天然魚を増やして河川環境をより豊かに。「京の川の恵みを活かす会」鴨川に新デザインの魚道を設置

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京の川の恵みを活かす会の仮設魚道設置の集合写真
略称「#(ハッシュタグ)魚道」という魚道が四条落差工に設置された。下流側の魚が入ってくる箇所が多い事や、上流側の出口も多く、遡上してきた魚が鳥等に狙われにくくなるなどメリットも多い

5月21日、京の川の恵みを活かす会(以下、活かす会)は京都市を流れる鴨川の四条大橋下の四条落差工に、新しいデザイン木製魚道の設置を行った。協賛・協力は京都洛東ロータリークラブ。

「日本一目立つ場所にある魚道」。 鴨川の河川環境に関心を持ってもらうキッカケに

活かす会が鴨川で活動を始めたのは2011年。そこから毎年、落差がありアユ等の遡上の妨げになっている場所に仮設魚道の設置等を行ってきた。

魚道を設置している落差工(らくさこう)とは、川底の高さや河床勾配(かしょうこうばい)を安定させるため、川を横断して設置された構造物で落差のあるものを指す。

京の川の恵みを活かす会の仮設魚道設置の様子
四条落差工。魚がこの落差より上流へ遡上しにくくなっている。設置作業は設置箇所の上流側を止水する事から始まる

河川を横断して落差が設けられているため、アユなど遡上を行う魚は、高さのある落差工がある場合、その落差工より上流へは遡上出来なくなってしまう。

こういった問題を解決するために、活かす会では鴨川の下流側から1つずつ、アユ等の遡上を妨げている落差工に魚道を設置して問題解決にあたってきた。天然魚を増やし、鴨川の河川環境を良くするためだ。

今年は鴨川の三条落差工、丸太町落差工、四条落差工、荒神口落差工に魚道の設置を行っている。

四条落差工は京都市の中心街にあり、四条大橋から南側を見下ろした場所にある。

観光客はもちろん鴨川沿いを散策する人も多く、日本一目立つ場所にある魚道といっても過言ではない。

魚道の設置は、設置作業自体も多くの人の目に触れるほか、河川を利用する多くの人に鴨川の環境に関心を持ってもらうキッカケにもなっている。

京の川の恵みを活かす会の仮設魚道設置の様子
設置場所は観光地の中心。テレビ等でもよく映る場所だ

1940年代に姿を変えた鴨川。アユの遡上範囲も大きく変わる

設置作業は午前9時半頃より開始された。

最初に活かす会代表の竹門康弘氏より下記要旨の挨拶が行われた。

京の川の恵みを活かす会代表の竹門康弘氏
活かす会代表の竹門康弘氏

「活かす会が鴨川で魚道設置を行ってきた背景を簡単に説明しますと、当時、鴨川や淀川の水質が次第に改善され、大阪湾の環境も良くなり、海と川を行き来する魚の生活も出来るようになってきた事があります。天然のアユも鴨川にのぼってくるようになりました。遡上する数はその年によって大きく違うのですが、遡上してきたアユが落差の下にいてジャンプするのですが上流へは行けないという姿が見られるようになっていました。

こういった状況を見て、賀茂川漁業協同組合や京都市の中筋祐司さんが、何とかアユが本来の生活が再び出来るようにしたいと活動が始まりました。そして活かす会は京都府、京都市、流域の漁協、学識経験者、NPO法人、大学等の研究者、市民などが協力し、連携しながら活動を行ってきました。

鴨川の歴史を紹介しますと、鴨川のアユは少なくとも鞍馬川、静原川、雲ケ畑、高野川では八瀬から大原あたり(いずれも鴨川の上流)は、江戸時代まではアユの生活圏でした。しかし1935年に鴨川の大出水があったため、長期間にわたる大規模工事を行い、堀込河道とし、増水しても町に水が溢れない川にしました。

そして、河岸が崩れないように護岸と落差工で水の勢いを弱めて町を守るという工事が1940年代に行われました。その結果、鴨川には50カ所以上の落差が出来ました。その中で魚の遡上を阻害しているものを、下流から手を付けてきたという次第です。

