釣具業界で起こりうるトラブルについて、弁護士の先生に解説して頂くコーナーです。
今回は、もしメーカーが廃業した場合、そのメーカーが販売した製品の保証はどうなるのかについて解説して頂きました。
製造物責任法についても分かりやすく解説されているので、ぜひご一読ください!
※以下の質問は全て架空の内容です。実際の団体・企業、人物等とは一切関係がありません)
景気悪化で倒産が決定。製品の保証について気になる事が…

弊社はボート用品を製造している会社で、今まで多くの釣り人にもご愛用して頂きました。ただ、景気全体の悪化等の理由で、今期限りで廃業する事を決定しました。そこで気になっているのは、製品の保証や製造物責任法についてです。
まず、弊社の製品は保証期間が3年となっています。通常の状態で使用しているにもかかわらず、破損等が起こった場合は、保証の期間内であれば無償で修理や交換を行っていました。昨年発売した新製品も僅かながらあり、市場在庫も残っています。弊社が廃業してしまうと、現実的に修理や交換はできなくなってしまいます。
また、3年前に弊社が製造販売した商品が原因となる事故が起きてしまい、この件も弊社が廃業してしまうと対応が出来ないので、どうなるのか心配です。
この事故は、弊社が作った商品の強度不足が原因で、釣り人がボートで弊社商品を使用して釣りをしている最中に部品が壊れ、腕に怪我をしてしまう事故が数件発生してしまいました。そのため、弊社では、怪我をした釣り人に補償を行い、当該の商品の回収も行ってきました。
ここ1年は補償を求めるお客様からの連絡もなく、回収出来る範囲の商品の回収は終わりました。
しかし、販売した全ての商品が回収出来たわけではなく、2割ほどは現在も回収が出来ていません。どこかの販売店で在庫となっているか、個人で保管されているか、もしくは釣り人等がボート上で今も使われているのだと思います。
そこで弁護士の先生に質問です。
まず、弊社は今期で廃業しますが、弊社が発売してきた商品の保証期間については、弊社が廃業すれば保証の必要はなくなるのでしょうか?
また、製造物責任法についてですが、事故が起きてしまったのは3年前に発売した商品です。回収の周知はメディアへの広告や当社公式ホームページ、SNSを使用して行いましたが、全てが回収出来たわけではありません。
販売業者からの返品の申し出があった時、また弊社製品を知らずに利用し続けた方が怪我をした場合、弊社が廃業した後でも、法律的に何らかの補償が必要となる場合があるのでしょうか。ご回答をお願いします。

【弁護士の回答】廃業後は保証の義務を負わない
ご質問のケースでは、貴社は、販売した商品について3年間の保証サービス(以下、単に「保証」といいます)を行っており、昨年発売した新製品や市場在庫も残っているようですが、貴社が廃業した後も保証する必要があるのでしょうか。
会社は、消費者に対して、販売する商品について、無償で修理したり交換したりするという保証をつけることが法律上義務付けられているわけではありません。保証するかどうかは、原則として会社の自由な判断に委ねられています。
また、会社が保証を行うとしても、その保証の内容や期間は会社が自由に決めることができます。
しかし、会社が消費者に対して保証することを約束した場合、会社には保証する義務が発生します。そのため、ご質問のケースのように貴社が販売した商品について3年間の保証を行った場合には、貴社は、保証期間内の商品について保証する義務を負います。
もっとも、ご質問に対して回答しますと、貴社が廃業、つまり会社を解散して清算した後には、保証期間内の商品があったとしても保証の義務を負うことはありません。というのも、会社が廃業してしまった場合、権利を行使したり義務を負ったりする主体そのものが消滅してしまうからです。
そのため、会社が販売した商品について保証を行っていたとしても、会社が廃業することで、会社は保証の義務を負うことはなくなります。
ご質問のケースでも、貴社が廃業すれば、保証期間内の商品があったとしても保証の必要は無くなります。
製造物責任法による補償も必要なし
次に、貴社が販売した商品について、その商品の強度不足が原因で怪我をしてしまう事故が発生している場合、貴社が廃業した後でも製造物責任法に基づいた法的な補償が必要となるのでしょうか。
結論から申し上げますと、すでにご説明したのと同じ理由から、貴社が廃業した場合には、貴社が製造物責任法に基づいた法的な補償を行う必要はありません。
そもそも、製造物責任法に基づいて負う責任とはどのようなものなのでしょうか。また、製造物責任法に基づく責任はどのような場合に負うものなのでしょうか。
製造物責任法とは、製造した物に欠陥があり、その欠陥によって人が怪我をしたり、物が壊れてしまったりした場合に、製造者が損害賠償責任を負うことを定めた法律です。そのため、製造物責任法によって負う責任は、損害賠償責任のみとなります。
そして、製造物責任法に基づく損害賠償義務を負うのは、主に、①会社が問題となっている商品の製造業者であること、②商品を販売したときに商品に欠陥があったこと、③商品の欠陥によって、怪我をしたり、物が壊れたりしたこと、④損害が発生していること、などの要件が必要となります。
ご質問のケースで検討してみると、貴社は、事故の原因となった商品を製造した会社であり、①の要件を満たします。
また、事故の原因となった商品は、商品の強度不足があったとのことなので、設計段階で安全性を欠いていたといえるでしょう。そうすると、設計上の欠陥があったといえ、②の要件を満たします。
さらに、商品の強度不足が原因で釣りの最中に部品が壊れ、釣り人が腕に怪我をするという事故が発生しており、③の要件も満たします。
そして、通常、怪我をしてしまった場合、治療費や通院費などの支出を余儀なくされるのが通常です。すると、怪我をした人には治療費や通院費といった損害が発生するため、④の要件も満たします。
以上より、ご質問のケースでは、貴社は、製造物責任法に基づいて損害賠償責任を負う可能性が高いです。

もっとも、既に述べたとおり、会社が廃業する場合には、権利を行使したり、義務を負ったりすることはできなくなります。
したがって、貴社が廃業した後に、貴社の商品を知らずに利用し続けた方が怪我をしたとしても、貴社が損害賠償責任を負うことはありません。
また、販売業者からの返品の申し出があったとしても、同様に、貴社がその申し出に応じる必要はありません。
なお、貴社が直接商品を販売した販売業者に対しては、貴社が廃業する前に商品の売買契約を解除されている場合には、廃業前に返品の申し出に応じる必要があるため注意が必要です。
会社の廃業については、以下のページで詳しく解説していますのでご参照ください。
会社の解散から清算まで。会社の廃業の流れをわかりやすく解説
【回答者:弁護士法人咲くやこの花法律事務所 弁護士・木曽綾汰】
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