釣具店で釣り禁止の釣り場を誤って紹介。釣り人が入ってしまい警察沙汰に。罪に問われる?【弁護士に聞く】

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「釣具業界の法律相談所」は、釣具業界でも起こる可能性のあるトラブルについて、弁護士の先生に聞いて見解や対処方法を紹介するコーナーです。

今回は、釣具店で釣り禁止の釣り場を誤って紹介した場合、罪に問われるのかについて弁護士の先生にお聞きしました。

「釣具業界の法律相談所」のカット
      

釣り禁止の釣り場を紹介してしまった!?お客さんはそれを信じて釣り場に…

私は釣具店を経営しています。先日、当店がお客様に紹介していた「ため池」でトラブルが起きました。

その「ため池」は、数十年前から魚が良く釣れる池で、近隣の釣り人の間では有名な釣り場でした。当店では、その「ため池」の地図を作成し、池の中でも何処が良く釣れるのか、どの場所ではどのように攻めれば良いか等を詳細に記したマップも掲示していました。また、「魚釣りがしたい」というお客様には、当店から近くにあるこの「ため池」を紹介する事も多くありました。

ところが、この「ため池」が今年に入ってから突如、「釣り禁止」になってしまいました。池の周囲には、新たにフェンスが張り巡らされ、池に近づけないようになっていました。さらに、フェンスには「釣り禁止」の看板も設置されていました。当店は釣り禁止になった事を知らずに、今年に入ってから今まで、お客様にこの「ため池」をご案内していました。

問題となったのは、当店がこの「ため池」を紹介したお客様が、釣り禁止の看板があるにもかかわらず、フェンスの中に入られて、この「ため池」で釣りをされていた事です。近所の方から通報されてしまい、警察沙汰となりました。

お客様は警察に対して「確かにフェンスもあり、釣り禁止の看板もあったが、近隣の釣具店でこの池を紹介されたので、自分は釣りをしても良いと思った」と答えたそうです。当然、当店にも警察から問い合わせが来る事態となりました。

この「ため池」は地元の水利組合が所有者になっています。今までは釣りをする事も認められており、何のトラブルもありませんでした。今回の件で、水利組合に問い合わせてみると、昨年末に代表が交代したことにより、今年から釣り禁止にする事が決まっていたそうです。理由は子供が池に近づかないようにするため、との事でした。

そこで、弁護士の先生に質問です。

まず、フェンスがあり、「釣り禁止」の看板が設置されていた「ため池」で釣りをしていた当店のお客様は、何等かの罪に問われてしまうのでしょうか。また、釣り禁止になった事を知らずに、この場所をオススメしていた当店も、何等かの罪に問われるのでしょうか。ご回答をお願い致します。

(※この質問は架空の内容です。実際の企業等とは一切関係がありません)

釣り禁止のマーク
釣り禁止の場所が増えているが、間違って入って釣りをしてしまった場合どうなるのだろうか…?

顧客は立入禁止場所等侵入の罪に問われる可能性が高い【弁護士の回答】

フェンスがあり、「釣り禁止」の看板が設置されていた「ため池」に侵入して釣りをした顧客の行為や、「ため池」で釣りをすることをお勧めした貴社の行為には、何らかの罪が成立するのでしょうか。

結論としては、ため池に侵入した顧客は、軽犯罪法という法律の罪に問われると考えられます。一方、貴社が罪に問われることはないでしょう。順にご説明します。

まず、立入禁止とされていたにもかかわらず、「ため池」に侵入して釣りを行った顧客の行為について検討してみます。

軽犯罪法1条32号は、「入ることを禁じた場所」に正当な理由なく入った者を罰することを定めています。そのため、侵入してはいけない場所に侵入してしまった場合、軽犯罪法1条32号の立入禁止場所等侵入の罪が成立する可能性があります。

立入禁止場所等侵入の罪に問われるのは、次の4つを全て満たす時です。すなわち、① 入ることを禁じた場所であること、② ①の場所に入ったこと、③ ①の場所に入った行為に正当な理由がないこと、④ 立ち入ろうとする場所が「入ることを禁じた場所」であることを認識していたこと、を満たす時です。

