ライフタイムスポーツ文化の進化と発展を目指して。グローブライドの取り組み

スペシャル ニュース
釣具業界 環境への取り組み特集

世界的なフィッシングブランド「DAIWA」を事業展開するグローブライド株式会社(本社/東京都東久留米市、代表取締役社長執行役員/鈴木一成)の環境への取り組みを紹介する。グローブライドでは脱炭素経営の推進など、サステナビリティへの取り組みを推し進めている。その中で釣具メーカーとして特色のある活動に以前から積極的に取り組んできた。子供たちに自然の豊かさや生命の大切さを伝える「ダイワヤングフィッシングクラブ(以下、D.Y.F.C)」や、2022年のトピックスとしてメディアでも話題となった廃棄漁網をアパレルへと再生するアップサイクルプロジェクト、さらには森林の里親や子供のライフジャケット着用推進などがその具体例だ。グローブライドが環境への取り組みをどういった想いで推し進めているのか、大竹有司取締役常務執行役員に話を伺った。

グローブライド本社
東京都東久留米市にあるグローブライド本社。フィッシングをはじめ、豊かな自然があって成り立つ事業を行っており、環境への取り組みにも想いが込められている

サステナビリティを意識し、全社的に取り組む

グローブライドでは以前から様々な環境保全や社会貢献活動に取り組んできたが、その活動を大きく前進させている。サステナビリティが一層重要視される将来を見据え、2022年4月にサステナビリティ推進室を新設。全社的な取り組みとする姿勢を強化した。またSDGsへの貢献を目指し、今までの事業の棚卸や整理分類も行った。新たな気付きも多かったという。

こういった中、会社として2022年10月にコーポレートスローガン「Feel the earth.」についても、「地球を感じ、生きていく。」へと日本語のコミュニケーションワードをアップデート。より地球や自然と共生していく姿勢を端的に伝わりやすい表現としている。

グローブライドのホームページ
グローブライドHPのファーストビュー

また「ライフタイムスポーツ(人生を豊かにするスポーツ)文化の進化と発展」というサステナビリティビジョン(目指す姿)を策定した。あわせて、そのビジョンを追い求めていくために優先して取り組むべき5つの課題が挙げられている。

その1つが「フィッシング・スポーツ文化の牽引」だ。そして「脱炭素経営の推進」、「生物多様性保全の推進」、「資源循環の推進」、「働きがいのある職場環境・人材活躍の推進」。この優先して取り組むべき課題の策定について大竹常務は次のように語る。

フィッシング・スポーツ文化の牽引はステークホルダーからも期待されている活動

グローブライドの大竹常務
大竹有司取締役常務執行役員。新設されたサステナビリティ推進室長を務める

サステナビリティに関する重要課題を決定するにあたり、内部分析と外部分析の双方を行いました。そしてSDGsの視点から自社のサステナビリティに関する課題やあるべき姿を洗い出し、重要課題として8項目を設定しました。その中から、さらに優先課題を特定すべく、ステークホルダーにとっての重要度と自社の事業にとっての重要度の2軸でマッピングを行いました。

グローブライドのマテリアリティマップ
マッピングの図。「マテリアリティ」とは重要課題の事。ステークホルダーとはお客様・株主様など、企業にとってのあらゆる利害関係者を指す。表の右上に行くほど、ステークホルダーにとってもグローブライドにとっても重要な課題という意味だ

さらに目指す姿である『ライフタイムスポーツの文化の進化と発展』に向けて、8項目の中から優先して取り組む5項目を決定し、そのうちの『フィッシング・スポーツ文化の牽引』を最重要課題としました。

フィッシング文化の牽引、つまり健全な釣りの普及、釣り振興、また釣り場環境の保全等は、当社のステークホルダーにとっても重要度が高く、当社に期待されている事で、これは調査によっても明らかでした。そして当社にとっても当然ながら重要な事です。