今年、四条落差工に設置する魚道は京都洛東ロータリークラブ様にメンバーと予算を拠出して頂き、共同で設置させて頂く事ができ、大変うれしく思っています。単独の団体ではなく、複数の団体で活動が出来る事は、鴨川の環境を良くしていく上で大きな力となります。今回は記念すべき魚道設置事業ですので、お礼を申し上げると共に、今後も力を合わせて下さい」。

「木組み井桁格子型斜め据付け階段式魚道(きぐみいげたこうしがたななめすえつけかいだんしきぎょどう」、略して「#(ハッシュタグ)魚道」

次に活かす会副代表の中筋祐司氏より魚道の説明と当日の設置手順について説明が行われた。

魚道を設計した中筋氏
魚道を設計した中筋氏。模型を使いながら説明した

「今回、新たな魚道を考案しました。京都には木の文化がありますが、これまでも活かす会の魚道は木で作る事にこだわっています。

木製魚道の良さは2つあります。1つは毎年鴨川のアユを迎えるために皆で一緒に作業が出来る事です。そして、仮設魚道ですから時期が来ると撤収しますが、毎年改良して修正していける事が大きなメリットです。

新型魚道の名称は、『木組み井桁格子型(いげたこうしがた)斜め据付け階段式魚道』、略して『井桁格子(いげたこうしぎょどう)』、更に略して『#魚道(はっしゅたぐぎょどう)』です。名前の通り井桁(井の字の形)になっています。

京の川の恵みを活かす魚道設置風景
「#魚道」設置の様子。名前の通り井の字を組み合わせたデザインとなっている

魚道の設計ポイントの1つは手作りが出来る事です。部材も重くないので、皆で組み立てることができます。

もう1つはいかに増水に耐えられるかです。そして何よりも実際にアユなどの魚が魚道を使ってくれるかです。こういった事を考えて設計しております。

鴨川の天然アユを復活させよう、河川を良くしていこうという活動をみんなで行うところに意味があると思います。本日はよろしくお願いします」。

観光客も見守る中、参加者で協力して魚道設置作業

説明が終わると、設置作業に入った。

まず、落差工の上流の止水作業から行われた。活かす会や京都洛東ロータリークラブが協力して土嚢や止水板を使って水流を弱めた。

京の川の恵みを活かす会の仮設魚道設置の様子
設置前に、上流側を土嚢や止水板を使って水流を弱める

その後、落差工下流側に木材がバケツリレーで運搬され、組み上げの作業が行われた。最後に底板を入れて石を「おもし」として投入し、上流側の止水板などを取り外して完成となる。

京の川の恵みを活かす会の仮設魚道設置の様子
活かす会や京都洛東ロータリークラブ等が協力してバケツリレーで資材を運んだ
京の川の恵みを活かす会の仮設魚道設置の様子
魚道の設置作業の様子。木材を使用しているので現場で若干の手直しも出来る
京の川の恵みを活かす魚道設置風景
協力しながら木材をくみ上げていく

作業は多くの観光者や川床で食事をしている人、また川岸の遊歩道の利用者から見守られながら行われ、昼過ぎに完了した。

ハッシュタグ魚道のプレート
魚道に貼り付けられているプレート
京の川の恵みを活かす魚道設置風景
通水作業の様子。上流側の土嚢等を取り除き、水を魚道に流す。緊張の一瞬でもある

通水(水を上流から魚道にながす)前に記念撮影を行い、通水して魚道が機能している事が確認され、解散となった。

通水した#魚道
通水した「#魚道」。これで下流からきたアユ等の魚もこの魚道を使って上流に移動できる。京都の鴨川を散策する機会があればぜひ見て欲しい。タイミングが合えばアユの遡上も見ることが出来るかもしれない

関連記事 → 【京の川の恵みを活かす会】京都・鴨川に仮設魚道設置。天然魚増やし川の魅力高める | 釣具新聞 | 釣具業界の業界紙 | 公式ニュースサイト (tsurigu-np.jp)

関連記事 → 伝統的河川工法で河川環境改善。流域の市民も参加し木津川に「中聖牛(ちゅうせいぎゅう)」を設置 | 釣具新聞 | 釣具業界の業界紙 | 公式ニュースサイト (tsurigu-np.jp)

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