セキュリティ対策が最大の課題。無人店舗が拡大しない理由とは?
現在、国内における完全無人店舗は高輪ゲートウェイ駅にある無人決済コンビニや、一部の道の駅しかないと言われる。他には企業内や病院内にあるだけだ。
一般開放された無人店舗で、しかも24時間営業の「いつでも餌蔵」は小売業界でも新たな挑戦と言える。
しかし、一時大きな話題となったアマゾンゴー(アマゾンが運営する完全無人店舗)も、当初話題になっていたほど拡大していない。また、スマートショップの普及も緩やかだ。
その最大の要因はセキュリティの問題だ。つまり、商品の盗難被害を防ぐ有効な施策が確立されていないからだ。
タカミヤでも、当初はシステム開発に力を入れていた地元企業や工業系の大学との連携も模索したが、求められているセキュリティ対策が出来なかった。
それでも探し続けていた時に、NECが開発した顔認証システムと出会う。顔認証という生態認証と、会員情報等を結びつける事でタカミヤが求めるセキュリティ対策が可能となり、無人店舗の実現化に大きく前進したという。
「いつでも餌蔵」をオープンした際には、新しい取り組みだけに、セキュリティ面を含め、様々なトラブルも起こる可能性があると思われていたが、今のところ全くトラブルはないと上田社長は語る。
「昨年秋のオープンから今まで、問い合わせがあったのは1件のみです。1号店のオープンの時は、万一の時に備えてスタッフを常駐させました。しかし、何も起こらなかったので、翌日は常駐せずに緊急用の電話に出られるよう、スタッフに専用の電話を持ってもらいましたが、それも全く鳴りませんでした。
セキュリティ面でも、顔認証という生態認証に加え、ご利用者様の氏名や住所等を把握出来ている事もあるからか、今のところ盗難被害なども全くありません。
無人店舗を始めて驚いたのは、我々が思っている以上に、お客様のITリテラシーが高い事です。
例えば、冷凍エサにJANコードを貼り忘れていた商品がありました。お客様はその商品を持ってレジに行かれました。読み込むJANコードがないので、どうしたかというと、棚ラベルを取りに行かれてJANコードを読み、さらにそのラベルも元の場所に戻しておられました。
有難いと思いましたし、本当に驚きましたが、ITリテラシーの高いお客様は今後も増えていくと思われます」。
「いつでも餌蔵」は実証実験段階。慎重な展開が必要
最後に今後、どのような展開を考えているのか上田社長に伺った。
「当店のような一般開放された完全無人店舗の知見は誰も持っていません。今後、どのような想定外のトラブルが起こるか分かりません。今はまだ胸を張って成功したと言える段階ではなく、あくまで実証実験の段階で慎重に進めていく必要があると考えています。
将来的には『いつでも餌蔵』単独の展開も視野には入れていますが、完全無人店舗といえども、商品のメンテナンスやデリバリー、釣りエサの鮮度管理など、人の力は必ず必要となりますし、そういった仕組みを作るのは簡単ではありません。
さらに、近年は釣りエサ自体の需要の減少傾向も見られます。アミエビ等も常温で保存出来る商品がありますし、ルアー化が進む事で釣行前に釣具店に立ち寄る必要性も、全国的に見れば少なくなっていく事が予想されます。
こういった状況も踏まえながら、いつでも餌蔵を含めて、今後も釣り人のニーズにしっかりお応えしていきます」。