「魚は色を識別できる?」キンギョを用いた実験結果を紹介!魚の驚くべき能力とは!?

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魚の目の感度は「明暗>色彩」。その差はヒトの5倍!?

では陸上に居る私たちと水の中で暮らすお魚さんでは、同じレベルで色彩の判別をしているのでしょうか。

眼の中にある視細胞と呼ばれる組織は2種類あります。

1つは今お話ししている色彩を判別するための「錐体(すいたい)」と呼ばれる細胞と、もう1つは色彩を持たずに物体の存在を明暗によって識別する「桿体(かんたい)」と呼ばれる細胞があり、それぞれは異なる役割を担っています。

陸上における明暗による物体の見え方
陸上における明暗による物体の見え方。明るいところでは錐体細胞が主に働き、暗いところでは桿体細胞が主に働く

その中の色彩を判別する錐体細胞は日中、明るい時に用いられます。物体の色彩を判別することにより、特に食べ物の味や有用性を判断することが可能となります。

例えば果実を食べようとしたとき、それが熟していて食べごろなのか、そうでないのかといったことを判別するために色彩の情報は大変重要になります。小動物の中には体色が極端に目立つ色彩、いわゆる警戒色にすることにより捕食者が警戒心を抱くようにさせて身を守る種類がいることは、皆さまもよく知っているところでしょう。

一方、物体の明暗を識別する桿体細胞は、見通しが悪くなる夜間において自分に接近してくる外敵をいち早く発見することに役立ちます。

外敵の急襲を判断する上で重要なことは、相手の形や大きさ、接近してくる速度、そして自分との距離といった情報で、緊急事態であることを察知するのが最大の目的となるため、その場合明瞭な色彩についての情報はあまり必要とはしません。

ヒトの場合、桿体細胞の感度は錐体細胞の感度を1とした場合、その20倍の感度があると言われています。これが水中で暮らすお魚さんの場合、錐体細胞の感度を1とした場合の桿体細胞の感度は100ほどになると言われています。

ヒトと魚類の視細胞の感度
ヒトと魚類の視細胞の感度。色彩を判別する錐体細胞の感度を1とすると、ヒトの桿体細胞の感度は20、魚類では100となる

アオリイカの明暗の感度は魚より高い!しかし、色盲とも言われており…

話は少し横道にそれてしまいますが、日中は錐体細胞を主体として周囲の物体を見ていますから、それらの情報は色鮮やかな映像として脳に伝わっています。

これが夜間になるとモノクロの映像として脳に伝わります。急激に明るいところから暗い所へと移動すると、しばらくは周囲のものが良く見えない状態となり、しばらく時間が経過すると、慣れてきて周囲の様子が見えてきます。

イメージとしては日中の移動中の車がトンネルに入った直後は周囲が良く見えない状態になることがあります。

また、就寝前に部屋の照明を落とすと、やはり最初は周囲のものが良く見えなくなりますが、しばらくすると眼が慣れてきて周囲の状況を把握することが出来るようになります。

しかしこのとき、眼に映し出される物体の色彩を判別することは出来ません。桿体細胞を使って物を見ているのが、まさにこの状態なのです。

話を戻しましょう。

前にもお伝えしましたように、お魚さんが暮らしている水中は陸の上よりも光が少なく暗い世界です。

お魚さんは、色彩を判別する錐体細胞よりも、周囲や物体の明暗を識別する桿体の細胞の感度が、人の5倍にも及んでいる背景にはこうしたことがあると考えられます。

魚における明暗下での色彩判別のイメージ
魚における明暗下での色彩判別のイメージ。色の識別が出来ることが解明されているが、水中は陸上よりも暗いこと、桿体細胞の感度が高いことなどを考慮すると、実際は図の下側に近い状況であると推測される

さらに、アオリイカについては明暗を識別する感度は遥かに鋭敏であることが知られていますが、実は色盲であることもわかっています。

アオリイカにおける明暗下での色彩判別イメージ
アオリイカにおける明暗下での色彩判別イメージ。アオリイカは色盲と言われているため疑似エサも全てがモノクロの世界となっている

では、これらのことと店頭に数多く陳列されている、目を奪わんばかりの鮮やかなルアー(疑似エサ)やエギの色彩と、実際の釣果にはどのような関係があるのでしょうか?

次回はこれについて解説したいと思います。

(了)

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