【奧山文弥・理想的な釣り環境】環境について、真面目に考えてみる

スペシャル ニュース
自ら潜って調査に参加するマルキユー研究室
環境問題への取り組みは時に自衛になる。自ら潜って調査に参加するマルキユー研究室長・藤原亮さん(三宅島・阿古港にて)

いつまでもいい釣りを続けるためには、魚が繁殖していけるいい環境がないといけませんね。

陸上から見ただけで分からないものもあります。淡水ならば清流でなくて濁っていたとしても、その水が魚たちにとって栄養たっぷりで餌量と魚のバランスが保たれているならいい環境なのです。

また周辺のゴミなど人為的な圧力で釣り場の環境がよくなくなってしまうケースもあり、よく立ち入りする釣り人が目の敵にされることもよくあります。

しかしながらバーベキュー客、工事現場の労働者、違法な廃棄なども水辺を汚す原因です。行政が本格的に浄化に乗り出し、マナーやルールの徹底で改善されているところもありますが、未だ無法地帯のようなところもあることは事実です。

釣り人が目の敵にされる要因は水中にもあります。根がかりした仕掛けなどが海底を醜くして魚が寄り付かないとか、撒きエサ(コマセ)が堆積してヘドロ化し、海を汚すという中傷を受けたりします。

そこで今回は私が関わっている環境調査・研究についてお話ししたいと思います。

世界に名だたる釣りエサのトップメーカー、マルキユー株式会社(埼玉県桶川市本社・岡田信義社長)が撒き餌を売る側の社会的な責任として始めました。東京海洋大学と産学連携した共同研究「本当に撒き餌が海を汚すのか」という研究です。

潜って確認、撒き餌は海を汚さない

三宅島の雄岳が2000年9月に噴火し、島民が避難して立ち入り禁止になっていました。その後4年8カ月ぶりの2005年4月に帰島許可が出ました。

一般客の入島許可は5月からでしたので、私たちはその前の4月下旬に最初の調査を行いました。

その後、釣りが再開されたら釣り人の撒きエサやゴミが海底にどのように影響するのか継続して調査することで、いつまでも新鮮な情報を提供できます。

現地では水を採取して分析するだけでなく、スクーバ潜水で実際に海に潜り、この目で確かめるということもやっています。有名な磯周りだけでなく、地味に港周辺も潜りました。

カワハギの水中での写真
エサを置くと最初にやってくるのはいつもカワハギ(三宅島・伊ヶ谷港)

2020年はコロナ禍のために行けませんでしたが、2019年までの調査では釣り人の影響がなんらかの形で出るであろうという予想に反して、全く変化はありませんでした。また釣り人の影響と思われるようなエサの堆積はありませんでした。

一方、海流が島周辺を流れる三宅島とは対照的な調査地点を必要としたため、伊豆半島の赤沢を選びました。

こちらの堤防ではほぼ日常的に撒き餌が入っている状態です。こちらでも変化はなく、撒き餌は海を汚さないことが分かりました。

調査中には様々な実験、観察もしました。潜水中に堤防からエサを撒いてもらってそれが沈下していく様子。ほとんどの餌が海底に届く前に魚に食べられました。

沈下途中で食べられないためにダンゴ状にして持ち込んだりしました。ダイバーが一旦魚を追い払ってから設置するのでいきなりワッと寄ってきて食べませんが、やや離れて見ていると、カワハギやキュウセンなどがつばみはじめ、小魚が集まり、その後でメジナなどがきたり、ウツボは団子を丸呑みにしました。

定点調査で団子を置いてきましたが、翌朝潜るとヤドカリが残渣を食べていました。

ダンゴがばらけた固形以外の成分は最終的に彼らや微生物が分解していることが分かりました。

私たちはこの調査で多くを学びました。そして自信がつきました。自然はそんなにやわではないということ。そしてネガティブな意見に反論できるようにもなりました。

オキアミを海底に置いて撮影し、あたかも撒いた餌が堆積しているかのように報じた記事はヤラセであるとすぐに分かりました。

今では釣りエサが海底を汚すという攻撃もほとんどなくなりました。私たちのデータは引用され、各地の県の漁業調整規則における撒きエサ禁止が次々に解除になりました。後は東京都と茨城県を残すのみです。

自社の社会的な責任としての活動が当初の目的よりも遥かにいい結果をもたらしました。釣り業界の方々は生産、販売する上で、環境とどう対峙していくのか、独自に活動してみたらいいと思います。

魚を放流することや、釣り場の清掃を行うことだけが環境活動ではないはずです。

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