ベテラン釣り記者の竹村勝則(たけむらかつのり)氏が「昔と今の釣り」について思うままに語る、「釣り記者の回顧録」。今回はリールの進化について語ってもらった。
荒磯のグレ釣りほどスリリングで面白い釣りはない。大海原にポツンと浮かんだような磯で、あるいは断崖絶壁の切り立った岩場の下で、1人グレを狙う。
釣り場によっては潮が渦巻いて流れ、磯にぶち当たって波飛沫が舞う。
特に好期の寒グレシーズンは季節風が吹き荒れる日が多いが、ボッテリと太って脂が乗ったグレは造りに、鍋物にしても美味しく釣味、含味満点である。
毎年、寒グレシーズンになると磯へ出掛けるが、流れに漂うウキが、ゆっくりと水平に入っていくと、胸がトキメク。そして竿を立ててアワせると、ギューンと竿を絞り込むような強引な引きがくる。
特にグレの引きは強いので、リールのドラグ調節をうまくしておかないと、竿をのされてハリスを切られるか、根に入られてバラシとなり、ほぞをかむ(ひどく後悔すること)。そのような経験を何度したことか。
グレ釣りは竿さばきもさることながら、リールのドラグ調節が大事で、とくにグレを掛けた瞬間の強烈な引きの対処が大変難しい。
昭和の時代は、グレ釣りの研究も盛んで、講習会なども開催されました。そんな時代に釣り人が考えたのが、インスプールのスピニングリールの回転部に指を当ててブレーキを掛ける方法。
人の指は大変敏感なので、逆転するリールに指の力加減しだいで対処できる。
しかし、スピニングリールは、足の部分が長いので指が十分に届かない。
そこで足の部分を少し切って自分の手に合うように短くした。
この指ブレーキリールはグレ釣りマニアにはなかなか好評だった。自分も真似して作った。
それがスピニングリールのレバーブレーキリールの始まりで、その後、釣り具メーカーが新製品を発表。
指で直接ブレーキを掛けていたのが、指でレバーを引いてブレーキを掛ける方法にかわり、うんと使いやすくなった。
今は初期のリールから、改良に改良が加えられ、軽くてスムースに思い通りにブレーキ操作ができる使いやすいリールになった。
レバーブレーキリールは今やグレ釣り大会、チヌ釣り大会ではほとんどの人が使っている。
自分はグレ、チヌ釣りだけでなく、ハネ釣りにも重宝している。
(了)
竹村勝則氏のプロフィール
竹村勝則(たけむらかつのり)
昭和16年生まれ。
月刊雑誌「釣の友」(釣の友社)編集長を経て、週刊「釣場速報」の編集長(名光通信社)等を歴任。
釣りの記者歴だけでも軽く50年を超え、今でも釣行回数は年間120日以上!
国内で最も古い時代から活躍する釣り記者の1人だ。
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