若者取り込み、ルアー釣りの環境も整えていく【埼玉秩父・松本組合長に聞く】
今大会を漁協トップとしてけん引する松本泉氏に、大会の趣旨、今後の展望などを聞いた。
──70人近い釣り人が自然河川へ一堂に会すルアー釣り大会としては、県下最大規模。大会の目的をお聞かせ下さい
「ルアーの愛好者は若い方が多いです。そういった若い層を取り込んでいきたいというのが基本にあります。秩父漁協は、ルアーフィッシングに対して、遅れ気味という現実があります。渓流のエサ釣りをやる方は結構多く、フライ関係では専用の管理釣り場を直営しており、下流の皆野の方には冬季のマス釣り場も開設しています。そのような中で、やはり若年層を呼び込むにはどうしたらいいかと考えると、やはりそうした人たちを集客する取り組みをしていかなければいけません。若いルアーマンに来てもらい、秩父の荒川をもっとアピールしたいということで、昨年からルアー釣り大会を始めました」。
──大会運営は?
「これまでの経験が蓄積しています。アユ釣り大会、エサ釣りの大物釣り大会をそれぞれ8回実施しています。スタッフもそのままなので、大会の段取りはそう難しくはありません。アユ、エサ釣り、ルアーフィッシングと釣りのスタイルが違うだけで、やり方としてはほぼ同じなので、特に問題はありませんね。スタッフには本当によくやってもらっています」。
──ルアー釣り大会の釣り場は川幅が広く、水量も豊富。良好な環境を生かした期間限定のニジマス釣り場に設定されていますね
「ここは、去年から荒川本流のニジマス釣り場として開放しています。ニジマス釣りが可能な期間は10月1日から翌年の2月28日までです。釣法としてはエサとルアー限定で、大型ニジマスのみ放流しています。釣り場には尾数制限を設けていて、基本キャッチ&リリースですが、1人3尾まで持ち帰ることができます。それ以上については、リリースです。
今回の大会は、このエリアのほぼ中央を使用して実施しました。大会当日は一般の釣り人について会場内での立ち入りを規制しておりますので、大会参加者は大会の表彰式を終えても、そのまま残って釣りをすることができます。ただ、大会翌日からは一般の釣り人が釣りをします」。
──秩父地方は、埼玉を代表する渓流釣り場の宝庫です
「若いルアー愛好者を取り込みたいとお話ししましたが、ルアー釣りができる環境も整備したいのです。大会のエリアは前述したように本流ニジマス釣り場であり、ルアー、エサ釣りだけの専用釣り場です。ルアーをやるあちこちの人たちにここに足を運んで頂いて、他の釣り場へも目を向け、結果的に秩父地域の良さを認識してもらえればと思うのです。『秩父は、良い渓流釣り場がたくさんあっていいね』なんておっしゃる方もいますが、もっと釣り場環境を整えたいです」。
──組合長として、思い描く秩父の渓流釣り場とは?
「難しいですね。本来は資源が残る釣り場。これが基本ではないでしょうか。組合としてヤマメの発眼卵放流も行うなどして増殖に力を入れていますが、キャッチ&リリースや尾数制限をかけていかないと、資源は減少してしまうのではないでしょうか。
理想はキャッチ&リリースです。私が認識しているのは、フライマンの方はほぼ魚の持ち帰りをしない。ルアーもかなりの確率で、キープする人は少なくなってきました。一方、エサ釣りの人は再放流する人も出てきましたが、持ち帰る人は多い。釣り人もエサ釣りが圧倒的に多い。その多いエサ釣りの釣り人が、持ち帰るということにちょっと問題があるのかなと。
だけど、そうかといって全てをキャッチ&リリースにするのにも問題があります。その辺については、秩父は河川をたくさん持っているので、バランスよく、棲み分けができたらいいなと思っています。今後そうしたことに取り組んでいきたいですね。尾数制限もかけられればいいと思いますが、ただ、これについてはデータに基づかないといけませんので、慎重にやる必要があります」。
ルアー釣り大会の認知度アップ目指す。「シーズン4本立てイベント」も検討
──ルアー釣り大会を今後どう展開していきたいですか
「こういう大会が秩父であるということを、広く認知して頂くための取り組みでしょうか。また、できることなら、大会の参加者に偏りが生じてしまわないよう、場合によっては今後の話ですが、抽選といった形でいろいろな方が参加できるような仕組みも考えたいです。
今回、ネットで先着70人の募集をかけましたが、2週間くらいの間で定員に達しました。それでもどうしても参加したいという人から話が来ましたが、既に締め切っているのでお断りをした経緯があります。そう考えると、応募を受けてその中から抽選で70人に絞り込むという形がとれれば、いろいろな方にご参加頂けます」。
──漁協はルアー釣り、エサ釣り、アユ釣り大会と3つの大きな大会を年間通して運営しています。他の釣魚でのイベントの考えは?
「あくまでも、個人的な考えですが、ワカサギ釣りの大会を開きたいですね。ワカサギ釣りは小さなお子さんのいる親子でも手軽にできる釣り。ルアーの方も若い層ですが、さらに小さい子どもたちも秩父にどんどんやってきてほしいと考えます。子どもたちが訪れることによって、釣りの楽しさを同時に知ってもらえます。その点、ワカサギ釣りは入りやすいのではないでしょうか。食べても美味しいですし。
例えば、親子での参加を基本にして、親子合計の尾数で競う大会、親子大会みたいなもの。参加した子どもが成長して、『昔、秩父でワカサギ釣りの大会があって、ワカサギを釣ったなあ』なんて思い出してくれたら素晴らしい。秩父には4カ所のワカサギ釣り場がありますから」。
──実現すると、釣り人に朗報です
「実は、秩父漁協の年度は10月から始まります。これはルアー釣りの関係なのですが、10月1日から2023年度。そのため、ルアー釣り大会はその年度最初のイベントになります。場合によっては、10月にワカサギのファミリー釣り大会をやって、11月にルアー釣り大会、4月に大物のエサ釣り大会、そして5月にアユ釣り大会と、シーズン4本立てのイベントが可能となります。実施したいですね」。
(了)
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