(株)サンライン(山口県岩国市・中野郁夫社長)は2021年10月1日(金)に山口県が主催する「第13回山口県産業技術振興奨励賞」において「大気圧低温プラズマを利用した繊維製造技術の開発」が山口県知事賞を受賞した。
同技術開発は、大気圧低温プラズマを利用することで、低温処理かつ薬品を使用せず、人と自然にやさしい繊維製造プロセスを実現している。
今後は、産業資材用繊維の高機能化・環境性能向上や、繊維製造で培った大気圧低温プラズマ技術を発展させることで、殺菌・抗菌化や植物工場への応用など新興分野への展開が期待されている。
サンライン公式ホームページ「プラズマライズ事業」
https://plasma.sunline.co.jp/
「山口県産業技術振興奨励賞」を受賞
山口県産業技術振興奨励賞とは、山口県内の中小企業における県内産業振興に資する産学公連携等による優れた技術の研究開発と新規事業展開の取組を奨励するとともに、ものづくり技術を尊重する社会的機運を醸成することを目的とする奨励賞だ。
山口県から、産業支援機関等へ推薦依頼によってエントリーされ、委員会が選考した企業等のうちから、知事及び理事長が受賞企業を決定する。
山口県知事賞は、単独又は産産・産学・産学公連携による優れた技術を基にした事業活動により、県内産業振興への貢献が認められる県内に事業所を有する中小企業に表彰される。
今回、サンラインが受賞した技術と受賞のポイントについては以下の通りだ。
1.世界に先駆けた独自製品の開発
サンラインは、繊維状物質を表面処理する「大気圧低温プラズマ処理技術(プラズマライズ)」を開発。同技術はこれまで困難だった繊維状物質を、大気圧下で連続的に表面改質する技術だ。
この技術開発により、釣糸をはじめ繊維の親水化や耐久性向上、接着性向上等の高機能化が可能となった。釣糸では、従来に比べ5倍以上の耐久性がある製品を販売するなど、世界に先駆けて他社にはない特徴を持った製品の開発に成功している。
2.SDGsに対応したプロセス
プラズマライズは、SDGsに対応したプロセスで製品を製造している。
同技術は、低温処理かつ薬品を使用しない安全なプロセスであるため、SDGsの労働安全に関する項目「8.働きがいも経済成長も」と、製造時のエネルギーや薬品使用量を削減するプロセスであるため、環境に配慮した項目「13.気候変動に具体的な対策を」に対応している。従業員にも環境にも配慮した持続的な技術といえる。
更に、同技術により高機能化した繊維は、従来のコーティングよりも耐久性や効果持続性に優れるため、釣りで発生するゴミの排出量を削減するなど、海洋保全に配慮した「14.海の豊かさを守ろう」にも対応している。
3.ウィズコロナ・アフターコロナに対応
プラズマライズ事業は、時代の変化に対応することができる事業だ。
サンラインでは、これまで釣糸以外の製品も主力に成長させることが課題だった。同技術の応用展開により、大手企業からの受託実験や産業資材用製品の共同開発を多数引き受けており、環境に配慮した新プロセスの開発や、高機能性部材の受託加工や供給を開始している。
また、コロナ禍に対応した抗菌加工技術や抗菌商品の開発にも成功し、社内外に殺菌・抗菌加工したアルコール消毒液携帯用スプレーボトルを配布するなど、ニューノーマルにも対応している。
同事業では他にも、炭素繊維や高機能プラスチックなどの接着性向上や、高純度金属のクリーニング、プラズマ導入による液体中の有機物分解、植物の生育促進や食品の殺菌など、様々な分野に多用途展開している。
このように、コロナ禍での即応力のある対応や、コロナ禍後やサステナブルを見据えた多角的展開を行っており、時代の変化に対応できる事業と言える。
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