「その行動は、自分のため?未来のため?」外来魚問題について考える【奧山文弥・理想的な釣り環境】

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結婚と同時に多摩川が流れる東京都羽村市に引っ越し、その時に奥多摩漁協の組合に加入して30年が経ちました。

多摩川の漁協は、丹波川、小菅村、小河内、奥多摩(氷川含む)、秋川、恩方、多摩川、川崎河川と8つもあります。このうち今年は年券を6つも持っていますから、私は相変わらず多摩川ファンと言えるでしょう。

多摩川は不思議な川です。全長138‌㎞という短さで、流域の人口は約400万人。羽村堰で玉川上水に取水されるため、下流に流れる水のほとんどは支流の秋川と浅川、そして人が利用した下水と雨水の処理水です。

世田谷区あたりにおいては90%が処理水ですから、人間が作り替えてしまった川だと言えます。そんな川でとってもバラエティ豊かな釣りが展開できます。

ほぼ日本全国の淡水魚が住み着いている!?天然アユも遡上する多摩川

江戸前アユと呼ばれる多摩川の天然遡上アユ
江戸前アユと呼ばれる多摩川の天然遡上アユ。今年は推定250万尾。台風の影響を受けた昨年の遡上量36万尾から比較すると抜群の回復量

釣りをしない人に多摩川で釣りをしていると伝えると「多摩川に魚がいるんですか?」と驚かれることもあります。1970年代には死の川とも呼ばれ悪臭を放った川は今、天然アユが遡上する川として知られ、今年も約250万尾が遡上しています。

上流は山梨県ですがイワナやヤマメが生息し、奥多摩湖から下流においては漁協の放流魚の末裔、そして観賞魚など飼えなくなった淡水魚の受け入れとして移植が繰り返されたのか、ほぼ日本全国の淡水魚が住み着いています。

珍しい魚ではオヤニラミやジュズカケハゼなどもいるのですが、タナゴ類が少ないのは特徴かもしれません。

また大型魚も多く多摩川からIGFA世界記録が7つも出ています(以前は8つ)。

特にナマズの魚影は素敵です。私にナマズ釣りの魅力を教えてくれた友人が、多摩川はアマゾン川に負けないほど生産力があり、ナマズがたくさんいる多摩川に「タマゾン川」とあだ名をつけました。彼の当時のブログには「今日もタマゾン川へ」と書いていました。

タマゾン川のナマズ
タマゾン川のナマズ。放流魚、繁殖魚が混じって抜群の魚影を誇るが、ナマズとて多摩川においては外来魚

その話を川崎河川漁協の山崎充哲さん(故人)に話したところ、彼も多摩川の魅力を発信していましたからそれはいいねと盛り上がりました。ところが彼がテレビ出演した時に「タマゾン川」の話をしたら、外来魚、熱帯魚が巣食う悪い川のイメージで放送されてしまいました。

私たちからすると川の未来を思って褒めたつもりが、逆になってしまいました。そんな人の噂も75日と言いますが、今ではほとんど聞かれません。

テレビが世間に与える影響は絶大。外来魚についての認識、それで合っている?

それよりもひどいテレビ放送が始まりました。「池の水を抜く」と言うアレです。池の水を抜いてかいぼりするのは、溜池など人工的な池の掃除です。水槽を掃除するのと同じです。作ってほったらかしにしたら汚れるのは当たり前ですよね。

この放送を見ておかしい、変だぞと思った方は少なくないと思います。私もそうです。

特に外来魚との関わりについての説明が間違っていると感じました。「居てはいけない魚がいた」とバスやライギョ、ソウギョを粗雑に扱い、コイまで池を濁らせる外来魚(害魚)として駆除していました。天然水域でコイのせいで濁っている場所はありますか?

コイ
マゴイ(天然在来種)、ヤマトゴイ(移植種)に分けられたコイ。マゴイの住めない環境で繁殖できるコイは生物としては貴重である

また多摩川を例にあげても分かるように、我が国において天然魚の存在の方が珍しい状態になっています。コイ科の魚はほぼ琵琶湖から全国へ広がっています。

とある場所ではお濠にいたナマズを捕まえ、「この魚は在来魚で唯一ブルーギルを食べてくれるいい魚です」と説明された時、呆れました。このナマズも人造池であるお濠に移植されているからです。それよりも在来魚を含む、すべての魚に対する扱い方が酷かったですね。水槽掃除なら魚をとても大事に扱いますよね。

魚に限らず外来生物は我が国にたくさん移入、あるいは侵入しています。水産的に言えば、魚を放流し、増殖することはいいことだと言われていました。

今でも一部そう言う考え方があります。魚類を移植したのは、この魚たちが日本で定着すれば食用としていつでも利用できると考えられていたからです。

そういう歴史的な背景も無視し、視聴率を稼ぐために興味を引くようなことを言って世の中の常識として植えつけていったのです。

とある漁協の人がコイの産卵場作りを教育の現場に持ち込み、生徒参加型でと学校に提案したら、駆除すべき外来魚なのになぜそんなことをするのかと拒否されたそうです。これも番組のせいだと言っていました。

外来魚との向き合い方を考える

宮城アングラーズビレッジで釣れたオオクチバス
私の釣りの歴史の中では、近年近場での野バスは非常に釣りにくくなっている。それに代わって放流されるオオクチバスは釣りやすい。芦ノ湖や河口湖だけでなく、管釣りにも放流バスはたくさんいて釣り人を癒している(写真は宮城アングラーズビレッジ)

外来魚といえば、今、多摩川中流で人気のある魚は外来魚です。

先述の山崎さんが「カワウやこいつらがアユを食べるので困ってるんだよ」と言っていました。だから川崎河川漁協は駆除するのだと。

しかし別の日に「遡上アユが多すぎて、餌がないから個々のアユが大きくなれなくて困ってるんだよ」と言ったので「それならカワウや外来魚に食べられても困らないんじゃない?」って聞いたら返事はありませんでした。

同じく同エリア対岸の東京都側から上流を管轄する多摩川漁協の監視員は、以前は「殺せ」と言っていましたが、今では違います。外来魚釣りの人はみんな遊漁券を買ってくれるから、とかその釣りの人はマナーがいいからねとも。「駆除を手伝ってやってるんだよ」、「漁業権魚種以外を釣ってる」と拒否する人はほとんどいなくなったそうです。

多摩川で釣りをしている様子
多摩川で人気のゲームフィッシュである外来魚。アユもオイカワもウグイもたくさんいる多摩川において、外来魚が生態系を破壊するということはあり得ないと思う。すでに破壊された生態系に今の魚たちが順応しているだけだ(写真は多摩川)

釣り業界が触れなくてもS‌N‌Sではどんどん拡散され、この外来魚の人気は増す一方です。この魚に限らず、未来のために外来魚全てに対する向き合い方を考えた方が良さそうです。

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