「釣りと魚の科学」講義とワーム製作。岩手県立久慈東高校・海洋科学系列で授業

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釣りと魚の科学の授業風景
自作したワームを手に記念撮影。水産系列の生徒で魚の生態等も詳しく全員が釣り好きだ

11月22日、岩手県北部にある岩手県立久慈東高校・海洋科学系列にて「釣りと魚の科学」というタイトルでの講義とワームの製作実習を担当の上野先生より依頼があり、実施となった。

学校に到着すると、ほどなくして村山薫美校長先生が朝礼から戻り担当の上野明先生と共にご挨拶をさせていただいた。嬉しいことに校長先生も釣りをされるということもあり、暖かい歓迎の言葉をいただいた。

釣りと魚の科学
写真左から村山校長先生と上野先生

魚の生態等の知識がどのように応用されているかを説明

講義は毎年実施している内容で、魚がどのようなプロセスで餌を食べるのかということを解説し理解を深めてもらうことを目的としている。

水産系列の高校であるため、魚の生態や栄養成分といった専門的な幅広い知識について、生徒たちは担当されている上野先生はじめ専門を習得された先生方から教えてもらうことが出来る。

そうしたことから、それらについて私が詳しく伝えることよりも、それらの知識が自らの経験に基づいて、実際どのように道具や餌に応用されて釣果に繋がっているのかということに重点を置いた話を意識した講義を行った。

長岡寛さんが行っている釣りと魚の科学の従業風景
魚に関する知識がどのように商品に活かされているか等の講義を行った

例えば魚の視覚において、疑似餌の色彩は実際の現場で異なる色彩に対してどのような調査結果になったのかということや、魚の聴覚が応用されている釣り具の実用例や歴史。嗅覚や味覚と餌に対する魚の反応について、また魚は釣り糸が見えているのかといったことについて、自ら立ち合い、或いは行った実験観察を元に作成した写真やイラスト、動画を多用して講義を行った。

なお、今回対象となった1年生の8名で全員が釣り好きの生徒だった(アンケート結果は下記参照)。使用した教室は実験室であるため、実験台はもとより電源や換気などの設備が充実していて、ワームの製作実習も行いやすい環境だが、昨年よりも水槽が多くなっていて淡水と海水の多数の魚が飼育されている。

長岡寛さんが行っている釣りと魚の科学の従業風景
筆者がワーム製作の手順を説明

理由をお聞きしたところ上野先生からは、学校で行った文化祭でこの実験室はミニ水族館として展示を行い、生徒からのリクエストがあったため一部だけ撤去して、残りをそのまま飼育しているとのこと。水槽内に居る魚は生徒が捕まえたものや釣ったものだという。流石に自然豊かな北三陸沿岸にある学校とあって、調達には事欠かない。

9時から開始した講義は2時限目の終了時間である10時50分まで行い、3時限目の11時からはワームの製作実習を行った。

長岡寛さんが行っている釣りと魚の科学の従業風景
ワーム製作実習の様子。熱いので注意しながら作業を行った

釣りマナーの重要性も説明。ネオニコチノイド系農薬の動画も視聴

講義の開始時に、日本釣振興会より提供していただいた、パンフレット「すきすきフィッシング」とマナーチラシを全員に配布し、マナー順守の重要性について説明を行った。また講義の終了時には同じく日釣振(淡水魚減少プロジェクト)で制作した「沈黙の水辺」動画を視聴してもらった。

長岡寛さんが行っている釣りと魚の科学の従業風景
「すきすきフィッシング」を使ってマナーの話やネオニコ系農薬の動画も見てもらった

実習に際しては原料の樹脂と注入に使用するプランジャーは高温であるためやけどしない注意が必要で、以前は開始前に口頭で説明を行っていたが、今回からアニメーション動画を作成した。3分ほどの長さにまとめたものを視聴してもらった。動画にすることにより要点が図解されているためか、思いのほかよく伝わった感じで、生徒たちの呑み込みがより円滑になった印象を受けた。

毎回感じることであるが、講義の時間内は「質問がありますか」という問いかけ等に対して比較的無口な生徒達も、実習になると次第に会話が弾むようになり、あっという間に終了時間の12時50分となった。

午後からは生徒による発表会。地元特産品を用いた釣り餌についてという、興味深い内容も

この日は午後の1限目が全学科のプレゼン大会が大講堂で予定されていて、食物系列、人文科学系列などの1年生の生徒8グループによるパワーポイントを用いた発表会が行われた。

各発表は7分間という限られた時間内で行われたが、全ての生徒たちに共通しているのは、深い地元愛があること。概要の一部であるが、地域の特産品や地域外の方々にとって有名ではない観光スポットに焦点を当てて、関係者とのコミュニケーションを図りながらの制作が実施されている点。先入観なく拝聴した私にとって新鮮味があり大変感動した。

そのなかで海洋系列の発表内容が地元特産品である山葡萄を使った釣り餌についてで、魚が好むアミノ酸などにつていの考察も盛り込まれている。また数あるテーマの中で釣り餌が題材にされたことがとても興味深かった。個人的な感想であるが今後発展していく途上で役に立つことがあれば協力させていただきたいと思っている。

久慈東高校は来年度久慈工業高校との統合により久慈翔北高等学校として再出発することになるが、地元愛の熱い学生はじめ教職員、関係者皆様の一層の発展を願っている。

講義と実習のアンケート結果 ※参加した8名の生徒の回答

 1・魚釣りをしますか? 
 はい…8、いいえ…0
 2・釣りをした事がある人何釣りをしますか?(複数回答可)
 海…6、川…5、餌…7、ルアー…5
 3・釣りに行く時は誰と行きますか(複数回答可)
 家族…7、友人…5、1人…2、その他…1
 4・釣りに行く頻度はどのぐらいですか?
 年1-2回…1、年3-6回…2、月1-2回…2、月3回以上…3
 5・釣りに行く時は何が障害になりますか(複数回答可)
 ・釣り方が分からない、教えてくれる人がいない…1、トイレ等の問題…2、道具や仕掛けが高い…4、時間がない…4、交通手段の問題…4
 6・今回の講義の感想
 釣れない原因が分かった気がする。ベテランの言う事がすべて正しくない事が理解できた。ルアーの色の話が参考になった。魚の事が勉強になった
 7・ネオニコチノイド系農薬という言葉を知っていましたか?
 知っていた…0、知らなかった…8
 8・釣りに対するイメージは?
 海のイメージ…1、カッコいい…4、楽しい…3


 【提供:長岡寛・編集:釣具新聞】

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