①について、「入ることを禁じた場所」とは、土地の所有者や管理者が立入禁止の意思を表明した場所のことをいいます。看板や張り紙などの書面で立入禁止と表示したり、柵やロープなどで物理的に立入りを禁止したりすれば、立入禁止の意思を表明したことになります。

ご質問のケースでは、「ため池」の周囲にはフェンスが張り巡らされ、池に近づけないようにされており、物理的に侵入できないようになっています。また、「釣り禁止」の看板も設置されており、少なくとも釣りをする目的で「ため池」に侵入することは禁止されていることがわかります。また、この釣り禁止の措置は、「ため池」を管理している地元の水利組合が決めたことです。したがって、「ため池」は「入ることを禁じた場所」ということができ、①にあたります。

ため池のイメージ
今回のケースでは、ため池は「入ることを禁じた場所」。立入禁止場所等侵入の罪が成立する可能性がある

②について、顧客はフェンスの中に入って「ため池」で釣りを行っていたとのことですので、入ることを禁じた場所に「入った」といえます。したがって、②にあたるのは明らかです。

③について、「正当な理由」がある立ち入りとは、人命救助のためや、犯人を追跡するために立入禁止場所に入ることをいいます。ご質問のケースでは、顧客は単に魚釣りをするために「ため池」に侵入しているため、「正当な理由」はありません。したがって、③にもあたります。

④について、顧客が「ため池」について立入禁止場所であると分からずに立ち入ったのであれば、犯罪にはなりません。ご質問のケースでは、顧客は貴社から「ため池」を紹介されて釣りをしても良いと思っていたため、「ため池」が立入禁止場所であると分からずに立ち入ったといえるかが問題になります。

この点について、貴社から「ため池」を釣りのスポットとして紹介されていたとしても、「ため池」に立ち入る時点では、「ため池」にフェンスが張り巡らされ、「釣り禁止」の看板が設置されていることに気が付いたはずです。そして、フェンスや「釣り禁止」の看板を見れば、「ため池」が立入禁止場所であると分かるでしょう。そのため、顧客が泥酔している状態など、フェンスや看板があることに気付かずに「ため池」に侵入したような例外的な場合を除けば、顧客は、立入禁止場所であると分かって「ため池」に立ち入ったことになります。したがって、④にもあたるでしょう。

以上より、「ため池」に侵入して釣りを行った顧客には、立入禁止場所等侵入の罪が成立します。

店は罪に問われない可能性が高いが、トラブルを避けるためにも注意を!

では、次に「ため池」で釣りをすることをお勧めした貴社の行為について検討します。

釣りをする目的で侵入することを禁止されている「ため池」で釣りをすることを顧客にお勧めする行為は、立入禁止場所への立入りをそそのかす行為です。法律上、罪を犯すようそそのかす行為も処罰されます。これを「教唆犯(きょうさはん)」といいます(刑法61条1項)。

ご質問のケースでは、「ため池」で釣りをすることをお勧めすると、立入禁止場所等侵入の罪の「教唆犯」になる可能性があります。

では、ご質問のケースで、貴社は「教唆」したといえるでしょうか。

「教唆」とは、そそのかされた人が犯罪を行うと分かってそそのかすことをいいます。ご質問のケースでは、貴社は、顧客に「ため池」を紹介した時点では、「ため池」が今年から釣り禁止になっていたことを知らなかったとのことです。つまり、貴社は、顧客に釣りスポットとして「ため池」を紹介しても、立入禁止場所に入ることになるとは知りませんでした。そのため、貴社は、顧客が立入禁止場所である「ため池」に違法に立ち入ることを分かっていたとはいえません。したがって、貴社は犯罪を「教唆」したとはいえないため、罪を負いません。

以上の通り、貴社には何の罪も成立しませんが、貴社の行為が原因となって顧客の行為に罪が成立してしまった場合、貴社と顧客との間で何らかのトラブルが発生することが予想されます。

貴社と顧客との間のトラブルを避けるためにも、今後は、釣りスポットを紹介する場合、紹介する釣りスポットの情報がいつの時点の情報であるかを明らかにしたうえで、現時点で釣りを行うことが禁止されている場合もあり、その場合には釣りを行わないように注意喚起しておくことが重要です。

【回答者:弁護士法人咲くやこの花法律事務所 弁護士・木曽綾汰】

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