魚類減少の一因になっているなど、内水面漁協関係者の頭を悩ませている水鳥・カワウの食害問題。埼玉県漁業協同組合連合会(加須市北小浜、松本泉会長)=以下、県漁連=はこのほど、同県水産研究所=以下、県水研=の技師等を講師に「カワウ置き針捕獲実務者研修会」を飯能市内で開催した。
置き針を使ってカワウの捕獲作業に従事している捕獲実務者の漁協組合員が参加、熱心に耳を傾けた。
深刻なカワウの被害。アユやニジマスが食害に…
カワウは全長約80cmの水鳥。集団でねぐら、コロニーを形成。行動範囲は広く、1日で60㎞程度移動する。集団で河川へ飛来し、1羽で1日あたり約500gの魚を捕食するといわれ、内水面では主にアユやニジマス、ウグイなどがその食害に遭っている。
カワウ置き針捕獲実務者研修会は、シーズンにはおとり鮎の販売所となる飯能市南町の福島釣り掘跡と、すぐ南側を流れる入間川を会場に実施。県漁連が入間漁協管内で同研修会を開くのは6年ぶりとなった。
カワウの捕獲は雌雄の分別、成長段階、何を捕食しているかなど学術的調査のため行われており、捕獲実務者については県知事の許可が必要。現在、県漁連を構成する単位漁協合わせて約60人が捕獲実務者として任命されている。
研修会当日は会場スペースの都合もあり、ともに荒川水系を所管する入間漁協と秩父漁協の捕獲実務者(組合員)、県漁連、県水研の合計14名が出席した。
研修会は座学と、カワウ捕獲のための置き針仕掛けの作り方、カワウの餌となるニジマスへの針の取り付け方などの実習の2部構成で進行。
第1部の座学では、県水研の鈴木裕貴技師がカワウの生態、環境への影響、県内のカワウ対策などについて概略説明。
第2部では座学会場前の入間川に移動し、実際に生きたニジマスを使い、仕掛けをセットする方法などについて、入間・秩父漁協でそれぞれカワウ捕獲の主軸となっている組合員が捕獲実務者に解説した。
改良重ねた仕掛けで実績。継続したカワウ対策が必要
秩父漁協では当初、河川に仕掛けた置き針について、カワウが餌を咥えるもののなかなか針掛かりしない(飲み込まない、放してしまう)といった問題が発生。
原因を追究したところ、針の付いた餌を咥えてカワウが水面へ浮上する際に仕掛けの糸に「張り(テンション)」が生じ、カワウが違和感を覚えて餌を離してしまうことが判明。
そこで、仕掛けに水深程度の糸を付け加え、さらにその糸を重石に巻き付け、カワウが飛び上がろうとして糸を引っ張ると重石が川底を転がるように工夫したことで、張りが解消されたことなどが報告された。
さらに、糸が重石からすっぽ抜けてしまうことを防ぐための重石へ刻み加工を施すといった改良を行った結果、カワウの捕獲、回収率が向上したという。
カワウ捕獲用の置き針仕掛けは、魚を捕食するカワウの行動を利用したもの。ニジマスなどの生き餌に針の付いた仕掛けをセットし、他の水鳥が掛からないよう水深0.5m以上の流れに重石とともに沈め、一定時間放置。その後、現場を巡回し、針掛かりしていたら回収するという方法で実施されている。
研修会を受講した捕獲実務者の1人は「置き針仕掛けの糸の太さや長さ、針の大きさなど、入間と秩父漁協で異なっていた。それでもそれぞれが実績を上げていることが発見だった。従来の仕掛けを使うのもよいが、捕獲率を高めるために改良を重ねることは大切」と感想を話した。
講師となった県水研は「県内ではカワウが減少傾向」としながらも、「県生息状況調査における地点以外に存在するねぐら・コロニーや、他県からの飛来などの懸念があるため、今後も継続した対策が必要」としている。
【小島満也】