2020年8月8日、秋田港外港地区北防波堤(以下、秋田港北防波堤)の釣り場開放が行われた。開放日の前日には関係者が集まりオープニングセレモニーと現地の視察も行われた。開放当日は不安定な天候にもかかわらず、多くの釣り人が早朝より駆け付け釣りを楽しみ釣果にも恵まれた。長年にわたり閉鎖されていた秋田港北防波堤が、管理された安全な釣り場として生まれ変わった様子や、これまでの経緯などを紹介する。
(上)前日のセレモニーと当日の開放の様子
秋田港北防波堤開放日の前日に記念式典。秋田市の穂積志市長からも祝辞。開放までの経緯を紹介
開放の前日、8月7日に秋田港北防波堤に隣接する秋印(株)の研修室でオープニングセレモニーが行われた。式はコロナ対策が十分に行われた上で開催され、主催者挨拶に始まり、秋田市の穂積市長をはじめ来賓挨拶や開放事業の支援組織からの挨拶も行われた。
まず、主催者を代表して秋田港北防波堤を管理運営する、一般社団法人秋田港有効利活用協会の石黒寿佐夫会長よりお礼と下記要旨の挨拶述べられた。
「釣り場開放に尽力されている皆様の情熱や行動力に共感し、秋田県や秋田市が更に元気になれるようにと、私も法人を立ち上げる際に協力させて頂きました。
当会は港湾施設を利用し、釣り振興を図る事を目的とした団体です。今回、多くの方々のご協力を頂き、開放する事が出来ました。また平成31年から始まった『釣り文化振興モデル港』の指定以降では、全国で初の防波堤開放となります。多くの方にご利用頂き、地域を元気にする活動に育てていきたいと思います。今後ともご協力を宜しくお願い致します」。
次に事業概要の説明を同会の佐々木清治副会長が行った。
佐々木氏は(公財)日本釣振興会東北地区支部の支部長であり、また(公財)日本釣振興会の水際線有効活用委員会の委員でもある。今回の開放を実現させた中心的な人物の1人だ。
佐々木副会長からは時系列で開放までの道程が紹介された。
秋田港を利活用した地域創生の取り組みがスタート。「港湾施設の釣り利用」が明記され開放に向けて大きく前進
まず平成29年3月に秋田港の長期構想「あんべいいな秋田港」で港湾施設の釣り利用が明記される。この構想は秋田港を利活用し地域創生に県が力を入れていくというもので、これを契機に釣り場開放に向けて大きく進む事となった。
構想策定までの間、約2年にわたり港湾施設の釣り場開放に向けて分会で議論を行った。
平成30年2月28日から令和元年12月12日まで、「秋田港外港地区北防波堤釣り開放に向けた検討会」を6回開催した。検討会は国交省、県、市、海上保安庁、地域の関係者等、様々なメンバーが集まり議論が行われた。
この会議で検討された内容は「秋田港北防波堤を開放して、本当に安全が確保できるのか」といった点だ。北防波堤はもともと釣り人の転落事故があり長年閉鎖となっていた場所であり、釣り人の安全確保が重要な議題として議論された。
現地で安全確認(救助訓練)を実施。落水者の救出や救命ボートでの救出を行い、安全性を確認
そこで平成30年6月6日に現地で安全対策事前検証(救助訓練)が行われた。ここでは、実際にスタッフに落水してもらい、陸上から救命浮環を投げ、縄梯子で上がって来る事ができるか実験され、問題ない事が確認された。また、年配者など縄梯子を使って防波堤に登れない人にために、迅速に救命ボートで救助出来る体制も確認された。
釣り場の安全性が確認された事を受け、平成30年7月13―15日より実際に釣り人を入れての試験開放が行われた。参加者は事前申し込みだったが、応募数は想定以上にあった。
その後、釣り場の運営は(一社)秋田港有効利活用協会が行う事から、収支面で現実的に成り立つのかどうか等の確認を行うため、平成31年7月20―21日に有料試験開放が行われた。ここで、収支的にも大丈夫だろうという確認が取れた。
平成31年3月29日には国土交通省が秋田港を「釣り文化振興促進モデル港」(現・釣り文化振興モデル港)に指定。
6回の検討会を経て本格開放が承認
そして令和元年12月に行われた第6回の検討会において、秋田港北防波堤の本格開放が承認され、令和2年8月8日より開放となった。この事業には国土交通省東北地方整備局と秋田県が後援となっており、行政も力強く後押ししている。
以上が開放の主な経緯で、佐々木副会長からは試験開放の様子や施設の利用料金、安全対策設備、公式ホームページ、コロナ感染防止対策の紹介等が行われた。また、今後の北防波堤での取り組み等も紹介された。
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