各地で釣り場づくりに取り組んでいる岸裕之氏の連載。この連載は内水面の釣り場について問題点を整理し、素晴らしい釣り場作りの一助になればという思いで行っています。第2回目となる今回は、今注目されている水産庁の補助事業について紹介していきます。(釣具新聞編集部)
水産庁の補助事業「やるぞ内水面漁業活性化事業」。初年度は12団体が先進的漁場管理推進事業に取り組む
内水面漁業を活性化させるために、今後どのような取り組みをすればいいのか。
その答えを見つけるために水産庁の補助事業『やるぞ内水面漁業活性化事業』が昨年度(令和元年)からスタートした。この事業は先進的な漁業振興プログラムに取り組む漁業関係団体等を支援し、今後の漁協運営モデルの創出を課題としている。
この支援制度は『手続きの流れ』(下図参照)にあるように、全国内水面漁業協同組合連合会と公益社団法人日本水産資源保護協会の2団体が共同実施機関となっている。
1団体上限300万円まで支援。ヤル気のある団体に絞り込んでサポート
応募の窓口は日本水産資源保護協会、全内漁連が事業全般の運営を受け持っている。
応募資格(補助対象)は、水産業協同組合および、水産業協同組合を含む任意団体、内水面の養殖業者である。
1団体が受けられる事業経費の支援額は上限が300万円まで。
支援の対象となる取り組みは漁場管理の効率化、漁獲量調査、漁協運営を安定させるための企画(遊漁料収入の増収)、漁獲物の品質向上や加工、養殖業の振興など多岐に及ぶ。
初年度は35団体が応募し12団体の事業が採択
初年度は全国から35団体が応募し、課題提案書(事業計画書)を提出。専門家で構成される内水面漁場管理検討委員会による審査を経て12団体の事業が採択された。
支援を受ける団体は計画通りにこの1年間活動を行い、今年2月18日に各団体が東京に集まって成果報告会が開催された。
この事業が高く評価されているのは、ヤル気のある団体に絞り込んで支援していること。そして、審査基準も明確で、各団体の活動内容がしっかりとリポートされており透明性がある。成果報告会の講演録も紹介されているので、興味がある方はぜひホームページで確認してほしい。
初年度の参加12団体の活動課題は下表の通りだ。
実施団体 | 事業課題 | |
1 | 朱太川漁業協同組合(北海道) | 資源量モニタリングに基づいた、種苗放流に頼らないアユ漁場維持の実践 |
2 | 米代川水系サクラマス協議会(秋田県) | 米代川水系サクラマス活性化~ICTを使っ た監視の効率化と漁場整備~ |
3 | 栃木県漁業協同組合連合会(栃木県) | ICTを活用した漁獲データの収集(漁業者からの情報収集)による漁獲量の推定 |
4 | 小田原市内水面漁業活性化協議会(神奈川県) | 小田原市2漁協の連携した漁場管理、 情報発信による釣り人・組合員の増加 |
5 | 太田川漁業協同組合(静岡県) | 濃密 & 巨アユ放流がもたらすアユ釣り新時代の幕開け |
6 | 魚沼漁業協同組合(新潟県) | チャレンジ魚沼漁協『中長期ビジョン』の実行 |
7 | 奥越漁業協同組合(福井県) | 川を起点とした奥越特有の自然体験プログラムの開発と提供 |
8 | 名倉川漁業協同組合(愛知県) | 家族客・女性向けマーケティングと釣り人監視スキームの横展開 |
9 | 愛知川漁業協同組合(滋賀県) | IoTカメラ・AIシステムと、鮎ルアーを利用した漁協経営向上 |
10 | 京の川の恵みを活かす会(京都府) | 川魚の魅力創造及び、発信拠点創出事業 |
11 | 京都府内水面漁業協同組合連合会(京都府) | 友鮎ルアー釣りの普及による新規遊漁者の増加に向けた取り組み |
12 | 和歌山県内水面漁業協同組合連合会(和歌山県) | アマゴ釣りキャッチ & リリース区及び、 冬季釣り場設置による釣り人誘致 |
ICTやAIを活用した漁場管理やゾーニング等、様々な活性化事業を実施。ヨコ展開に期待
ⅠCTやAI、クラウドファンディングを活用しての漁場管理、河川におけるゾーニング管理の導入、種苗放流に頼らない資源維持の試み、新たなファン層を獲得するための鮎ルアーの普及など、各地域が漁業活性化のためにさまざまな事業をこの1年間で展開してきた。
短期間では結果が出ない活動も多いが、それぞれの団体がアイデアを出し合って、そのノウハウを他の漁業関係者と共有することを、この事業を立ち上げた水産庁は期待している。
成功事例が他の地域でも実践され、内水面漁業全体の活性化に繋がったとき、この事業の成果は増幅するだろう。
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