魚は痛みを感じるの?バラすと釣れにくくなるのはどうして?魚の学習能力について解説

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釣りエサのスペシャリスト・長岡寛さんの連載「お魚さんッ、私のエサに食いついて!」です。釣りエサに関する事以外にも魚の生態や環境など様々な内容を紹介します。

今回からは、3回に分けて、「お魚さんをバラすとどうなるのか?」について解説して頂きます。

「お魚さんッ、私のエサに食いついて!」のタイトルカット
   

私たちは身に痛みや苦痛を感じると、それを避ける行動を取るようになります。痛みや苦痛の度合いによって異なりますが、繰り返し経験することによって学習し効率的に危険を回避することが出来るようになります。

例えば蜂に刺されて痛い経験をすると、その後は蜂の姿を見るだけで警戒するようになります。また自分が刺されなくても身近な人が刺される、或いは危険であることを教えてもらうことにより学習していきます。

痛みを感じ、学習するイメージ
痛みを感じているイメージ(左)と痛い経験をして学習したイメージ(右)

よく魚をバラすとその後釣れなくなるという話を耳にしますし、自分もそういう経験を幾度となくしています。実際はどうなのでしょう?

バラした当のお魚さんが釣れなくなるのは仕方ないとして、その後釣れなくなるというのは魚種や条件によって異なるであろうとはいえ、お魚さんは群れでいることが多いはずです。であるなら、群れの中の1尾をバラしたからといって群れの中の他のお魚さんはそうした経験をしていないわけだから、そのお魚さんが釣れても良いはずです。

先ほどの蜂の話のように、自身が刺されていなくても周囲の人から危険であることを教えてもらえば、それが危険な生物であるということを認識できますから、蜂を見ただけで気を付けるというのは解ります。

でも、口に釣り針が刺さったお魚さんが、周囲にいる別のお魚さんに、それは危険だから食べてはいけないということを教えているようには到底思えないのです。

恐らく読者の皆様も仕掛けに掛かったお魚をバラしたことがあるでしょう。そして、少なからずそれがその後の釣果に影響したという経験をお持ちになっている方も多いはずです。

これから3回に分けて、「お魚さんをバラすとどうなるか?」についてお話しさせていただくつもりですが、その前に、掛けたお魚さんをバラしてしまう事でどのような疑問が生じるのか整理してみましょう。

まず1点目として、バラしたお魚さん自身は、苦痛を感じているのか、そうでないのかという疑問があります。今回お話しさせていただく内容です。

2点目として、仕掛けに掛かっていない他のお魚さんはどのような影響を受けるのだろうかということです。

そして、3点目として、バラしが影響するとしたら、解消するまでにどれくらいの時間を要するのか?ということについて、以後順を追ってご説明させていただきます。

魚は痛みを感じないって本当?

では、釣り針が口に刺さったお魚さんは、苦痛を感じているのでしょうか?

フィッシュグリップで挟まれた魚
針が刺さったお魚さんは痛がっているのだろうか?

私が釣りに熱中し始めた中学生の頃、父の友人でヘラブナ釣りに精通している方が、「魚は痛みを感じない。だから釣り針が刺さって逃げようとしても、釣り糸で引っ張られることによる余計な痛みが伴わないから強い力で逃げるのだ。その理由は、魚の細胞には人にあるような痛点が無いからだ」という話を聞いてしばらくはそう思っていました。その方だけでなく、その頃はそれが定説になっていたようです。

それから歳月は流れ、2003年に米・ペンシルベニア州立大学(生物学魚類専攻)でオックスフォード大学博士号を取得された、ヴィクトリア・ブレイスウェイト氏が論文により、魚類(マス)が痛みを知覚することを発表したところ、この共同研究がイギリスで大きな話題となりテレビや新聞などで取材が殺到したのです。後の2006年には、彼女の魚類生物学への貢献に対して、イギリス諸島漁業学会からも受賞されています。

お魚さんが痛みを感じるというこの発表は、多くの釣り人の間でも話題となったばかりか、釣りは魚類を虐待しているのではないかといった論調も巻き起こし、大きな騒ぎとなったことを記憶されている読者もいるかと思います。

少し横道にズレてしまいますが、ヴィクトリア・ブレイスウェイト氏は言葉の通じないお魚さんに、様々な実験を施しその反応が本当に痛いと感じているのか、それとも、驚いている、或いは怖がっていることによるものなのかを客観的に評価するという極めて困難に直面したのです。

しかし、仮説を立て幾度も失敗し検証したばかりでなく、周囲からの批判を押しのけ客観的な評価を打ち立てていく過程が詳細に記述されています。

書籍「魚は痛みを感じるか?」(紀伊國屋書店)は釣り人にとっても興味深い内容になっているので、ご興味のある方は是非ご一読されてはいかがでしょう。

書籍「魚は痛みを感じるのか?」
書籍「魚は痛みを感じるのか?」(紀伊國屋書店/ヴィクトリア・ブレイスウェイト氏・高橋洋訳)

魚は痛みを感じて学習する!

お魚さんにも学習する能力があることは誰もが知っている通りですが、例えば水族館のショーで見ることが出来る石鯛の輪くぐりなどは、飼育しやすくて人に慣れやすい種類のお魚さんでなければ、見ることは出来ません。

しかし痛みとなれば、お魚さんにとっても最大の苦痛になりますから、お魚さんの種類の違いによる習得度合いに差はあるとしても、繰り返し経験することにより深く学習することは確かです。

釣り人が多く訪れる人気釣り場では、沢山のお魚さんがいるにも関わらずなかなか釣れなくなる大きな理由の1つに、お魚さんは釣り針が口に刺さると痛みを感じるということが挙げられます。

次回は、なぜ群れている他のお魚さんまで釣れなくなってしまうのか?ということについてお話しさせていただきます。

◆長岡寛さんの連載「お魚さんッ、私のエサに食いついて!」の連載記事一覧はコチラ

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