【富士工業】「技徳」竿作りの文化高める~世界のバスロッド市場を席捲したキャスティングハンドルを完全復刻~

スペシャル ニュース
技徳のカーボンキャスティングハンドル
富士工業から発表された「技徳カーボンキャスティングハンドル」

2021年、初めてのオンライン開催となった「釣りフェスティバル2021」。出展各社から多くの新製品が発表されたが、その中でも一際目を引いたのが、富士工業株式会社(静岡市本社・大村一仁社長)が発表した「技徳カーボンキャスティングハンドル」だ。

富士工業の新ブランド「技徳(ぎとく)」の発表と、その第一弾として発売された「技徳カーボンキャスティングハンドル」。往年の名品を知るベテランはもちろん、新しい釣り人からも注目のアイテムとなった。今回は富士工業に新ブランド「技徳」について話を聞いた。

「技徳兼備」ブランド名は富士工業の社訓の1つに由来する

技徳のロゴ
技徳カーボンキャスティングハンドルのリールシート部。伝統を感じさせるロゴだ

富士工業では、新たなロッドコンポーネントブランドとして「技徳」を発表した。

「技徳」というネーミングは、富士工業の社訓の1つである「技徳兼備(ぎとくけんび)」に由来する。「技徳兼備」とは「技術」と「モラル」の両方を兼ね備える事。

高い技術と品性の両方を兼ね備えたメーカーとして、お客様に喜ばれ、社会に貢献する商品を開発・製造していくという、富士工業創業者である故大村林太郎氏(現大村一仁社長の祖父)が1938年の創業来、常に目指す指針としてきた強い思いが込められた言葉だ。

「技徳」は、ガイドやリールシート等を展開する富士工業の「Fuji」のブランドとは別に、こだわりのロッドコンポーネントを提案するブランドとして世界40カ国に商標登録している。

「技徳」製品の定義は ロッドビルディングという文化を楽しんで頂くこだわりのモノ創り、オンリーワンのタックル創造の夢をカタチにする提案だ。

自ずと全ての製品がメイドインジャパンとして、静岡県菊川市にある同社のR&D(リサーチアンドディベロップメント)センターで製造される。

富士工業のR&D(リサーチアンドディベロップメント)センター

「技徳」ブランドは10年以上前から富士工業内で温められてきたブランドである。

第一弾として発売された「技徳カーボンキャスティングハンドル」も富士工業のR&Dセンターで生産され、「ジャパンマインド」を強く感じさせる一品となっている。

第一弾がなぜ「技徳カーボンキャスティングハンドル」になったのか。

それは2019年、富士工業がロッドビルディングへの情熱と高い技術に敬意を表し、「Fuji Authorized Rod  Builder」として認定する全国のロッドビルダーが同社R&Dセンターに会する機会を作った際の事だ。

Fuji Authorized Rodbuilderの認定書
「Fuji Authorized Rodbuilder」は、ロッドビルディングを始めたい人を的確にサポート出来るプロのロッドビルダーだ。現在は全国各地のショップに在籍する16名が認定されている

この時にベテランロッドビルダーから、世界のバスロッド市場を席捲し、当時富士工業の代名詞でもあったキャスティングハンドルの復刻生産の要望が挙がった。

「スピードスティック」に採用、世界のバスロッド市場を席捲

そもそも、富士工業が初代のキャスティングハンドルを発売したのは50年前だ。

当時富士工業のアメリカ代理店でもあったLew ’s社創業者であるルー・チルドレ氏が販売した伝説のバスロッド「スピードスティック」に富士工業のキャスティングハンドルが採用され、あっという間に一世を風靡する事となる。

年号は定かではないが、おそらく1968年にルー・チルドレ氏は初めて富士工業を訪れている。同氏は革新的な釣竿を作るために様々な素材やロッドコンポーネントを探しており、富士工業を訪れた。

当時、日本ではバスフィッシングやルアーフィッシングといった釣りは全くと言って良いほどなかった時代だ。

富士工業では投げ竿用のリールシート「富士シート」を発売しており、リールシートを作る技術はあった。しかし、当時日本の釣りで使われるハンドルと、ルー・チルドレ氏の求めるハンドルは全く異なるものだった。

当時の日本では「バスフィッシング」は全く無かった時代だ。ルー・チルドレ氏が求めるリールシートの形状も全く異なっていた

釣り方や使われるリールの形状も異なるため、グリップにトリガーという指を引っ掛けるパーツが必要といった概念もなかった。

生粋の技術者・開発者であった2代目社長故大村隆一はルー・チルドレ氏の要望を実現するためにアメリカに渡り、徹底した市場調査を開始した。

アメリカの釣り人に支持されるハンドルを作るため、当時の釣り人の生の声に耳を傾け、共に釣りをし、彼らの手形を数多く集めて、手にフィットするハンドルの試作作りに明け暮れた。

そうして完成したハンドルは樹脂製(ガラス繊維強化ナイロンボディ)で、グリップ部は軽く滑りにくいラバー製となった。

これは当時、静岡県の地場産業としてサンダルやゴム草履の製造が盛んだった事が関係する。サンダルは水に濡れても滑らず、しかも丈夫だ。これに目を付けた同社では、サンダルに使われていた素材をグリップに採用した。

当時、世界中で使われていたハンドルの多くは金属・ダイカスト製、グリップはコルク製であった。一方、富士工業のハンドルは樹脂製で圧倒的に軽く手に優しい一方、抜群の耐久性能を誇った。

「Lighter  & Stronger 軽くて強い」というインパクトあるキャッチフレーズ効果もあって、富士工業のキャスティングハンドルを採用したロッドは大ヒット商品となった。それが「スピードスティック」だ。

その後、1980年代から、ロッドの素材がグラスからカーボンに変わり、富士工業のベイトキャスティングロッド向けコンポーネントの主流は、キャスティングハンドルからトリガーシートへと大きく変革し、1990年にキャスティングハンドルの生産は幕を閉じる。

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