そもそも、形状記憶合金とはどういった物か?
そもそも、同商品にも使われている形状記憶合金とはどういったものなのか。
世の中のほとんどの形状記憶合金はニッケルとチタンの合金だ。この合金に形状記憶熱処理を施し、形状を記憶させる。すると変形させても、温めると覚えた形状に戻るという「形状記憶特性」を持つ。また、元の形状に戻る温度を調整する事により常温で曲げてもしなやかに変形し、力を抜くと元の状態に戻る「超弾性」という特性にすることもできる。
例えばバネの形にした形状記憶合金を思いっきり引き延ばして手を離した場合、鉄やステンレスのように引っ張れば引っ張るほど強く戻るのではなく、一定の力で元の形状に戻っていく。こういったしなやかな特性を持つ。釣具に使用されている形状記憶合金はこの「超弾性」という特性を生かしている。
独自の加工技術が必要
形状記憶合金について坂社長に伺った。
「形状記憶合金は強度も高く錆びないなど利点も多いのですが、とても扱うのが難しい金属間化合物(2種類の金属からなる化合物)です。また、割合が1%異なっても全く別の合金になるなど、材料を作るのに特殊な技術が必要です。
形状記憶合金の鋳造品を作るには一度溶かす必要があるのですが、一般的な方法で作成したチタンニッケル合金の場合、冷えて固まる間にチタンとニッケルは分離していき、上のほうと下のほうで割合が変わってしまい、形状記憶合金になりません。当社では溶かしてもチタンとニッケルが分離しない鋳造材の製造技術に関して特許を取っています。
釣具に関しては主に大同特殊鋼製の線材を使用しているのですが、これにも独特な加工技術が必要です。今後も技術・ノウハウを駆使して、色々な商品を作っていきたいと考えています。
形状記憶合金はメリットも多いのですが、お話させて頂いた通り、原材料を作る事、さらに加工が難しい事もありコストが掛かります。
もし、大きなオモリやメタルジグを形状記憶合金で作ると、市場価格で恐らく10万円は超えると思います。消耗品には向かない材料だと思っています。
ですから、例えば医療機器の部品や航空機の部品など、多少コストが掛かっても『どうしてもこの材料が良い』という物に使用される事が多くなっています」
形状記憶合金を使った独自性のある釣具を開発したい
坂社長に今後の抱負を伺った。
「私もプラスチックの会社から形状記憶合金の会社に移り、ゼロから勉強して、会社の皆さんにも教えてもらいながら今までやってきました。もちろん今でも勉強中です。今後については、形状記憶合金を使った独自性のある釣具を開発していきたいと思います。差別化を行い価格競争にならず、誇りをもって販売していける商品を作っていければと思っています」
釣具でも、形状記憶合金は様々な用途で活躍が期待されている。同社の今後が注目される。
吉見製作所ホームページ https://www.yoshimi-inc.co.jp/
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