【第17回】志賀高原・雑魚川に見る「種川」の生産力。原種イワナを守りながら、釣り人を満足させる漁場管理

スペシャル ニュース
雑魚川のイワナ
取材当日に捕獲された雑魚川上流域の原種イワナ。とても肥満度が高かった。資源量だけでなく魚体のクオリティも釣り人の満足度を左右する

河川環境と原種イワナを守り続けてきた長野県・雑魚川(ざこがわ)の漁場管理が釣り人、漁業関係者、研究者の三者から注目されている。

この流域にイワナはかつて一度も放流されていないのだが、我が国有数の渓流魚の生息密度を誇っているからだ。しかも生息するイワナは長年守られてきた貴重な原種で、クオリティも高い。

その密度は1㎡あたり0.8尾弱。年によってバラつきはあるが、グラフを見ても一目瞭然で長野県下の他の河川と比較しても高密度だ。当然ながら魚と出会う回数が増え、釣り人の満足度も高く、遠方から訪れる人も多い。

今回は内水面漁場の活性化に結び付く調査研究に取り組む長野県水産試験場と、魅力的な漁場管理に努める志賀高原漁協のスタッフに話を伺った。

種川(たねがわ)からの「しみだし効果」、本格的調査を開始

雑魚川での調査風景
「種川」と呼ばれる禁漁区の支流にトラップ(捕獲ネット)を仕掛けて24時間後に回収する調査を行っている。種川と本流の関係性を解き明かすため、地道な調査が続けられている

雑魚川に生息する魚種はほぼイワナのみだ。これほどまでイワナの密度が高いのは支流がすべて禁漁区に設定されているからだと推測されている。

そのような支流を「種川」と呼び、禁漁区で生まれた稚魚が入漁区(本流)へ移動する「しみだし効果」が期待されている。

雑魚川の地図
雑魚川の支流は禁漁区が設定されている(水産庁の野生増殖マニュアルより)
雑魚川のイワナ生息数グラフ
釣り場となる本流(雑魚川)では、イワナの生息密度が長野県内の他の河川より約3倍高い事がわかる。長野県水産試験場ではピーターセン法という手法で2000年代に入ってイワナの密度を調査してきた。2013年に発表された「長野県水産試験場研究報告第14号・雑魚川におけるイワナの資源評価」に資源量の推移や漁場管理について詳細にまとめられている。長野県ホームページから閲覧できる(表は水産庁の野生魚増殖マニュアルより)

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