日本には良い釣具店が多い。だから商品を見て、触って、感じて買う文化がある
――話は変わるが、釣具業界の流通の仕組みについて、どのように捉えているのだろうか?
「私の考えでは、今の業界全体の流れからいうと、ある意味で最適な形になっているのではないかと思います。釣具の商品は地域性もありますし、釣れる魚も場所によって全く違います。スポーツ業界やゲーム業界のようにセントラルバイイングシステムが機能しにくいのではないかと思います。
私も昔ながらの考え方かもしれませんが、お客様が商品を見て、触って、感じて選ばれるという実店舗での体験は非常に大切だと思っています。それに加え、店員さんからのフィードバッグが我々に伝わり、それが商品開発や改良に活かされる流れはしっかり作っておく必要があると思っています。
ビジネスはデジタルでの取引も大事なのですが、数字上の判断だけでなく、その行間にある事が大切です。
なぜ店頭で当社の商品を選んで頂けたのか。単に数字として計上されるだけではなく、「他のどのような商品と比較して当社の製品を買われたのか」、「他社製品より1万円安かったから買って頂けた」といった数字の行間にある情報がとても重要なのです。
さらに日本では、商品を見て、触って、感じて購入される文化があると思います。これは日本に良い小売店が多いからだと思います。他業界でも良い小売店(実店舗)の少ない国では、最初からお客様の選択肢がネットしかありませんから、こういった文化は育ちません。日本は良い釣具店さんが多いのだと思います。
「ビッグカンパニー」より「グレートカンパニー」に
――最後に、PFJが今後どのような会社を目指していくのか聞いた。
「まず、釣り具のマーケットはまだまだ可能性があると感じています。初心者にとっつきやすい道具の提案に留まらず、釣りを一旦始められたにも関わらず、脱落してしまう人も多いと思います。そういった脱落者を食い止めるような商品も作っていきたいと思います。
今後の会社についてですが、現状の釣具市場でナンバーワンを狙えれば良いのですが、現実的にはロッドやリールも大手メーカーさんが支配的なシェアを握っておられますし、それ以外のジャンルでもレッドオーシャンの多い市場です。
大手メーカーに次ぐ業界第3位を狙うというより、第3局を作りたいと思っています。そのためには、我々のビジネスの方向性を変えていく必要があります。
ですから、我々は『ライフスタイル・フィッシングブランド』を目指しているのです。アブ・ガルシアというブランドでアウトドア分野も見据えた事業展開を進め、ビッグカンパニーよりグレートカンパニーになりたいと思っています。
また、我々は楽しい道具を作っている会社ですから、常にエンターテイメント的な企業でありたいと思っています。会社のポジションとして『アウトドアエンターテイメント企業』といった新しいジャンルを作る事ができればと思っています。
数年後、アブ・ガルシアというブランドが、釣りファンの方はもちろん、アウトドアファンや多くの一般の方にも認知され、『アブってすごくなったよね』と言われるようになるまで成功させたいですね」。
(了)
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