世界的な企業でも大きく掲げているカーボンニュートラルを目指す脱炭素経営の推進等にも、もちろん優先課題として取り組んでいきますが、『フィッシング・スポーツ文化の牽引』を全社的に最優先事項として取り組んでいるのが当社の特徴と考えております。

グローブライドの想いが込められたD.Y.F.C フィッシング・スポーツ文化の牽引の中核となる活動

DYFC
グローブライドが1976年から行っているダイワヤングフィッシングクラブ。設立当初から釣りをするだけでなく、自然の豊かさや生き物のいのちの大切さを学ぶ取り組みが行われてきた

「フィッシング・スポーツ文化の牽引」の具体的な活動として、グローブライドが永く大切にしてきているのがD.Y.F.C(ダイワヤングフィッシングクラブ)だ。

D.Y.F.Cは「地球を感じ、いのちと出会い、のびのび育つ。」が活動のスローガンであり、子供たちに自然の豊かさ、生命の大切さを伝える活動だ。釣りのスクールだけでなく、ジオキャンプなど釣り場を離れて自然や生態系について学んでもらう機会もある。この活動は、健全な釣り振興、釣りの普及だけでなく、将来にわたって釣りを取り巻く環境を真摯に捉える人材を育むことにも繋がっている。

D.Y.F.Cは1976年に始まり、既に長い歴史から多くの事を積み上げてきた。D.Y.F.Cを通じた自然体験によって、自然に対する意識が変わり、大人になって様々な分野で活躍している卒業生も多い。D.Y.F.Cについて、大竹常務は次のように語る。

見えていないものが、見えるようになる

D.Y.F.Cの活動は、当初から地球を感じながら、子供達にはのびのびと育って欲しいという思いで行われており、当社の考え方や気持ちが強く込められた活動です。

その活動の根底には、実際に自然に触れなければ、リアルに感じる事が出来ないものがあると分かって頂きたい、という我々の思いがあります。例えば海洋プラスチックゴミの問題でも、釣りやサーフィンなど自然と直接触れ合っていれば、より自分事として感じる事があるはずです。しかし、漫然と海に漂うゴミを見ていても、リアルな問題として捉えにくいのではないでしょうか。

近年はSDGsで環境問題への意識が特に高まっていますが、様々な環境問題を自分事として捉えるためには、自然を通してリアルな体験をする事がきわめて有効だと思います。実際にフィールドに出て、自然や生き物と触れ合う事で、今まで見えなかったものが、見えるようになるのです。だからこそ、D.Y.F.Cではリアルなスクールの開催に注力してきたのです。

パートナーと協力しながら目標を達成していく

SDGsには「パートナーシップで目標を達成しよう」という項目もある。D.Y.F.Cでも第三者との協業はとても重要だ。地方自治体や釣り施設など多くのパートナーの協力があって、はじめて様々なスクールを開講する事が出来ている。
 
例えば、グローブライド本社の近郊にある多摩六都科学館(東京都西東京市)に協力して自然観察会も継続して行っている。「自然体験から知的好奇心を刺激し、人間形成を育む」という脳科学者の考えを実践するように自然と触れ合い、生き物の生態を伝えており、子供達とも大いに盛り上がれるコンテンツへと発展している。

他にも、長野県須坂市でのジオキャンプでは昆虫採集や林業体験を行うなど、D.Y.F.Cを看板とした幅広い活動を試みている。

グローブライドと多摩六都科学館のイベントの様子
地元の川の魚や自然をテーマに、D.Y.F.Cが唱える「自らが考え、工夫し、行動する」といった感動体験を目指すオンライン学習が行われた

また、グローブライドでは近隣の東京都清瀬市内の小学校への支援として、校外授業にも参画している。この授業では清瀬市を流れる柳瀬川での自然体験学習を行っている。安全に観察が出来るよう、川に入る際のD.Y.F.Cライフジャケットの活用や、スタッフとして社員も派遣している。

DYFC
清瀬市立清明小学校が行っている校外授業に参画。一旦川に入れば大人も子供も顔つきが変わる

最初は川に入る事に抵抗のあった子供達も、一度川に入ると表情が変わるという。自然の中で生きた魚や川虫などを捕まえて観察する事で、環境の変化について今まで以上に自分事として捉えるようになる。

