水都大阪の魅力を高める「淀川大堰閘門」設置
かつて日本一栄えた港町、京都伏見。伏見港は豊臣秀吉が伏見城の築城にあたり、1594年(文禄3年)に開港し、伏見は城下町、宿場町として淀川舟運とともに明治時代まで栄えた。
東海道本線が開通し、交通網が整備され、陸運の普及で急激に需要が低下した舟運だが、神戸淡路大震災の復興で舟運が大きな役割を果たしたことから、観光と防災の両面から舟運復活の機運が高まった。
そして2021年3月、国交省近畿地方整備局から淀川大堰閘門の設置計画が発表になった。
これまで淀川大堰上流と大川(旧淀川)は毛馬閘門を通過することで船による往来ができたが、淀川大堰の上下流で舟運は分断されていた。
淀川大堰閘門は2025年に開催される大阪万博までの完成を目指し、舟運を活用した沿川の賑わい創出や自然と都市の融合、防災対策の強化により淀川と水都大阪の魅力を高めていく。
特に大阪の市街地から万博会場となる夢洲(大阪港沖の人工島)まで観光船によるアクセスを可能とし、大阪湾から京都府まで淀川舟運のエリアが広がることで、広域連携の町づくりが期待されている。
万博で世界各地から関西に観光客が訪れることが予想される。水都大阪の新たなシンボルとなり得る淀川舟運を盛り上げるために、竹門先生は大阪湾や淀川産の魚介類を利用した食のPRや新たな名物の開発なども大切だと考えている。
京の川の恵みを活かす会と大阪市漁協による食への取り組みも楽しみだ。
【竹門先生から釣り界への提案】「市民科学」取り入れたハゼ釣り体験
淀川下流域のシンボルフィッシュはハゼだろう。近隣の釣り具店情報ではハゼやテナガエビ釣りはやや低調なシーズンが続いているものの、食べて美味しい小物釣りは人気が高く、釣り入門には最適だ。
今後、干潟の再生が進み、河川環境が改善されていく過程は、淀川を愛する者にとって感慨深い期間となるだろう。
そこで釣り人の河川環境への関心を高めるためのアイデアを竹門先生に伺ったところ、市民科学(シチズン・サイエンス)を取り入れた釣り体験イベントを提案していただいた。
干潟再生プロジェクトは公共事業だが、その一環である生物モニタリングという分野なら市民(釣り人やアマチュア研究者)も参加、貢献できる。
具体的には、干潮時に干潟を掘ってゴカイを取り、それをエサにハゼを釣る。時間を決めてゴカイ掘りと釣りの時間を分け、採集したゴカイの量や釣果のデータを収集する作業だ。
また、淀川の干潟には「ベッコウシジミ」と呼ばれるヤマトシジミも生息し、貝やカニなども豊富だ。6月の石干見づくりではウナギの幼魚も捕獲でき、干潟の豊かな生物相に驚かされた。
生物モニタリングで得られたデータを年毎に蓄積すればそこから河川環境の変化が見え、子どもたちの環境学習にもつながる。
「昔はよく釣れた」というのは釣り人の常套句だが、生物モニタリングで「昔よりも釣れるようになった」、「魚種が増えた」という結果が得られたとき、市民にとって大きな喜びにつながるのではないだろうか。
「SDGs」という言葉を耳にタコができるほど聞くようになったが、いつまでも淀川でハゼ釣りやシジミ採りが楽しめ、春になると天然アユが遡上する恵みが多い河川環境を後世に残していくためには生物モニタリングも重要な調査の一つ。
釣り界は将来のために「市民科学」を取り入れた釣りイベントを企画してみてはいかがだろうか。
岸裕之氏の連載記事
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