※釣具新聞で連載している岸裕之氏の「内水面釣り場の未来」。内水面でも良い釣り場を増やしたいという想いで執筆されている人気連載です。今回は、最近注目されている新しいスタイルのルアーフィッシングをお届けします。
コロナ禍の釣りは「軽(ライト)」がキーワード
今回は初心者に人気のテンカラ釣り教室を紹介する予定だったが、新型コロナウイルス感染症の影響で残念ながら2年連続の中止になった。釣りのイベントは軒並み延期や中止になっている。
だが、釣りの活性化を目的としたイベントがなくなっても、都市近郊の手軽に出かけられる釣り場は人出が増加傾向にある。
これは登山も同じで、遠くて高い山よりも近場の低い山へ出かける軽登山が人気だ。手軽なオートキャンプ場も賑わいを見せている。
コロナ禍のアウトドアレジャーは「軽(ライト)」がキーワードと言えるだろう。
なぜ、疫病の流行で釣り人が増加するのか。
当初は意外に思われたが、コロナ禍の移動制限は時間の有効利用に結び付き、さらに余暇時間の増加にも繋がった。
野外で感染リスクが低いことも追い風となって、「釣りをしてみたいが、忙しくて時間が取れなかった」という「潜在的な釣りファン」を呼び起こす結果となった。
アフターコロナの釣り人の行動パターンはどうなるのか?
コロナ禍で非効率な時間の使い方が見直され、暫く経済が停滞するようであれば、「軽」ブームは継続するのではないだろうか。
少し話が遠回しになったが、今回のテーマ「ライト・リバーゲーム」は内水面の身近な釣り場で、手軽に始められるルアーフィッシング。記者と交流のあるベテランアングラーたちもこのゲームフィッシングを楽しむ人が増えてきた。
今回は関西の大手釣り具流通会社に勤め、手軽な釣りの普及に努めてきた仲谷聡さんの釣行に同行し、この釣りの魅力をお聞きした。
多彩な天然魚に身近なフィールド、この天然資源を利用しない手はない!
「ライト・リバーゲーム」は極小サイズのルアーを使用したルアーフィッシング。
その対象魚はオイカワ・カワムツ・ヌマムツ・タカハヤ・アブラハヤ・ウグイなどで、ケタバス、タモロコなどもルアーにバイトしてくる。さすがにタナゴ類をルアーで釣り上げるのは難しいが、淡水小物釣りのルアー版といえるだろう。
フィールドは河川の中下流部から上流域までと広域だ。
カワムツやタカハヤは渓流釣りの外道としてはお馴染みで、やや水流のある里川や、中下流域にはオイカワが生息している。
あまり水深がない里川では橋の上や少し高い場所から川を覗けば魚がいる、いないがすぐに分かる。
今回の取材は奈良県宇陀市を流れる宇陀川とその支流で、仲谷さんにとっては初めての釣り場。
駐車場所や河原へ下りやすい場所を探さなければならないが、魚は簡単に見つけることができ、すぐに良型のカワムツがスプーンにバイトしてきた。
仲谷さんは「川を探索してポイントを自分で見つけるのも、この釣りのおもしろさ」という。
また、川遊び(ガサガサ)情報などをネット検索するのもポイント探しの近道。ガサガサをする場所は水深も浅くて足場もよく、子どもや川歩きに慣れていない人は参考になるそうだ。
釣り場探しで気を付けたいことは漁業権の確認だ。河川によってはオイカワ・ウグイなどが漁業権対象魚種に認定されているケースもあるので、漁協があれば問い合わせるといいだろう。
貯水池や溜め池は釣り禁止以前に立入禁止になっているケースが多いだけに、里川の釣りは身近にフィールドがあるのも大きな魅力だ。
しかもそこに生息している魚はほとんどが自然繁殖している野生魚たち。かつて釣具業界から「儲からない魚」と揶揄された雑魚たちだが、本気で狙えば素晴らしいルアーフィッシングのターゲットとなる。
話は少し逸れるが、この連載企画の第12回、「『天然もん』が内水面漁協を救う!~淀川水系・都会の川の自然再生(2)~」で京都大学防災研究所の竹門康弘准教授を取材した際、「在来魚の釣りはまだまだ発展の余地がるので、もっと多様な釣りの楽しみ方を提案してほしい」と釣具業界に提言をいただいた。
高価なタックルや高度なテクニックを駆使しても初心者には1尾を手にするのも難しいブラックバス。
ショップ店員などで初心者へアドバイスする機会が多い人には、ルアーフィッシングの基本的な楽しみ方を提案するうえで、ぜひ「ライト・リバーゲーム」も選択肢の1つに加えてほしい。
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