釣りエサのスペシャリスト・長岡寛さんの連載「お魚さんッ、私のエサに食いついて!」です。釣りエサに関する事以外にも魚の生態や環境など様々な内容を紹介します。
今回は、マダイの釣果アップのヒントについて解説して頂きました。
この章では、高度なテクニックはベテラン諸兄に、また美味しい調理方法については多くの愛好家の皆様に委ねつつ、図鑑からでは知り得ない、お魚さんの生態を基に私見を交えた釣果アップのヒントをお話しします。
前回のお話し → 【アジを釣りたい人必読】マアジの釣果アップのヒント。図鑑からは知り得ない!? 魚の生態を基に解説
そこで、今回は多くの日本国民に愛され、めでたいお魚さんとして、また釣り物としても大人気のマダイについて、お話しさせていただきたいと思います。
釣りをしていて外道が釣れてしまうと、なんとなくガッカリしてしまう私ですが、船釣りでも磯釣りでもマダイが釣れると、その時は違うお魚さんを狙っていたとしても、とても幸せな気持ちになります。恐らく多くの釣り師の方々も同じような気持ちになるのではないでしょうか。
マダイは言うまでも無く、味よし、姿よし、そして釣り味もよし…と3拍子揃っています。多くの釣り物が茶系、黒系、銀系の色合いである中、マダイは美しいピンク色をしていて、釣りたての天然物は眼の上の、ヒトで言うと眉毛の部分が青色に輝いて、まるで宝石のようです(図1)。
マダイ釣りの最盛期は晩秋から冬と初夏から夏にかけてですが、ほぼ周年狙うことが出来て、釣り場も全国の至る所、大型のサイズは船の沖釣りが主流になりますが小型であれば内湾でも良く釣れます。
マダイの好む場所はやや水深のある岩礁地帯となり、前回お話ししたマアジと同様、明るい場所を好まないため日中はタナが深くなる傾向がありますが、潮が濁っている時や雨天曇天の日は日中の磯や岸壁からでも良く釣れます。
「海老で鯛を釣る」という諺がありますが、マダイは動物性であれば食性は幅広く、ここで挙げたエビはもちろん、オキアミ、イソメ類、カニ、イカ、魚の切り身など色々な種類の餌で釣れます。そして餌釣りだけでなく、メタルジグ、プラスティック製のルアーやワーム、タイラバなど疑似餌でも良く釣れるお魚さんです。
マダイの視覚・歯について考察。食性の幅広さも特徴!
では、マダイの視覚から考察してみましょう。
マダイは視覚も色彩の判別が良好なため、動きの激しい疑似餌にも食いついてきます。普段はエビやカニなどの甲殻類、のり、小魚も捕食していて、この食性が幅広い餌に食ってくる要因となっています。マダイは暗闇になる夜間でも餌を食べていて、夜間に行う延縄漁でも重要な対象魚となっています。
次に、マダイの歯を観察すると、前方の上下に合計8本の犬歯があり、これで殻の硬い甲殻類を捕え、その奥にある臼歯で噛み砕いてしまいます。この犬歯を見ると、海底の岩などにしがみついている甲殻類を容易に捕食出来ることが一目瞭然です(図2)。
捉えた獲物は口腔内で噛み砕いて嚥下しますが、このとき海水から餌を濾し取る鰓耙(さいは)はコブのような構造をしていて、かなりサイズの大きい餌でも丸呑み出来ることが分かります。マダイが自分の口よりも大きいサイズのメタルジグに果敢にアタックしてくる理由は、この強靭な歯と堅牢な作りをした鰓耙があってのことでしょう(図3)。
マダイの嗅覚、聴覚は?器官の特徴から考察
さて、マダイは夜間でも餌を食ってくるとお話ししましたが、視力が良いとはいえ、やはり暗闇の中で餌を発見するには嗅覚が重要です。
マダイの嗅板を観察すると、とても複雑な構造をしているため表面積が大きいことが分かります(図4)。
マダイはアラニン、グリシン、プロリン、セリンなど多種にわたるアミノ酸に誘引されることが知られていて、その種類の多さはクロダイに匹敵します。これは視覚があまり効かない夜間は、嗅覚を駆使して餌を発見することが可能ということを裏付けています。
そして、マダイの聴覚の能力を推し量る上で耳石の形状が参考になりますが、何とマダイの耳石は魚体に対して大きくて幅も広い構造になっています(図5)。
これは疑似餌で釣る時、ロッドアクションやルアーの形状によって海水との接触により生じる音に対しても、とても敏感であることが伺えます。
釣り師を魅了するマダイ。時には臆病な一面も…
ほか、餌の好みが広いマダイは餌でも疑似餌でも釣れるお魚さんなのですが、とても臆病な一面もあります。
ダイバーが接近してくると、一番距離を置いて遠巻きにすると言われています。また、コマセの入ったプラスティックやステンレスのカゴを警戒し、すぐそばまで接近してくることはあまり無いようです。そのため、カゴを用いた釣りの仕掛けでは、他のお魚さんよりも随分ハリスを長くすることがあります。
幅広い食性と繊細さを併せ持つマダイは、食味や姿だけでなく、釣り上げる上で神経質な面を持つお魚さんです。それこそが、釣り師を魅了し続ける大きな要因なのかもしれませんね。
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