これまで、理想的な釣りについて様々な方向から考え、提案なども含めてお話ししました。復習も兼ねて内容が少しダブるかもしれませんが、引き続きよろしくお願いいたします。
釣りという手段は非常に曖昧です。魚を糸とハリを使って捕獲する行為を指しますが、私たちがいうところの釣りは、引縄とか、延縄など職漁師の捕獲方法でなく、竿やリール、あるいは竿のみで魚を釣ります。しかし、それとて対象魚や方法が限りなく多過ぎます。
以前、スポーツフィッシングと呼ばれる釣りは、ルアーやフライなど擬似餌でカッコよくダイナミックに魚を釣ることに対してそう呼ばれましたが、その後スポーツフィッシングは遊漁と職漁とを大別するために使われるようになりました。
どう違うのか、売るためなのか個人的なものなのかということですが、最近では遊漁で釣った魚を買い取る業者もいるそうですし、釣った魚を知り合いの食堂に売る人もいるそうなのでこれもまた曖昧です。我が国では魚を売買する場合、漁業組合がありますが、組合員になっていても直販する漁師もいるのでますますややこしいです。
私たちが普段している釣りでは高級魚に人気が集まることもありますが、それも釣り人の嗜好によって異なり、高級魚であってもリリース派の人もいます。「食べるために釣る」人と資源保全の最小協力として逃したいという人の考え方はずっと平行線です。個人的あるいは社会的な部分も含め、その価値、満足感、評価は多様です。
釣り方を問わず、釣ったという満足感を得るために、ヒットしたら最後まで1人で戦うという方がほとんどですが、手伝ってもらって釣ってもその人が釣ったことになるのでしょうか?
例えば父親が娘を釣りに連れて行き、魚がヒットしたらロッドを手渡しファイトさせ、ロッドがのされるのは父親が保持し、リールを巻くのを手伝って、釣り上げたものを「娘が釣った」と自慢できるのでしょうか?
もちろん天才釣り少女みたいな子はいて、全部自分でやって素晴らしい釣果を出しているのも事実です。
SNSの普及で変化する釣りの価値観
最近は釣りガールがSNSを華やかにしてくれていて私は嬉しいのですが、疑問を持つ人も多いらしいです。特に超大物を釣ったというSNSです。
先日、私が見た動画では、電動リールを装着したロッドを竿掛けに固定し、ヒットしたらリールのスイッチを入れ、魚が大きすぎるのでスタッフが手で糸を引いてその分を電動で巻き取る。本人に負荷は全くかかっていません。最後はやはりスタッフがリーダーを引いて船長がギャフを掛けていました。手伝わないといつまで経っても上がってこないという事態も引き起こします。大物は時間をかけてあげると言うのが常ですが、他のお客さんへの配慮も考えての対策なのでしょうか?
先日はマグロキャスティングをしている男性が不満を言っていました。女性がルアーで巨大なマグロを釣ったという投稿を見て「絶対信じられない。周りの男が手伝っているはずだ」と。
「手伝ったっていいじゃない、記録狙いしているのではないんだから」と説得しましたが、自分はガチでやっているから同じような価値観ではないと。どう思われますか?
現実はそう甘くないことはやっている方なら誰でも分かるはずですが、真剣に取り組んでいる人からすればそう感じるのかもしれませんね。
ちなみに、釣りのギネスとも言われる世界記録を認定するIGFA(国際ゲームフィッシュ協会)では、置き竿であったとしてもヒットしたら直ちにロッドをホルダーから抜いて1人でファイトしなければなりません。その間、他人は一切ファイトしている人の釣具に触れてはいけないというルールがあります。
我が家では以前、妻とGTを釣りに行って世界記録間違いなしの魚が掛かり、1人でファイトした結果逃げられました(笑)。
そういえば、昔は巨大魚の磯釣りなどで肩入れというロッドを支えてアシストする釣り方がありました。魚拓には釣り人と手伝った人の名前が書いてあったのも覚えています。正直ですね。
これからはマスコミだけでなくSNSも大きな影響があります。曖昧であることを言うなら、かの文豪開高健(故人)が「釣り人はみんな大ボラ吹きだ。釣りの話をする時は両手を後ろに縛ってしなさい」と言っていた頃はまだ可愛かったのですが、ビジネスが絡んでくるとそうも言っていられません。
日本には延べ竿の釣り文化があるのでIGFAルール(リールとロッドを使う釣り)こそ最高だとは言いませんが、それにしても釣りガールとSNSのおかげで釣りそのものの価値観が変わってきているような気がしないでもありません。
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