「東大卒」はウソ!?学歴詐称の新入社員は解雇出来る?【弁護士に聞く】

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解雇出来る可能性は高い【弁護士の回答】

新卒を採用するかどうか判断するに際して、採用候補者の学歴は重要な考慮要素といえます。では、新入社員が重要な考慮要素である学歴を詐称していることが判明した場合、当該新入社員を解雇することは問題ないのでしょうか。

結論から申し上げますと、解雇は無効となるリスクはあるものの、有効と認められる余地は十分あります。

解雇は、客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当なものである場合に限って認められます(労働契約法16条)。そして、経歴詐称を理由として解雇する場合、従業員が「重要な経歴」を詐称し、会社が本当の経歴を知っていれば採用しなかったであろう場合には、解雇は社会通念上相当なものであるとして有効と認めている裁判例が多くあります。

では、本件でA君は「重要な経歴」を詐称したといえるのでしょうか。

この点について、裁判例によると、経歴の中でも、最終学歴は労働者の資質、能力を判断するための重要な要素であり、「重要な経歴」に当たるとされています(名古屋高等裁判所昭和55年12月4日判決)。

本件では、A君は新卒で採用されているところ、最終学歴である大学の経歴について偽っていますので、「重要な経歴」を詐称したといえます。

そして、一般的に日本で一番レベルが高いとされ、優秀な人材を多数輩出している東京大学の卒業という経歴は、新卒の採用をするにあたって魅力的な経歴です。そのため、採用にあたって東京大学卒業という経歴を重視して採用したものと考えられ、実際には東京大学を卒業していないという事実を知っていたら採用しなかっただろうと認められやすいものと思われます。

企業が東京大学卒を重視して採用していた場合、解雇が認められる可能性が高い

さらに、東京大学卒業という経歴を重視して、幹部候補としての採用を決定したのであれば、A君が志望動機をしっかり記載している点や、面接での人柄が良かった点、適切な話の受け答えができる点、熱心に仕事に取り組んでいる点などを踏まえても、企業と従業員の間の信頼関係を破壊するものといえ、解雇が認められる可能性は高くなるでしょう。

【参考情報】
経歴詐称を理由に懲戒解雇できる?注意点や対応方法を裁判例付きで解説

解雇した場合、損害賠償請求は認められるのか?

次に、A君を解雇した場合、A君に対して投じた経費について損害賠償請求することはできるでしょうか。

A君を解雇することで、投じた経費が無駄になってしまうため、何とか経費相当額を請求したいと考えるのも当然です。しかし、残念ながら、このような請求は認められないでしょう。

損害賠償請求することができる「損害」とは、相手の不当な行為がなかったら払っていなかったであろう費用のことをいいます。

つまり、相手の不当な行為があってもなくても払っていたはずの費用については損害とは認められません。

本件では、経費として外部企業での研修費やA君に貸与するために購入した備品類などの費用がありますが、これらの費用は、誰を採用しても必要となる経費です。つまり、A君の経歴詐称がなく、A君ではない他の人を採用していたとしても支払っていたはずの費用であるといえるのです。

したがって、これらの経費は、損害とは認められず、損害賠償請求は認められないでしょう。

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