D.Y.F.Cの活動は、国内に留まらずオーストラリアでもスタートしており、グローバルに活動の輪が広がっている。グローブライドでは「フィッシング・スポーツ文化の牽引」の主力事業として、今後もD.Y.F.Cを続けていく。

廃棄漁網からウェアを作る、漁網アップサイクルプロジェクト

グローブライドの漁網アップサイクルプロジェクト
単にリサイクル素材を使った製品を作るという話ではなく、原材料の手配から消費者の手に渡るまで全てが見える取り組みだ

次に、グローブライドの特色ある活動として廃棄漁網から素材再生してウェアを作る事業を紹介する。「BE EARTH-FRIENDLY-漁網アップサイクルプロジェクト-」という活動で、使われなくなった漁網をアパレルアイテムとして再生する事により、新たな価値を生み出し、資源循環を目指す取り組みだ。

グローブライドでは、毎年国内外のスポーツ見本市やファッションショーに出展しているが、2022年の東京コレクションでは廃棄漁網再生素材のアパレルをテーマとして発表し、予想以上の反響を得たそうだ。

グローブライドの漁網アップサイクルプロジェクトのアパレル
廃棄漁網を元に作って再生されたレインウェア。当面は廃棄漁網の提供者である北海道の漁業関係者のお手元にお届けする計画となっている

このグローブライドが試みているのはトレーサビリティ(商品の生産から消費までの過程を追跡すること)にこだわった廃棄漁網再生の取り組みだ。

漁網やロープは海洋ゴミ(プラスチック類)の中でも大きな割合を占めている。環境省の調査では漂着ゴミ(プラスチック類)で漁網、ロープは重量で約42%と1位、容積でも2位と上位を占めている。 

この廃棄漁網のリサイクルは世界各地で行われており、漁網を使ったリサイクル生地も流通している。グローブライドが発表したこのプロジェクトは、どこの廃棄漁網を使い、どのように商品を作り、誰にその商品を使ってもらうか、という全ての循環が見える取り組みだ。

具体的には北海道の漁業関係者からパートナー企業が廃棄漁網を回収し、協力工場で廃棄漁網を洗浄し、不純物等を取り除き、細かく裁断してチップにし、細い糸に加工する。その糸を織って生地を作り、漁業関係者のレインウェアとして蘇らせた。ここで作られたレインウェアは北海道の漁業関係者の方に販売して着用してもらえるような取り組みを作っている。

まさに、原材料の仕入れから最終消費まで全ての循環が見える取り組みだ。

グローブライドの漁網アップサイクルプロジェクト
回収された廃棄漁網がウェアとして生まれ変わる

この漁網のリサイクル商品は、現在は漁業関係者向けとなっているが、将来的には釣り人にも購入してもらえる体制を整えていく考えだ。

活動の意味や企業姿勢を理解して頂き、協力者を増やしていく

この取り組みついて、大竹常務は次のように語る。

今回は漁業の現場で悩んでいらっしゃる事を、漁協の方々に還元する形でご提案させて頂きました。ウェアを作る工場も、この事業の意味に賛同して頂き、パートナーとして一緒に取り組んで頂けています。

直近では東京藝術大学や文化学園の方々も、この意味に賛同して頂き、イベントやデザインなどにも参画して頂きました。環境配慮型商品は、商品を使って頂くという事も当然ですが、その意味や姿勢に共感して頂くという側面もあります。活動の背景や当社の考え方を理解して頂き、今後も活動の輪を拡げていきたいと思っています。

グローブライドの漁網アップサイクルプロジェクト
国際的にも問題となっている廃棄漁網。グローブライドならではの取り組みが行われている

ウェアからウェアを作る。全国の釣具店様に回収ボックスを設置

グローブライドでは、全国の釣具店様にご協力いただき、ウェアの回収ボックスを設置してもらっている。現在、全国で500店舗以上に設置されており、不要なウェアの回収作業が行われている。ここで回収されたウェアから、再びウェアが作り出される。

