「釣具業界の法律相談所」は、釣具業界でも起こる可能性のあるトラブルについて、弁護士の先生に聞いて見解や対処方法を紹介するコーナーです。
今回は、学歴詐称で入社した社員を解雇出来るのか?について弁護士の先生に聞きました。
「東大卒」の新入社員を幹部候補として採用したが…
弊社は関東にある釣具メーカーです。昨年、入社した新入社員の学歴が虚偽である事が発覚し、対応を検討する事態となりました。
当社では毎年、新卒を含めて5名前後の採用を行っています。当社へ入社を希望される方は多く、入社出来るのは応募者の内の数パーセントという倍率になっています。
当社の選考方法は、一次は書類選考です。その後、二次、三次と面接等を経て採用となります。
昨年、採用したA君は当社に送ってきた履歴書に「東京大学卒業」と書かれてありました。東大卒で当社に応募をしてくる人は珍しいのですが、志望動機などもしっかりしており、一次審査は当然クリアしました。
そして、二次面接、三次面接で実際に会ってみると、人柄も良さそうで、話の受け答えも適切であり、幹部候補として採用を決定しました。
A君が入社してきて実際に働きだすと、良く働いてくれますし、勤務態度も問題ありません。際立って優秀という事はないのですが、将来的に頼もしい戦力になると期待していました。
しかし、A君が入社して1年が経とうとする頃、A君と同期の社員から「東大に行っていた友人や知人にA君の事を聞いても誰もA君を知らなかった。A君は本当に東大に行っていたのか怪しいと思います」と内部通報がありました。
私もA君と会話をしている際に何度か違和感を覚えた事もあったため、念のためにA君を呼び出し確認してみると、A君から「すいませんでした。実は東大卒はウソです。実際には東京にある某大学を卒業しました。この会社に入るのが有利になると思い、ウソの経歴を書いてしまいました」と経歴詐称を認め、謝ってきました。
当社でも、こういったケースは初めてで、対応を悩んでいます。経歴の詐称は確かに許される事ではありません。ただ、A君の勤務態度には問題はなく、熱心に仕事に取り組んでいます。解雇も考えていますが、当社も人手を失う事や、教育してきた時間などが無駄になるためダメージがあります。
そこで弁護士の先生に質問です。
まず、学歴を詐称してきた新入社員を解雇する事は法律的に問題ないのでしょうか?
また、解雇の場合、これまでにA君に投じてきた経費(外部企業での研修費やA君に貸与するために購入した備品類などの費用)を請求する事も出来るのでしょうか。
一方でA君に継続して働いてもらう場合、周りで働いている社員の目もありますので、数年間にわたり基本給の減額を考えています。就業規則にこういった具体的な項目はないのですが、どの程度のペナルティを課す事なら法律的に問題がないのでしょうか。
例えば「今後5年間は基本給から5万円減額する。5年間はベースアップ等も一切行わない」といった事を決めても、A君が承諾すれば法律的に問題ないのでしょうか。
ご回答、よろしくお願いい致します。
※質問は全て架空の質問です。実際の企業等とは一切関係がありません