アユ釣りファンから支持される理由・3
「アユルアーは友釣りと考えるべき」
廣瀬漁協はアユルアーの使用を認めている数少ない人気釣り場の一つだ。佐野組合長はルアーの釣りもアユのナワバリ意識を利用した釣りなので友釣りだと考えている。
今年(2020年)はコロナ禍で実施されなかったが、ここ数年はアユルアーの講習会を毎シーズン行ってきた。広い意味でアユ釣りファンを増やす活動の一環であり、ジワジワとアユルアーを楽しむ人が増えてきたという。
ルアーよりも活きたオトリの方がよく釣れるので、ルアーから友釣りに入ってくる人も期待できるため禁止にする必要はなく、遊漁券の売り上げに貢献している。
どうなる?滋賀県河川漁業の今後
文頭で「滋賀県は内水面の釣り王国」と書いたが、こと「内水面漁場管理」に関しては苦境に立たされている漁協も少なくはない。
佐野組合長は滋賀県河川漁業協同組合連合会の代表理事を務め、滋賀県全体の河川漁業振興に取り組む立場である。廣瀬漁協ではリーダーシップを発揮し、業務全般を西森氏がとりまとめてうまく漁協運営ができている。
しかし、滋賀県全体で見れば石田川や野洲川のように漁協組織を解散して管理者不在の河川もあれば、漁協が経営不振を理由に河川漁連を退会するなど、県下の漁協が一枚岩になって河川漁業を盛り上げる状況ではないという。
さらにコロナ禍で今年は河川漁連傘下の大戸川漁協、土山漁協、高時川漁協、杉野川漁協、丹生川漁協の5漁協が休業中である。
管理者不在の河川でアユをエサ釣りで狙う人が増え、釣りの活性化に繋がっている一面はある。だが、漁業調整規則に定められた採捕禁止期間でなければ投網も打て、いつ河川環境が荒廃するか分からない。規則を破る者がいても監視員がいなければさらに深刻な問題だ。
これは滋賀県に限ったことではないが、漁協によって漁場管理に打ち込む姿勢にかなりの温度差がある。そのことが内水面漁業協同組合連合会のまとまりを阻害しているのだという。
純粋な漁業収入だけでは採算が取れずに喘いでいる漁協が増える一方で、廣瀬漁協のように組合長が先頭に立って釣り人から見て魅力的な河川管理に取り組む漁協も存在する。もうすでに内水面漁協運営の二極化は進んでいる。
今回の取材で感じたことは、廣瀬漁協のように漁協と釣り人の距離が近く、プロ意識を持ってしっかりとした漁場管理に取り組めば釣り人も付いてくるということ。釣り場が荒廃する前に、各漁協は釣り人の出番を増やしてほしいものだ。
名人級のアユ釣り師が漁場管理・安曇川廣瀬漁協
安曇川廣瀬漁業協同組合の佐野昇組合長(左)と、同理事の西森政秋氏(右)。安曇川廣瀬漁協の漁場管理はこの2人を中心に行われている。
ともにアユ釣りは名人級の腕前で、これほどまで釣り人との距離が近い漁協は珍しい。佐野組合長は昭和30年生まれの65歳。幼少のころから安曇川を見て育ち、その経験値の高さから漁業関係者や釣り人からだけでなく、アユや河川環境の研究者からも慕われている。
西森氏は昭和32年生まれの63歳。漁場管理だけでなく、釣り人へのアドバイスとして安曇川の情報を配信している。
名称 | 安曇川 廣瀬漁業協同組合 |
所在地 | 滋賀県高島市安曇川町長尾671 |
TEL | 0740-33-1288 |
ホームページ | HRC廣瀬鮎塾 https://ameblo.jp/ayutarou-916/ |
(第7回・了)
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