グローブライドの設置している回収箱
回収ボックス。釣具店で目にした人も多いはずだ

豊かな森林づくりに協力。グローブライド・水と緑と太陽の森林(もり)

グローブライドが行っている特色のある活動として、長野県で行っている森林(もり)の里親制度への賛同がある。

2005年から、長野県須坂市仁礼区の森づくりに協力しており、入社時の社員研修の場として利用したり、社員がボランティアで森林の下草刈り等に積極参加したりしている。グローブライドに入社する段階から、社員全員に「地球を感じ、生きていく。」といった考え方と姿勢を理解してもらうためだ。このような活動が礎となって環境に対する意識づけにも役立っている。

グローブライドの森林
自ら森林に入り自然と接する事でグローブライドの考えも一層理解できるようになる

グローブライドの特色のある環境への取り組みを紹介してきたが、地球温暖化対策として最重要課題に挙げられている脱炭素社会の実現に向けての取り組みにも、当然力を入れている。

グローブライドでは2050年カーボンニュートラルの実現に向けて取り組みを開始している。カーボンニュートラルとは、周知の通り温室効果ガス(GHG)の排出を全体としてゼロにする取り組みだ。これに向けて、2030年までに国内・海外グループ会社を含めたGHG排出量を2021年度比で40%削減する事を目標としている。

みんなで喜び合える活動に

最後に大竹常務に環境への取り組みの想いを伺った。

グローブライドの大竹常務
環境への活動は協調し合って取り組んでいきたいと語る大竹常務

当社も様々なサステナビリティへの取り組みを行っていますが、当社の事業自体が豊かな自然環境が無ければ成り立ちません。そのため、当社の社員も環境問題等について、自分事として考えられる素地があると思います。ゴミ拾いの活動の1つをとっても、考えさせられる事は多いのです。

また環境の話は業界内で競争する話ではなく、協調し合って取り組んでいく課題だと思います。業界を発展させる、業界を守っていく、業界一同が共に喜び合える、そんなテーマだと思っています。

(了)

釣具業界各企業等が行っている環境への取り組みを紹介 → 「環境への取り組み特集」

関連記事 → 【グローブライド】身近な自然を体験!オンライン自然観察会を開催 | 釣具新聞 | 釣具業界の業界紙 | 公式ニュースサイト (tsurigu-np.jp)

関連記事 → 【DAIWA PIER39】ダイワピア39・釣り具メーカーの殻を破るアパレル | 釣具新聞 | 釣具業界の業界紙 | 公式ニュースサイト (tsurigu-np.jp)

関連記事 や 「D-VEC TOKYO EXCLUSIVE」、表参道に釣りとファッションを融合させた店舗 | 釣具新聞 | 釣具業界の業界紙 | 公式ニュースサイト (tsurigu-np.jp)

関連記事

【SLASH】ロッドソックスSL-252、SL-253登場。ロッドの持ち運びが楽で安全!

第10期「隼華(HAYAKA)」メンバー大募集!ハヤブサ製品を使って、釣りの楽しさを広めよう!

【釣具業界初!】完全無人店舗「いつでも餌蔵」開発の経緯。流通業界からも大注目の釣具店

【シマノ】「ミッドゲーム CI4+」多彩なシーンに対応するオールラウンダー竿

集え、熱き黒鯛師!「黒鯛工房CUP」年間スケジュール公開中。大会に出場して、ぜひ腕試しを!

魚が多く、釣り人少ないのに釣れない…。いったいなぜ?人気釣り場には魚がが集まる!?釣り人の行動で変わる魚の食性

【第15回】「ライト・リバーゲーム」のススメ。フィールドが広がるお手軽ルアーフィッシング

ポイントに応じて3段階の長さ調整が可能。金属トップ採用で感度と操作性に優れる「がま渓流 マルチフレックス 春彩2」