「九州リポート福岡発!」は、全九州釣ライター協会の会長・小野山康彦氏の連載です。公益財団法人日本釣振興会九州地区支部の活動ほか、九州の様々な情報を紹介します。
全日本サーフキャスティング連盟(岩田政文連盟会長)は事故防止部(北野信明部長=小倉メゴチサーフ会長)を設けており、海難事故防止指導講習会等の実施によって釣り場での水難事故や釣行時の交通事故等の防止対策や安全思想の高揚をはかっています。
今回は同連盟北九州協会(中島康彦協会長)が毎年春に行っている(コロナ禍による一時期は除く)事故防止講習会をご紹介します。
今年3月12日、北九州市小倉北区の「長浜末広公民館」で実施され13人が参加しました。講師は同協会事故防止部長の中村誠志さん(福岡サーフ)が務め、テーマは「2011年から2019年の間に連盟事故防止部に事故報告のあった12件の事例から学ぶ」です。
中村さんは定年退職するまで企業の環境安全部に所属しており、「事故の発生は不安全な状態(物的要因)と不安全な行動(人的要因)がそれぞれの原因となるが、複合したケースで発生する場合が多い」とし、具体的な事例に基づいてケーススタディを行いました。その中から2例をご紹介します。
初めてのポイントは明るいうちに下見を!疲れと睡眠不足にも要注意
【事例1】
場所:灯台堤防
時間:午前3時ごろ
天候:晴れ
ライフジャケット、ライト装着
灯台堤防(幅約5m)から車に荷物を取りに戻る時、取付堤防(幅約3m)が狭くなっていることを忘れ、ライトを照らしていたが前方をよく見ずに進んで波消ブロックに転落。自力で這い上がり病院で応急処置をするが、左足腓骨(ひこつ)骨折、重度の捻挫で約1カ月の加療。
この事例の物的要因は、暗いことと堤防の幅に差があったこと。人的要因は荷物を取りに戻るときに安全に対する集中力が薄れたこと。また、単独での釣行で堤防の端を歩き、更に疲れと睡眠不足があったと分析。
安全対策として不案内な場所の単独行動は避け、明るいうちに下見をすること。堤防の中央付近を通ることで踏み外しやよろけた場合の事故を防ぐことができる等の説明がありました。
慣れた場所でも注意が必要。ライトの明るさは十分ですか?
【事例2】
場所:河川敷
時間:午後7時半頃
天候:晴れ
ライト装着
堤防道路から河川敷に降りる際、階段のつもりで踏み出したところ斜面であったため、勢いがついて下まで走ってしまい転倒。自力で救急病院へ向かったが、肩関節脱臼で入院・手術を受けた。
物的要因は斜面が急で暗かったこと。人的要因は慣れた場所で注意が散漫となり、思い込みによる間違いが大きいと分析。
安全対策として、移動中は複数の照明またはより明るい照明を使って足元を照らすほか、年齢に応じた体力の衰え、俊敏性の低下があることを認識すること。慣れた場所ほど慎重になって滑り落ちや転ぶかもしれないと危険予知をすること等の説明がありました。
中村さんは病気による事故が3例あるとして、「体調の急変による事故については、脳卒中の約9割の人に何らかの前兆があるようです。体調がすぐれないときは釣りに行かない決断をし、また途中で不調を感じたら躊躇せずに行動を中断することが大切です」と締めくくりました。
単独行動は避け、自分だけでなく同行者の体調の変化などにも気を配ることが安全・安心に釣りを楽しむ一歩だと、再認識させられる有意義な講習会でした。
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