30軒以上も軒を連ねている。ダイバーが訪れる目的は美しい海、そして生き物の豊富さだ。

生き物の中で大きな比重を占めるのは魚であり、サンゴが茂る西側の海には沖縄で見られるカラフルな魚たちが多く見られる。

串本のサンゴ群落
側にある串本海中公園前のサンゴ群落。東側とは様子が大きく異なる

一方、海藻が茂る東側の海ではアジやメバルなどが見られる。分かりやすいのは貝類で、東側の海にはアワビやサザエが多いが、西側では特にサザエは見られない。

これだけ東西で生き物が異なるので、釣り人が釣る対象魚の種類も天文学的に増えてくる。現在、この日本で確認されている魚類の種類は4800種ともいわれるが、この串本には1600種以上が確認されており、今も増え続けている。なんと日本の魚の3分の1がこの串本にいる勘定である。

釣り人の相手をしてくれる魚たちの種類がほかよりも圧倒的に多い事によって、この串本は様々な釣りをする釣り人を満足させてくれる場所となっているのである。

串本の全盛期、そして今

橋杭岩
串本町のシンボル・名勝「橋杭岩(はしぐいいわ)」

串本が釣り人にとって一番の憧れ「聖地」であったのは、昭和30~40年代である。当時はまだ交通が不便で、高速道路もほぼなく、大阪近郊から7~8時間もかかった時代である。

当時は不便な車ではなく、鉄道で来る人が多かった。特に磯釣り列車と銘打った夜行列車が天王寺(大阪市内における南のターミナル駅)と串本を繋いでおり、早朝串本に着く夜行列車の為に駅前は夜明け前から煌々と明かりがつき、喫茶店が開き、エサ屋には釣り人が行列した。

駅近くの渡船場からはひっきりなしに渡船が発着し、今と比べればはるかに多くの渡船屋が町内各所で営業していた。

それに比べれば、今の渡船屋の数は全盛期には遠く及ばず、昔はよかったという声をよく聞く。確かに磯釣りで訪れる釣り人の数は昔より大きく減った。

ドウネ
関西でも有数の磯「ドウネ」(後ろは潮岬灯台)

しかしながら、今はそれに代わるカセ釣りや沖釣りの遊漁船が多くなり、串本にとって今も釣りが観光の大きな柱の1つとなっている事は間違いない。

和歌山県が出している「和歌山県観光動態調査」の令和3年版によると、串本の年間観光客数は114万人で、そのうち釣りを目的とした観光客は12万7000人となっている。

実に串本を訪れる人の11%、すなわち10人に1人が釣りのお客さんなのである。

ちなみに、コロナ前の数値でも156万人の来訪者中、16万5000人が釣りで串本を訪れている。

これだけ多くの串本を訪れてくれる釣り人をもっと増やし、そして釣りだけでなくもっと違う事を楽しんでもらえたら。それが、「フィッシングタウン串本プロジェクト」の発端だった。(次回の記事へ続く)

関連記事 → 長崎県五島市で「オールインワンフィッシング in GOTO」スタート。 釣りが初めての人でも手ぶらで「釣りの聖地・五島」の釣りが楽しめる | 釣具新聞 | 釣具業界の業界紙 | 公式ニュースサイト (tsurigu-np.jp)

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