バレた魚は、どれくらいで釣れるようになる?キャッチ&リリースもその後の釣果に影響?ある実験を例に解説

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釣りエサのスペシャリスト・長岡寛さんの連載「お魚さんッ、私のエサに食いついて!」です。釣りエサに関する事以外にも魚の生態や環境など様々な内容を紹介します。

今回は、3回に分けて解説している「お魚さんをバラすとどうなるのか?」の後編です。

前編はコチラ → 魚は痛みを感じるの?バラすと釣れにくくなるのはどうして?魚の学習能力について解説

中編はコチラ → 先頭の魚をバラすと群れの他の魚も釣れなくなる?釣り人なら知っておきたい!魚の群れの習性について解説

「お魚さんッ、私のエサに食いついて!」のタイトルカット
  

私は釣り餌メーカーに入社して間もなく、釣りが上達したいという思いで、伊豆七島の神津島にある釣り宿の経営者が会長をしていた磯釣りクラブに入会し、その後ほぼ毎月通うことになりました。

釣りに対しては大変厳しく指導されましたが、そのお陰で磯釣りのイロハを身に付けることが出来た(と自負しています)ばかりか、後の新製品開発において計り知れないほど多くの恩恵を受けることになりました。しかしその当時は知る由もありませんでした。

その方こそ、離島のメジナ釣り第一人者の清水令司氏(故人)です。今でも私の心の中での師匠です。

故清水令司氏と入社して間もないころの筆者
故清水令司氏と入社して間もないころの筆者(写真右)。1990年頃の釣り餌の開発現場にて

話を戻して、あるとき神津島の磯で一緒に竿を出していた時の会話で、私は清水氏に「掛けたお魚さんをバラすとその後釣れなくなってしまうのか」という質問をしたことがあります。

すると、清水氏はすかさず「それはお魚さんを拘束した時間に比例する。拘束時間が長いほど再び釣れるようになるまで時間がかかる」という返答でした。

バレたお魚さん。回復までどれくらい待てばよい?

その後、釣りの腕が未熟な私は数限りなくバラシを経験しましたが、その度にその言葉が頭の中をよぎります。そして回を重ねるうちにそれが正しいと思えるようになりました。

さらにそれから歳月が流れ、そのことが実験的に証明されていることを知りました。

釣りをする筆者
バレた魚は、どれくらいで釣れるようになるのだろうか…?

その実験には飼育されているコイが使われ、水切りの出来るアクリル製の容器を用いてコイを空気中に晒すというものです。空中に晒す時間の長さは1分、5分、10分と変えて、再びアクリルケースを水に戻しその前後におけるコイの心拍数の変化を測定したのです。

コイが緊張している場合は心拍数が高く、緊張していない状態であれば心拍数は低いということを前提として、その結果は図のようになりました(図においては1分と10分のみを記載)。

コイに与えたストレスと回復までの時間の関係
コイに与えたストレスと回復までの時間の関係(出典:「魚はなぜ群れでおよぐか」有元貴文著・大修館書店 一部改変)

実験で分かったことは、空気中に晒す時間が長くなるほど、コイの心拍数が元の状態になるには時間がかかり、10分間空気中に晒した場合、元の心拍数に戻るには60分以上の時間を要したことが判明しています(参考文献:「魚はなぜ群れで泳ぐか」有元貴文著・大修館書店)

これは長時間駆け引きをした後のバラシであるほど、再び餌を食べるまでに回復する時間が長くなることを示唆しているものであり、今は亡き師匠の清水令司氏が言われていたことが正しかったことになります。

苦痛の度合いが大きいほど回復までにかかる時間が長くなるというのは、私たちと共通している部分でもあると感心してしまいます。

ヒトにおいてもストレスが大きいほど回復までに時間がかかるイメージ
ヒトにおいてもストレスが大きいほど回復までに時間がかかる

キャッチ&リリースも影響する?

ところで、キャッチ&リリースは、釣り場のお魚さんを守る上で釣り人として必要なことです。私自身も、一部自宅で食べる以外のお魚さんをリリースするように心がけています。

しかし、釣れたお魚さんをリリースするとその後どうなるでしょう。お魚さんにとってはバラしによって元の場所に戻ることも、リリースされて元に戻ることも程度の違いがあったとしてもストレスを感じることに他なりません。

大きいお魚さんほど、釣り上げてから写真を撮ったり、サイズを測るなど拘束する時間も長くなることが多いでしょう。

そうしたことから、迂闊にリリースしてしまうとその後のアタリが続かなくなる可能性があります。

事実として、堤防で釣り上げた大型のクロダイをすぐにリリースしたところ、その後の釣果が続かなくなったということを幾度となく経験しています。特に、初心者を連れて行って、最初に釣れた大型のお魚さんをリリースしてしまうと、その後パートナーも自分もお魚さんが釣れなくなってしまうことがあります。

初心者のイメージ
初心者と釣りに行き、初めに釣れた大型魚をリリースすると、自分も同行者も釣れなくなる事が多い

これを防ぐにはいくつか方法があると考えていますが、その1つにバーブレスフックを用いることが有効と思われます。言うまでも無く、お魚さんに与えるダメージが少なければ、回復も早くなりますから好釣果に結びつきます。

一方、釣り物によってはライブウェルとエアーポンプ、又は大きめのスカリを準備しています。一時的であるにしても、釣り上げたお魚さんをキープするのであれば、ダメージを受けて弱っていないか頻繁に確認を行うことも忘れてはいけません。

釣り人にとってバラしは決して望んでいないものですが、バラしがあることにより釣りの面白さも増していると誰もが感じていることでしょう。私自身、これからもお魚さんへのダメージを軽減させる努力を続けたいと思います。

【まとめ】お魚さんをバラすとどうなるのか?

以下、お魚さんをバラすとその後どうなってしまうのかを簡単にまとめてみました。

バラした後釣れなくなるパターン
・針掛かりしている時間が長くなった時や拘束時間が長くなった時
・バラしたお魚さんの口に釣り針や仕掛けが付いたままの状態の時
・針を外す、リリースするまでにてこずってしまった時
・食ってきたお魚さんが大型(であろう)の時
・お魚さんのコンディションが悪い時(水温の低下、潮が動かないなど)
・あまり回遊しない種類のお魚さんや、縄張り意識の強いお魚さん
・群れの密度が低かったり、個体数が少ない時

バラしてもすぐに釣れるパターン
・掛かってすぐにバレてしまった時
・勝手に針が外れるなどお魚さんへのダメージが少ない時
・手際よく短時間でリリースした時
・お魚さんのサイズが小さい時
・釣り場のコンディションが良い時
・回遊性の強いお魚さんや、表層にいるお魚さん
・群れの密度が高い時や、個体数が多い時

◆長岡寛さんの連載「お魚さんッ、私のエサに食いついて!」の連載記事一覧はコチラ

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